00-06.
「なんだ、お前、新入生だったのか!」
まるで、太陽のように笑う彼は、カリムと名乗った。いままでの経緯を簡単に話せば、豪快に笑い飛ばしてくれる。いやあ、そんなこともあるんだな〜、とすごく簡単に受け入れてくれるあたり、もしかしたら、異世界から人が来ることも、年齢や性別が違いながら入学することも、時々あるのかと錯覚した。クローリー曰くそうではなさそうだけれど。
「あっ、今からお茶にするから、なまえもどうだ?」
「いいの?」
「当然だろ?なまえも1人でいるのは、寂しいもんな。」
アラサーにもなって、ひとりが寂しい、なんて感覚は正直ないんだけれど、たしかに、この全く右も左も分からない場所にいるのは、寂しい、のかもしれない。心細いとも言えるし、彼の言うことは、少なからずあたっている。でも、当たっているとは思われたくなくて、なんとなくそれを、やんわり否定した。
それすら彼は気にしてないようで、ジャミルが用意してくれたお菓子はうまいんだぜ、とわたしの先を歩きながら、上機嫌そうだ。元々、そういう子なのだろう。人の話を聞いていないのか、すごくマイペースなのか、どちらにも当てはまりそうなタイプに見えた。
彼は、軽音部に所属しているそうで、今は、その部室に向かっているそう。寮からお菓子を持ってきた帰り道に、わたしを見つけ、声をかけてくれたという。最初は新しい先生だと思ったみたいで、そりゃあ年齢を考えればそうよね、とぐうの音も出ない。
ここだ、そう扉を豪快に開けた彼は、足早に教室の中に入っていく。その背中を追いかけ、わたしも失礼します、と部屋の中を覗き込んだ。
「なまえ、入ってこいよ〜!」
「えっ、ちょっと、カリムくん、誰それ?!」
「ん?なまえだぜ。」
「いや、そうじゃなくて〜明らかに外部の人じゃん!」
「いや、新入生だ!」
わたしを手招きするカリムくんと、わたしを見て、驚いた顔をする明るい赤毛の男の子。その様子を傍目に、やっぱりカリムくんがかなりの強者だったんだな、と理解した。いや、普通そうよね?その反応が正しいと思うわ。新入生って言われてすぐに、はい、そうですね。なんて理解力が高すぎるもの。
しばらくその押し問答は続いたけれど、結局、赤毛の彼の理解は得られなかったらしい。カリムくんを差し置いた彼は、わたしのところまでやってきて、丁寧に言葉を選んだ。
「えーっと、お姉サン、誰かの身内とかじゃないのかな?」
「うーん、一応新入生みたいで。」
苦い笑みを浮かべてみれば、目の前の彼は、少しだけ驚いたような表情を見せて、今度は、やれやれと首を横に振る。みんな、逆に物分り良すぎて、魔法がある世界の強さをお姉さんはむしろ感じてるわよ。
「なんじゃ、見ない顔じゃな。」
今度は、真後ろから声が聞こえた。驚くわたしの横を通り抜け、マゼンタのインナーカラーの入った髪色の男の子が、部屋に入ってくる。わたしの目の前でくるり振り向いた彼は、驚かしたな、人の子よ。と小さく笑った。血色の少ない肌の彼にそう言われると、まるで目の前の彼が、人以外なのではと、錯覚する。
そんな空気を破るように、大きな声が部屋に響いた。
「リリアも揃ったし、お茶にしよーぜ!」
「さっすが、歪みないねぇ、カリムくん。」
それくらいの方が、この世界で生き残るのには必要なことなのかもしれない、なんて。
(オレたちより年上なのに、新入生なんて、おもしろいと思った。オレたちの知らない世界を知る彼女に、興味が尽きない。)
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