甘いものが好きでした。生クリームたっぷりのケーキが好きです。砂糖をまとったドーナッツも好きです。
チョコレートは他の甘いものよりも特に好きで、鞄の中を探ればいつでも一口チョコが出てくるほどです。

中でもリーマスさんの作ってくださるお菓子が1番大好きなのですが、お忙しい中わざわざホグワーツにまで送っていただくわけにもいきません。
なので今回は、ハニーデュークスで手に入れた、日本で言う福袋のようなものを並べて、満面の笑みでどんどんと開封していました。

もちろん、お馴染みの地下牢教室で。

対面のソファに座っているスネイプ先生は呆れた表情をしつつも紅茶を飲んでいます。
私の傍にも紅茶が用意されていましたが、私はそれよりもハニーデュークスのお菓子に夢中になっていました。

明日の授業の準備ももう終わっていますし、生徒達の丸付けも全て終わりました。
あとはもう少し調合の研究を続けたいところですが、根詰めしてもうまくいくものではないので、ちょっと休憩です。

何個目かわからない綿飴羽ペンを舐めていると、不意にスネイプ先生から言葉がかけられました。

「……飽きないのかね」
「美味しいですもん。飽きませんよー」
「これの何がいいのか」

スネイプ先生は切り捨てるようにそう言うと、紅茶のカップをソーサーに戻して私が広げているお菓子の1つを手に取ります。

「食べても?」
「はい! お好きなのどうぞ〜」

こんなにもいっぱいあるのですから、独り占めしてはいけません。あまり甘いものが好きではないスネイプ先生が包み紙を取りながらしげしげと眺めていました。
片手にお菓子を持ちながら、スネイプ先生は私と見比べるようにして軽く掲げて持ちます。何か思い至ったスネイプ先生はぽつりと言葉を零します。

「…愛情が足りてないと、甘味を求めると聞くが」

一度言葉を区切ったスネイプ先生の視線が私へと向きます。私は先生と視線を合わせてから、数回瞬きをして次にはふにゃりと気が抜けたように笑います。スネイプ先生の短い溜息。

「Ms.には当てはまらないようで」

幸せいっぱいの私はにこにこと笑いながら、お皿に広げたマシュマロを手に取ります。掴んだマシュマロは淡いピンク色のハート型をしていました。

「そりゃあもう先生からはたっぷり愛情を貰ってますから」

私が学生の時から。そして教師となった今でも。長い期間一緒に過ごしてきていますが、スネイプ先生は自分の感情を表すのが得意だった気はしません。
それでも私に何かあればすぐに駆けつけてきてくれるように、悲しさを覚えた時にはただ黙って傍に居てくれるように、こうやって私が息抜きをしたいなぁと思った時には一緒にお茶をしてくれるように。
スネイプ先生は沢山沢山私を甘やかしてくださります。

それがどうしようもなく心地が良い私は、きっとこれ以上にないほどにスネイプ先生に愛されているのでしょう。
鼻歌を歌いたくなるほどにご機嫌となった私。ですがそこでスネイプ先生がどこか驚いているかのような表情をしていて、私も釣られて吃驚顔。

「あれ。そういうお話ではなく!?」
「………我輩はルーピンのことについて言ったつもりだった」

ぽつりとそう言ったスネイプ先生は、先生自身のことは深く考えていなかったらしく、私は眉根を寄せて複雑な感情を口を尖らせて不服を表します。
確かに義父のリーマスさんは私のことを本当の娘のように愛してくださっています。それは疑ったこともないほどに大きなもので、それはもうスネイプ先生にも匹敵するような勢いではありますが。ありますけれども!

「一応。一応念のためお伺いしますが、私と先生はお付き合いしているんですもんね!?」
「………一応は付けなくていい」

誤魔化すように視線を逸らしたスネイプ先生を私はじぃと見上げます。私は「あーあ」と拗ねたように言ってハート型マシュマロを口に入れます。もぐもぐと味わってからご機嫌だった私はちょこっとだけいじけた姿を見せます。

「これでは愛情不足で甘いものが食べたくなっちゃいまーす」
「そろそろやめておきたまえ。
 紅茶のおかわりは?」
「飲みます!」

スネイプ先生の提案に私はにっこりと笑顔を向けます。杖を振るい、私のコップにおかわりを注いでくださいます。
私はそんなスネイプ先生を見ながら立ち上がり、不思議そうな顔をするスネイプ先生のお隣へと移動しました。
私のためのスペースを詰めて開けて下さるスネイプ先生に、寄り添って先生の腕に寄り添います。なんていったってスネイプ先生からの愛情はまだまだ足りてませんから!

寄り添う私を邪険にすることなく、受け入れてくださるスネイプ先生ににこにこと機嫌を取り戻しながら、先程掴んだお菓子が思っていたよりも甘かったのか、む、と顔をしかめながら紅茶を口にするスネイプ先生と一緒にお茶会を続けたのでした。


(愛情甘味料)


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