アオキと喧嘩をした。まぁ、毎日が喧嘩のようなものだけど、今日は一段と「喧嘩」をしてしまった。その時、彼に対して恐怖を感じたので、自分の足で彼の胸あたりを思いっきり蹴った。たったそれだけのことで彼はジッと動きを止めて後退し「病院に行きます」その一言で今日は私が勝利をおさめたのだと気付く。「え? そんなに…?」「息がしづらいです」少し可哀想なくらいにいつもより背中を丸めて、扉の向こうに消えてしまった。いったい何時間くらい待っていたのだろうか。気が付けば私は居眠りをしていて目を覚ました時には、彼は部屋の中に戻っていた。どうやら私が起きるのを待っていたらしい。「肋骨が折れてました」開口一番にそんなことを言われて「弱っ」つい本音が出てしまう。それを聞いた目の前の彼はというと、嗜めるような目つきをして、また私を制圧しようとする。「そんな口調は今日でお終いにしてください」そう言って、ガチャリと扉の鍵をかけた。ガチャ、ガチャン!まだかけてない方の二つもついでに。外の気配さえ分からないこの部屋で、これ以上何を閉じ込めようとしているのか。「何処にも行けないよ」「行かなくて良いです」「もう返せないものは良い。せめてもう一つ居場所が欲しいだけ」「貴女の居場所は自分の所だけで充分です」それだけ言って部屋の隅にあるテーブルに向かって歩いた。彼の背中しか見えないからその表情など分からなかったが、動作の度に「ッ…、ッ…」という息を漏らしてんだが呟いてんだか分からない声を出す。「ねぇ、お願い」最後の手段である、甘ったるい声を出したが「それはもう効かないです」と突っぱねられた。途端、鼻を掠めるお惣菜の匂いに、背を伸ばし覗き込むようにして、彼の手元を見た。そこには、小さな容器に入った少しの煮物、あとおにぎりが二つあった。「あり得ない」それが食べ物だとさえ気が付かないくらいに、いつもより量が違う。「貴女のせいで食欲が無いです」「食べなくてもいいんじゃない」「食べさせてください」流石にそこまでしなくても。そう思って彼の顔を見たときに「…それだけ、それだけで良いんです」と何とも言えない顔で言われて、これ以上何も言えなくなってしまった。「はい、あーん」「……」「美味しい?」「………」「私の分は無いんだ」「…………」「骨折したとこ見せて」「……………」「白いのが巻いてある」可哀想、でも、私は謝らない。その代わりに「可愛い」とだけ言って、また彼の口におにぎりを運んであげた。
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