04
静かになった大広間に、今年も新入生達が入ってくる。マクゴナガル先生を先頭に、まだタイのない生徒たちがずらり。キョロキョロと空を見上げる子はきっと、マグル出身ね。わたしも同じことをしたもの。
中でも赤毛が目立っているロンは、ウィーズリーの双子の弟だった。わたしの左側に座ったフレッドとジョージが、小声で話すのは、きっと彼のことなのだろう。たまにはお兄ちゃんをしてくれなきゃね。
「いや、今夜のメニューが何か賭けてたんだ。」
「ナマエは何に賭ける?」
「もう!期待して損したわよ...!」
わたし達のヒソヒソ話に、近くにいたパーシーが目をギラつかせる。今年から監督生になった彼等の兄は、こんなお喋りを許してはくれないらしい。パーシーの奴、監督生になったからって浮かれてるんだ。と、弟たちは酷い言いようで、向こうに聞こえていないか、こっちがヒヤヒヤものだ。
静かにしなきゃいけない時、隣に座るメンバーとして、最も好ましくないのがこの2人。つまらない魔法史の授業も、声を出せば追い出されるような図書室も、フレッドとジョージはすぐに人を笑わせようとする。笑わないようにするのは難しいくらいで、みんなが避けようとするのも当然だった。今だって、おなじく。組み分けが始まって、ようやく彼等は落ち着きを見せる。
何十人の新入生が組みわけを終えて、組みわけを見ているのもそろそろ飽きてくる頃だった。ロンは、早々にグリフィンドールのテーブルについて、もうすでに握手をし終わったわ。
ちょうど今、スリザリン、と声高らかに帽子が叫んだブロンドの子は、スラグホーンにはかなわないものの、整った顔立ちをしていたと思う。
「おいナマエ。」
「なに?」
「いま組みわけが終わった純血主義で有名なマルフォイが、お前の好きな奴の隣に座ってる。」
「何ですって...!もう!純血主義ばかり!」
「そういう家柄だからな。」
「いっそ、ウィーズリー家が恋しい。」
「ナマエ、パーシーなら、」
「だから、2人はもう少しわたしに優しくしなさいよ??!」
マクゴナガル先生にお叱りを受けない程度に会話を楽しんでいれば、彼女が名前を口にした人物に、大広間中が静まり返った。
マグル生まれのわたしすら、その名前を知っている。
「ハリー・ポッター。」
それは、魔法界を救ったと有名な男の子。小さな赤ちゃんだった、って言うけれど、彼自身も成長をするもの。もうあの忌々しい時代から、10年が経っている。
わたしは、全くそのことを知らないし、両親も多くのマグルも、それを魔法使いのせいだなんて信じてはいなかった。ホグワーツに入って、歴史を勉強してからようやく知ったわたしにとって、闇と隣合わせだった世界は想像もつかない。
未だに、ヴォルデモートという言葉を平気で口に出せるくらいには、恐怖が遠い存在。でも、無知っていうのは、本当に恐ろしいことだと思うわ。大人になっていく中で、無知は、罪だと言われる。知らないじゃ、すまされないことは、いくらでもあるもの。
「グリフィンドール!」
随分と長く時間がかかって、帽子が声をあげたのは、わたし達の寮。隣で双子が立ちあがったのにビックリしたのはわたしだけじゃないらしい。
ランマルも拍手をしながら、大げさすぎだろ、と苦笑いをしていた。だけど、彼は魔法界じゃ英雄なんでしょう?ヒーローが入ったって、みんなが喜ぶ。本人がどう思うのかは、別としても。
けれど、みんなから握手をせがまれる小さな少年は、まるでそんなことを喜ぶタイプには見えなかった。
「よろしく、ハリー。ナマエ・シンディよ。」
「よろしく、ナマエ。」
「ちなみに、ナマエはマグル出身。」
「で、スリザリンの純血に恋してる変わり者だ。」
「ちょっと、それ必要な情報?!」
双子が余計なことを言うものだから、今年の新入生にも早々その情報は伝わってしまうらしい。
失礼ね!人の恋をなんだと思ってるのかしら。他人に無理だって思われても、わたしが諦めるまで、終わりなんてないのよ!
(2か月って結構長かったと思わない?)(まあ、夏休みだしね?)(早くホグワーツに帰りたかったわ。)(そんなに僕らに会いたかったのかあ。...って!あからさまにスラグホーン見てるんだから!)(だって2か月も見れなかったのよ...?)(まあ、ナマエにしては我慢した方じゃねぇのか。)(でしょ!?)(んもう、ランラン。そうやって、すぐナマエを甘やかす。)(ったく、テメェは、コイツの母親かよ。)(じゃあ、ランマルはわたしのパパ?)(は?ざけんな、死んでもゴメンだ。)(え〜、だめ?パパ?)(おい、ナマエ!)
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