なんでもない日
例えば私が無糖のミルクティーが好きだとか、君の目が宝石みたいにきれいだとか、締め切ったカーテンから漏れる光で起きるのは嫌いじゃないとか、きっとシャルと一緒じゃなきゃ気付かなかったと思う。ベッドに寝そべりながら携帯をいじる彼は私に目もくれず何かに夢中になっている。流行りのゲームを入れた、とか言っていたからそれだろうか。
きれいで可愛い顔をしているのに、二の腕なんかは筋肉すごいし、男の人なんだなあと思う。盗賊だっけ。泥棒だっけ。仕事を聞いてもいつも笑ってはぐらかされるから、よく知らない。
「名前の出身はジャポンだっけ」
「うん」
唐突に投げられた問に答えると、目線だけこちらに向けてシャルは続けた。
「ジャポンは年末年始にこたつに入りながら餅を食べるって聞いたことあるなぁ」
「よく知ってるね。実家は今頃そうしてるかも」
「名前もそういうの好きだった?」
「うん。多分、ジャポンの人はみんな好きだと思うよ」
暫く帰っていない実家のことを思い出しながらそう言うと、シャルはむくりと起き上がって、ベッドの側に投げてあったカーディガンを羽織った。素肌にカーディガンを着て似合うのは彼くらいなんじゃないかな、なんて思う。
「餅、買いに行こうか」
「好きなの?」
「いや、気分。たまにはそういうのもいいでしょ」
ほら、着替えておいでと毛布をはぎ取られて、寒さに体が縮こまる。暖房つけていないから起きるタイミングは自分で選ばせてほしい。む、とした顔でシャルを見た。毛布は返してくれそうにない。
仕方ないと起き上がって、上着を探す。あれ、ここにあったカーディガンは…。
「ねぇ、それ、私のカーディガンだよ」
「げ」
私にとって少し大きめのサイズの服は彼にも着れたらしい。返してと伝えると、なんか小さいと思ったんだよなあ、とシャルは楽しそうに笑った。