穏やかな時間が流れる。マイルームを訪ねたとして本を読んで過ごすことが多い俺は今日も変わらずいつものように彼女が休むベッドに腰をおろした。すると突然彼女は「さむい」と言って膝を抱いて俺の肩に頭を寄せる。俺の腕に顔を埋めた彼女は「窓閉めて」とくぐもった声で話すが、この部屋にそんなものが無いことくらい部屋の主は百も承知だろう。さてどうするか。「暖房をいれるか?」そう尋ねたとしても恐らく彼女の欲したものではないだろう。分かっていながらも俺はそう尋ねるしかなく、そんな俺に彼女は「寒くなくなるからいらない」とまた難問を突きつけるのだった。
これは彼女の退屈しのぎであり我儘なのだろう。そうして俺のことを試しているのか。だとしたら何が正解なのか全く検討もつかない。手元にあった本は栞を挟まずに閉じてしまった。答えを探して彼女を見つめていると時折こちらの様子を伺っているのだろうか目が合い、そしてまた顔を伏せる。
なるほど…何もわからない…。
一体どういうつもりだったのか少ししてから彼女は静かに笑っては「困った?」と無邪気に尋ね、嬉しそうな表情に今までの答えなど気にならなくなった俺はつられて笑みがこぼれる。「ああ困ったさ」そう言って親指で彼女の唇をなぞる。それからそのまま覆うように頬をなぞると、言葉にはせずとも瞼を閉じることで心地よいと示してくれる。
距離を詰めて俺の胸に頭を預ける彼女が「困らせてごめんね」と謝るのがまた愛おしくて自然と優しく包み込んでしまったが、なるほど…これが彼女の望んだ答えなのかもしれない。
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