今日のランチタイムにリラクゼーションルームに集まったのは、社長管轄の女性陣。4人でソファに座って、テーブルを囲んだ。
いつも通り、女性同士の会話は絶えることがなく、話に花が咲く。昨日のデートはどうだった?とか、最近新しくリップを買ったのが良かっただとか、恋愛リアリティショーの感想だとか。取り留めのない会話をするのが楽しい。
1人で過ごすのは嫌いじゃないものの、同僚達とは仲が良く、こうやって集まることが多かった。会社の人とわざわざ仲良くするのが面倒くさいという時期もあったけれど、人柄のいい人達の多いこの職場ではそれが嘘みたい。
持ち寄ったお弁当を食べ終わることが難しいくらい、会話に熱中してしまうのが、いつものわたし達のパターン。ほんと、笑いが止まらない。お昼休みが半分経って、今日はようやくお弁当の3/4を食べ終えたところだった。一息つくように、紅茶で喉を潤す。

「なまえちゃん。」

不意に名前を呼ばれて、その声の方を見上げると、そこにはフロイドさんが立っていた。気まずい、と感じるのは、向こうも同じだろう。こんな女性陣の会話の間に、わざわざ声をかけてくるのだから。
昨日のことも相まって、いま、彼と顔を合わせるのは、嬉しくはなかった。

「ちょっといい?」
「・・・はい。」

即答できず、少し間が空く形で答えることになる。いつもだったら、どうしました?とか、にこやかに会話を出来る自信があるのだけど、昨日の今日だ。なるべく、他の人に気付かれないように、声色も表情も気にするものの、完全に普段通りにはしづらかった。
ちょっと行ってくるね、と席を立ったわたしに、残りの3人がわざとらしく、顔を見合わせる。何だか期待させてしまってるところ大変心苦しいんだけど、皆さんが思ってるようなことじゃありません。むしろ、正反対かもだわ。
廊下の奥にある、人があまり来ない非常階段へと連れられたところで、さっきまで背中を向けていた彼が、ようやくこちらを振り返る。

「その・・・、昨日は、ごめん。」
「・・わたしこそ、強く言っちゃってごめんなさい。」

190cmくらいはある大きな男性が、まるで小さな子供のような悲しい顔をするものだから、わたしも同じ言葉を返さずにはいられなかった。5歳の甥っ子が、怒られた時の表情と、酷くリンクする。
互いに目を合わせるのが少し気まずくて、それでも、ちゃんと互いに目を見て。わたし達の間に静けさの流れる中、彼の片手に持っていた紙袋が手渡された。

「これ、ラッコちゃんがくれたのとおんなじの。」
「・・ありがとうございます。わざわざすみません。」
「ちげぇの、俺がなまえちゃんにやなことしたんだから。なまえちゃんは、悪くねぇよ。」

そして、もう一度、ごめん、が告げられる。そこまでされて、許さない程わたしだって鬼じゃない。なんであんな奇妙な行動をされたのかは、不可解だけれど、こうも反省されては、こっちが悪いことをした気持ちにもなった。もしわかってやってるんだったらタチが悪いけれど、目の前の彼は、気分屋なところはあるが、どちらかと言えば純粋な人なことは、分かっている。
そういえば、最初にこの会社に来た時は扱いが分からなくて、ローズハートさんと同じくらい難しかったのを思いだした。むしろ、我ながら良くここまで、距離を詰められたものだ。入社当初だったら、きっとこんな風に謝罪なんて得られなかっただろう。

「・・・次はないですからね。」

成人男性の扱いが、5歳児とさして変わらないのは、正直これでいいのか悩ましいけど、わかったと指切りを強請るのは、目の前の彼なので、それでいいのかもしれない。まさか、大人になって、指切りをするとは思わなかった。
まあ、いいのか・・・フロイドさんだもんね。こう納得させられるのだから、ある意味彼は、役得なのだろう。




Tuesday lunch







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