嵐山を想う

※雨の日、コンビニ前にて君と の続きのようなもの

夏の燻る雨の匂いが、どうしようもなく好きだった。俄雨が降り出す前の嫌な暗さも、降り終わったあとの寂しい地面も、全部好きだった。
ベランダからぼうっと外を眺めた。きっと、すぐ止むだろうから。それまではタバコを我慢しようと思ったけどどうにも口が寂しくて仕方ない。

「嵐山、准」

こないだ、私を家まで送ってくれた男の子の名前だ。知っているのは名前と、顔だけ。テレビでたまに見かけるのに、気づかないもんなんだなあ。手持ち無沙汰になって、タバコの蓋をかぱかぱと開閉する。
きっと、誰にでも優しい男の子なんだと思う。見ず知らずの女のためにコンビニで傘まで買って家まで送るか?考えられない。けれど、きっとそういう人。私が理解しようとしてないだけ。

火をつけることなく、タバコを口に咥える。そのままフィルター越しに息を吸い込んでほんの少しだけするメンソールを確かめた。変な味。しけっているみたい。
早く火をつけて、肺を煙で満たしたい。手っ取り早く満足が得られる、寂しさの埋め方。息を吐いても体の中に残る嫌な重さが何よりの救いになることだってある。

「やっぱり、雨は、嫌いだな」

嫌いにさせたのは、誰なのかな。