03



2年目のホグワーツは、1年目以上に波乱万丈だったわね。
“恋”をしたなんて認めないわたしと、“恋”をしていると言い張るグリフィンドール生。早々に負けを認めたのは、わたしのほうだった。

名前と寮以外、何も知らない彼。
それでも、遠くからでもその姿を見つければ、うれしくって。すれ違った後には、振り向いて。初めて声を聴いた時には、ドキドキすらした。
そんなことを繰り返していたら、これは、“恋”なのかもしれない、と思ってくるもので。数か月も経った頃には、みんなの言うように、 彼を自分の“恋した人”だと認めてるようになっていた。


―恋した彼が、聖28の純血主義で、スリザリン。
まるで映画のサブタイトルにでもなりそうはフレーズだけれど、これがわたしの人生に起きた本当の出来事だ。

わたし達が2学年を終える頃には、わたしが彼を好きだってことを、もてはやす人はいなくなって、グリフィンドール生の間では、ナマエ・シンディがカミュ・スラグホーンに片想いをしているのは、周知の事実になっていた。
やりやすいって?そうね、彼がわたしを気にしてくれているのなら、少しはそうだったかも。でも、まだその成果は1mmも出ちゃいなかった。
チャーリーが卒業する時に、上手くいかなかったらいくらでも泣きついていいから、やらずに後悔はするな。ってわたしに言ってくれたのは、最高の言葉だったと思うわ。



「飽きねぇよな。」
「どうして?」
「どうして、ってそりゃそう思うだろ。」

呆れたように鼻を鳴らしたランマルの視線は、また窓の外へと舞い戻る。何にも変わらない田園風景を見つめることのほうが、わたしからすれば疑問なのに。
まあ、たしかに、この1年なんの進展もなかったことを考えると、彼の疑問はもっともなのかもしれない。


わたしがこの1年間で知ったのは、彼がスラグホーンという苗字で、一人っ子。友達は多い方ではなく、行きつけは図書室。あまり会話を弾ませるようには見えなくて、一人でいることも多い。目立つようなことはあまりないけれど、教師の評判はいいみたいで、成績は優秀。
スリザリンの友人が少しばかり教えてくれた情報と、そして、ほとんどはわたしのストーキングによるものだ。もちろん、ストーキングとは言っても、いつもは滅多に行かない図書室へ行く回数を増やしてみたりだとか、食事の時にその姿を探してみたりだとか、そんな可愛らしいものだ。好きな人ができたら、これくらい多くの人間がそうする、と疑っちゃいなかった。
たしかに、1年何の進展もない、っていうのはかなりイレギュラーケースだとは思うけれど、そもそも、わたしが恋した相手がイレギュラーだから仕方ない、と少し言い訳はさせてほしい。

マグル生まれと、純血主義のお家柄。生まれもったものが、正反対のわたし達。
純血主義の生徒達は、マグルに対する嫌悪が激しいきらいがある。実をいうと、差別的な言動がないわけではない。自分の一目ぼれした彼が、自分にそうかと言われれば、そうじゃないけれどね。
彼とは接点もなければ、スリザリンのテーブルに行ったところで、目が合うこともない。どちらかと言えば、認識すらされていないって言うのが正しかった。
同じ寮の聖28一族でもあるフリントは、わたしが行けば、マグルが何しに来たんだよ、と口にすることもあるけれど、彼の場合はそんな興味すらない、って素振りだ。まだフリントのように、馬鹿にしてくれた方が良かった。
だって、すんなり諦められるかもしれないでしょう?人として最悪だっていくらでも理由はつけられたのに、そうじゃないの。
だからこそ、今のトコロ、どの理由を取っても諦められそうにないから、わたしはホグワーツ3年目も同じ男に片想い中。目も合うことのない彼に、ね。
何がいい、って言われたら、すごく難しい。正直、彼の中身を多く知るわけじゃない。人から聞いた情報と、わたしが見た彼しか知らないし、自分の想像した彼を好きなのかも。それでも、もっと近づいてみたいとも思うし、もっと知りたいとも思う。
そこに、彼が純血だってことも、寮の違いも、そして、有名なお家柄も、何一つ諦める理由にはなりはしなかった。そもそも、まだ何も始まっちゃいないわ。諦める以前の問題よね?必要なのは、踏み出す勇気だけ。


「今年はせめて会話できるくらいにはなるのが目標なの。」
「おーたけぇ目標だな。」
「案外ピュアだからね、ナマエってば。」
「案外は余計よ。」

2か月間、待ちに待っていたホグワーツ生活が、今年も幕を開ける。
どんな一年にしたい?
その問いへの答えは決まってる。恋した相手と、もっとお近づきになりたい、だ。



(失礼してもいいかしら。)(あら、どうしたの?)(ヒキガエルを見なかった?ネビルのヒキガエルが逃げたの。)(うーん、ここじゃ見てないなぁ。)(さっきカエルチョコ食べてたのレイジでしょ。)(流石の僕でも、ヒキガエルは食べません〜!)(いやね、マグルジョークよ。)(もしかして、アナタ、マグル出身のナマエ?)(ええ!って、わたしってば、そんなに有名だった?)(さっき、そっちのコンパーメントで面白いマグル出身がいるわ、って。)(正解じゃねぇか。)(ちょっと!?アー多分、ハッフルパフの生徒ね、イエローのタイだったでしょう?)(違うわ、グリーンのタイだったから、)(ワーオ、スリザリンにそんな冗談言える愉快な人いたかしら?)(僕等の知ってる中じゃあ少ないね。)(まあいいわ、どうせリンゴあたりでしょ。−ねえ、アナタ。ヒキガエル、わたし達も一緒に探しましょうか?)(本当に?)(みんなで探した方が早いもの。ほら、さっさと2人は動く!まったく、なあに女の子に探させてるのよ。)(僕等に厳しくない?!)(失礼ね、男に厳しいの。)(あ〜あ〜、ナマエに男の友達が多いのは、何でだろうなあ。)(アナタ達がわたしを女扱いしてないからでしょう。)(正解!)(ほら、さっさと探しに行くわよ!)







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