龍
※「
蛇」後日談
「いつもごめんね、お竜さん」
「別に、このくらい構わんが」
嫁入り前の女子に傷をつけるやつがあるかあのナメクジめ、等とぶつぶつ言いながらも、包帯を巻く手つきは優しい。
「今回のはしばらく消えないぞ」
また明日にでも様子を見に来る、と言い残しお竜さんはふらりと部屋を出ていった。
「以蔵さんは叱られたいみたいだから、僕からは何も言わないけど」
開口一番にそう釘を刺され、返す言葉に詰まる。
大雑把で鈍感という振りをしているくせに、この男は嫌なところで敏い。
こういうところが好かんのじゃ。
「消えるまで2週間は掛かるって」
お竜さんが言ってたよ。
トン、と首筋に突きつけられた人差し指。
「ねえ以蔵さん」
あの子は普通の女の子だよ。
特別強く作られているわけでもないし、痛いものは痛い。
「死ぬときは死ぬ」
それを肝に命じてね、とまたいつものようにヘラヘラした笑み。
「僕は以蔵さんを斬りたくないよ」
ここにいるサーヴァントは皆、マスターに喚ばれたのだ。
マスターに危害を加えようものなら、当然「敵」と見なされる。
自分が未だここにいることを許されているのはマスターを殺していないからだ。
マスターが自分を庇う限り、他の者たちはそれに従う。
結局、マスターに守られているのだ。
「……情けない」
情けない。
どれだけ人が殺せても、女子ひとり満足に守れない。
やはりこの手は傷付けることしか出来ないのだ。
守るためには出来ていない。