今日の夕ご飯はピザの出前にした。疲れてたから。ただそれだけの理由。「え、へへ」「…」はぐらかすように笑えば、つい先ほど会社から帰ってきたアオキは既に悪い目つきを更に研ぎ澄ませて私のことを見た。「夕ご飯は…? 先ほどピザ屋の配達員がモトトカゲを入口に停めているのを見ましたが」まさか…、その確信に近付く言葉は、訪問者が玄関の呼び鈴を鳴らしたことによって打ち切られる。「貴女のご飯が食べたかったです」「じゃあ、それ食べなくても良いよ」「…」大漢食の彼のために注文した3枚もの味の違うピザ。それを目の前のテーブルへ広げているときに、彼がぽつりと呟いたソレは私の心を抉る。だって、毎日毎日家事をするだけの日々に飽き飽きしてきたの。疲れていたの。仕事がある貴方にはそんな苦労とも言えない苦労なんて分からないでしょうがね。そんな不満はマルゲリータと共に胃に押し込んだが、咀嚼しきれないものがフィルターを通しても形を変えて出てくる。目の前の、彼のことを追い詰める。「ねぇどうしてお皿があるのにその上で食べないの」「零さないでよ」「食べ物の上でリモコンを操作しないで」「今カラミンゴを出したらダメだよ」「ピザが大きな目玉に見えちゃうんだから」「そんなことも分からないの」それを言い続けた後の彼はというと、ピザをしっかりと完食したあとに隣の部屋に籠り切りになった。一体どんな拗ね方をしているのだろうか。それだれが気になって寝室の部屋を覗きに行った。「ねぇ怒っちゃったの」「怒っていません」つまんね。「ですが、食事中にあれこれ言うのは止めてほしいです」「だって、当たり前のことだよ」「貴女との食事は楽しくない」「じゃあ、もういいんじゃない。全てを元に戻そうよ。私の家も職場も、返してよ」吐き捨てるようにして、すぐにその場から逃げた。彼の地雷のギリギリを狙っていたが、気が付けばその盛り土に足をかけてしまっていたらしい。何をされるか溜まったもんじゃない。あー怖い怖い。しかし、時間が経ってもあの部屋から彼は出てこない。何もされない?それが分かったからなのか、安心した私は興味本位でまた覗きに行った。ベッドの上で顔を壁側に向けてうつ伏せになった彼がいた。「おーい?」「自分が、帰ってこなかったらピザはどうやって受け取るつもりだったのですか」表情の分からない背中が喋る。「私じゃ開けられないから、玄関に置いてもらうよ」「それじゃあ、冷めてしまうじゃ無いですか」怒ってるのか、私をどうしたいのか、閉じ込めたいのか、このまま続けるつもりなのか、もう分からない。分からないけど、目の前でくすぶっている男に嗜虐心が湧いてきたのでキスしてあげた。
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