親しみを見せない
髪の毛を金髪に染めたときの周りの反応といったら。尖っていたいとか、不良だったとか、そういうわけじゃなかったけれど、ただ人のことを見た目で判断する人間が嫌いで、それが親だった。親は私に小さい頃から「あなたは聡明そうな顔をしているからきっと頭がいい」と言い、勉強を強要した。毎日何時間も勉強をし、さらに塾にも通い、私のたった16年の人生の大半が机と向き合う時間で出来ていた。親は、私が進学校に合格したときには当然という顔をし、その後のテストも100点を取ることを期待した。
けれど、16年も生きていれば自分なりに理解をする。私は恵まれた才能を持っていない、凡人なんだって。
初めて96点のテストを取ったときに、私は父に引っぱたかれた。母は泣いていた。叩かれた頬がじくじく傷んで、無性に悲しくなった。居場所なんてないじゃんか、どこにも行けやしないのに。
私は家を飛び出し、持っていたお小遣いを持って美容室に飛び込んだ。震える声でオーダーを伝えると、数時間後にはどこの誰でもない私が居た。鏡に映る私は、ありきたりな言葉を使えば「生まれ変わった」ようで、心が酷く揺らいだ。
あれから家に私の居場所はない。元々なかったんだから当たり前だ。髪の毛を染めた私を見て親は酷く動揺し、途端によそよそしくなった。見た目が変わっても勉強ができなくても「あなたは私達の子供」なんて言ってくれるなんて思っていなかったから、別にいい。それでも以前より、心が生きている気がする。私は私を生きている。
同じクラスの友達の中には、金髪になった私を見て距離を置く子もいたし、そうじゃない子もいた。新しい価値観が自分に備わるとわかるのだけれど、見た目で人を判断し離れていくような人間はきっと将来仲良くすることはないのだろう。だから、別に今関わりなくなっても構わない。仲良くしてくれる子とだけ、仲良くしたい。
「名字さん、髪の毛明るくしたんだ」
「うん」
「いいね。とても綺麗」
同じクラスの犬飼くんは、金髪になった私を初めて見たときそう言った。笑いながら「染めるとき痛くなかった?」なんて聞いてきて、「痛かった」と言えばより一層顔の筋肉を緩めた。
「名字さんって、もっと真面目なんだと思ってたけど、急にこういうことしちゃうところは面白いね」
「そうかな」
「そうだよ、少なくとも俺にとっては」
同級生は他人行儀のような態度だったのに、犬飼くんだけが面白がって近づいてきた。対して話をしたことがなかったのに、私の目の前の席に腰掛けて、理由を根掘り葉掘り聞いた。「なんで染めたの?」「親に反抗したくて」「親のこと嫌いなんだ」「大嫌い」。犬飼くんに問われればスラスラと言葉が溢れて、きっと掬いきれないくらいにはつもってしまった。話を引き出すのがとても上手いんだ、彼は。
「変わらずにそのままいてね。十分素敵だから」
予令が鳴り、自分の席に戻る前に犬飼くんはそう言った。いつものように飄々とした彼も、誰に何を言われても、思われても、そのままでいればいいと思うのだ。