※第一再臨姿の話※






白い首に赤い蛇が巻き付く。
ぐるぐると、ぎゅうぎゅうと。
みしり、と何かが押しつぶされるような嫌な音がした。

またこの夢か。

もう嫌じゃ。何度みても慣れん。
いつもどおり目を瞑り、やり過ごす。


「……さ……ん」

遠くで誰かが呼ぶ声がした。

「……以、蔵さ……ん」

マスター?
ないでそないに苦しそうにしちゅうがじゃ。
待っちょれ、今わしが助けてやるきに。
こない夢すぐに抜け出して――――

目を開ける。

「マスター!」

赤い蛇。

マスターの首に絡みつくそれは、紛れもなく自らの指だった。




「ごめんね」

マスターがへなへなと笑った。
もっと早く助けてあげたいんだけどいつもうまくいかないや、と。
その首には蛇が這った跡が青黒く残っている。

「……ないで謝るんじゃ」

謝るべきはわしじゃ。
マスターはこないに強くあるちいうのに、わしは弱いままじゃ。

「はよ強くしちくれ」

この姿は駄目じゃち。
握りしめた拳は血に染まって赤い。洗えど洗えど落ちないこの色は重ねた罪の色だ。

「ごめんね」

マスターはまた謝った。

「……マスターは強すぎるんじゃ」

「以蔵さんは優しすぎるよ」

優しさは、言い換えれば弱さだ。
頭を冷やしてくる、と言い残して部屋を出るわしを、マスターは無言で見送った。
ボロが出る前に、この場を後にしたかった。
これ以上、弱さを暴かれる前に。




弱いのは私。

以蔵さんが苦しいのわかってて、それなのに私のわがままでずっと傍にいてごめんね。

罪悪感で、以蔵さんを縛ってごめんね。






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