06



「うわ、なにそれ。」

わたしの大きく破れたローブを見て、レイジは眉をひそめた。
クソフリント達にやられたわ。そう返したわたしに、自分より腹を立ててくれる友達がいて、なんだか安心する。そうね、これが自分だからまだよかったけれど、わたしも友達がされていたらすぐに殴りこみに行くかも。
たまに、フリント達はやりすぎることがあると思う。別にいいわよ、ローブくらい。レパロすればいいんだから。ただ、これが殴り合いのケンカになってしまったら、わたしだって軽い怪我じゃ済まない。

「ナマエ、フリントに殴られたって本当かい?」
「俺達が代わりに殴りにいこうか?」
「ビーターのバッド持って言うのは洒落にならないからやめて?」

それに、まだ殴られてないわ、まだね。大丈夫だったことを伝えれば、ホッとしたように、2人はバッドを下ろした。どこでそんな噂になっているのか、と聞けば、そりゃあ真昼間の大広間で見なかったヤツの方が少ないぜ、と返される。
あら、そうだったわね。みんな見ていてもおかしくはない時間帯。まあ、大きな声を上げて助けてくれる人がいなかったのは、流石スリザリンのテーブルってとこかしら。分かるわよ、隣のレイヴンクローの諸君。むしろ驚いただろうし、火の粉をかぶりたくはなかったでしょうね。
もちろん、まったく恨んじゃいないわ!むしろ、お陰さまで、本人の了承を得て、わたしは好きな男に話しかける権利を得たのだから。冷静に考えれば、それに引きかえたのがローブ一着なんて、安すぎるくらい。だって、今までの1年間1度だって、彼の視界に入らなかったのよ?!

「へえ、そりゃあよかったな。」
「これで、1mmも進展がなかった恋も着実に終わりに近づくってわけだ。」
「どうして早々に諦めモードなの?!」
「大丈夫だって、何かあったらロニー坊やをやるよ。」
「僕を巻き込むのは、やめてよ!」

すぐさまに談話室のソファに座っていたロンの声が飛んでくる。
ちょっと、どういうこと。どうして、みんなわたしじゃ不服なのよ!男友達は多くても、相変わらず男の恋愛的人気はゼロよね?いま談話室にいた女子生徒達が思ったことを自分で代弁すれば、ランマルがかぼちゃジュースを吹き出しそうになっていた。

「ナマエは、ハーマイオニー・グレンジャーに友達の作り方を教えてあげたら?」
「なあに、どうして。」
「彼女、友達がいないんだ。」

ロンは、ちょっと小ばかにしたように、そんなことを口にする。友達がいない?なんだか物騒な話をね?友達がいないなんて。
むしろ、どうしたらそうなるのかを教えて欲しいね。と、レイジがキョトンとした顔をすれば、談話室は笑いに包まれた。
友達の作り方は人それぞれ。正直言うと、教えることは難しい。そもそも、自分が欲しいと思っていなければ作れるわけもないものだった。
ハーマイオニーが友達のいないようには見えなかったけれど。しいて言うなら、1人が好きなだけかと思っていた。

「それじゃ、どうしてキミは友達が多いの?」
「賢い質問ね、ハリー・ポッター?」

メガネをくいっと上げた彼に、わたしが返しした表情は、少しスリザリン生のように見えたかもしれない。少なくとも、自分にスリザリンの素質がないとは、自分自身では思っていなかった。そういうところも、あると思う。だって、平気でこんなことを下級生に口にできるから。

「友達が多い方が楽しいと思っているから、ってだけよ。
―だからと言って、待っていたわけじゃないことは付け加えるわ。」

自分のためにも未来のためにも、友達は多い方がいいって分かっていたし、何かあった時に自分に味方をしてくれる人は多いことがいいってのも分かっていた。
1人がいい?それって、物凄く自己中心的な考えよね。友達がいなくってもいいとか、1人でいいとか、自分勝手にも程がある。
人とのつながりがあるから、わたし達が生きていられるってことはマグルの両親からですら学べたわ。むしろ、マグルだったから尚更かしら。

わたしはマグル出身で、この魔法界には何一つ元からあるものがなかった。だからこそ、作る努力をしたわ。アナタみたいに、元から有名なものは持っていない、純血のみんなみたいに家の繋がりもない。
入学して早々、自分のプライドなんて価値にならないからすぐに捨てたし、みんなから好かれようと自分を作ってまで、立ち居振る舞ったわけじゃないけれど、少なくともいつも楽しい自分でいることは努力した。
差別まがいにあっても落ち込んでちゃ邪魔な女だろうから、そういう姿は見せなかった。自分から積極的に、色んな寮の子達とも会話をするようにした。
きっと、驚かれると思うけれど、自分の為にならないことも、いとわなかったわよ。人の為に動ける人には、そういう人が集まるコトを知っていたから。判断は、損得ではしなかった。だから、友達が増えただけ。わたしなりに増やしたい理由があるから、そうなだけ。

「人から見れば、わたしって自由で能天気なクソ野郎でしょう?」
「一応、野郎じゃなくって女だとは、思われてると思うけど...。」
「ハリー、言葉のあやってヤツよ。」

まあ、そんなわたしが許されるのはね、わたしが自由で能天気なクソ女でも、自由と、ワガママや無責任を、履きちがえていないからだと思うわ。同じように振る舞っても、嫌な顔をされる人だっている。
そういう人達に、どうしてあの子だけ?って、言われてることもある。わたしの友達から言わせれば、全く違う、らしいけど。そりゃあそうよね、自由とワガママは、似ているようで、全く違う。自由と無責任も、同様。
それが分からない人から見たら、わたしってすっごく嫌な女だって自覚はあるわ。でも、それが分からない奴なんてくそくらえだし、わたしの周りに必要かと言われればそうじゃないわね。

「つまるところ、キミは人気者ってわけだ。」
「そうね、否定はしない。」

だって、そうじゃない自分でいる努力は、していないもの。だから、そう言われても当たり前のことをして生きているだけよ?あら、わたし何か変なことを言った?

「ナマエは正論を言うんだけど、これがたまにグリフィンドール生以外には通じないのさ。」
「ま、正論をぶつけられて否定をする人間は、図星ってやつだろうがな。」
「僕もその意見は、嫌いじゃないね。」
「なによ、好きでもないってこと?」
「やだな、僕達がそういう慣れ合いのような会話をするのは、気持ち悪くない?」
「アー、違和感は感じるかも。」
「でしょ?」

目の前で繰り返されるテンポの良い会話を見て、1年生から出てくる言葉が、なるほど。だったのには、きっと理由があるのね?キミが作れって言う友達の意味が少しは分かると思う、って言葉を信じるわ。

分かってくれて光栄よ、1年諸君。
まだまだアナタ達はこのホグワーツで学ぶことが沢山ある。わたし達もそうだし、みんなそう。それに気付くか気付かないかは、結局、自分次第。

何のために、ここに入った?
魔法を学ぶためかもしれない。でもね、何より、人として学ぶことがあるから、わたし達は学校ってものに行くのよ。そうして仲間を得ることで、わたし達は多くを学べるの。



(キミはもうちょっと、ナマエと会話してみた方がいいぜ。)(なによ、いきなり。)(友達がいないんだから、彼女に学ぶことがあるだろ?)(失礼ね!別に不自由なんてしていないわ。)(...アー、あれはない。あれはないよ、ウィーズリーくん?)(俺でもひでぇと思うぜ。)(おいおい、俺達にあんな弟いたか?)(突然弟無くすのやめてあげようね?)(ロンは女の扱いがわかっちゃいない。)(ホント、チャーリーが聞いたら泣くわよ。)(でも、チャーリーはナマエに甘かったからな。)(男は好きな女の前じゃウソをつくものさ。)(は?)(何だ、知らなかったって顔してるぜ。)(知ってるわけないじゃない!ちょっと、なんで在学中に教えてくれなかったの?)(聞かれなかったからね!)(別に告白もされなかったけれど?)(そりゃあもう今じゃアイツはドラゴンにぞっこん。)(ナマエのことは忘れてルーマニアで今頃ドラゴンの子作りさ。)(色んな意味でヤベェ。)(っていうか気付いてなかったんだ、ナマエ?)(何でみんな知ってたよね?みたいな流れで話すんの?どういうこと?今更どんな顔して会えって?)(だから安心しろよ、もうドラゴンで頭がいっぱいだからさ。)(アー、じゃあいっか?)(お前もどんな神経してんだよ、チャーリーが不憫に思えるぜ。)(でも、わたしの恋は最後まで応援してくれてたわよ?)(そりゃあ、男のプライドだろ。誰が好きで、惚れた女の恋愛相談聞かなきゃいけねぇんだ、そりゃドラゴンにも走る。)(僕はもしそうなっても、ドラゴンには走らないけどね。)







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