迅悠一の救済
全部投げ出してみたいといつから考えるようになったのか。例えば電車に飛び込んでみたら。交通量が多い交差点を突っ切ってみたら。ビルの屋上から身を投げたら。簡単にできてしまうものをしないように繋ぎ止めているのは、一体何なんだろう。そんなグラグラした土台の上に私は立っている。
「死にたいか死にたくないかって言われると、わかんない。でも、一度思い切っちゃえば自殺なんてできるだろうし、その思い切りがいつどこで起きるのか、それを考えるのは少しこわい」
「気持ちはわかるなあ」
「迅もそうなの?」
「うーん、どうだろ」
ボーダー所属の男に死にたいの?って聞くなんて馬鹿げてると笑われるかもしれない。でも私もボーダー所属だ。誰かを守るために生きる人間が、自分の生死について疎かだなんて。
救いきれず溢れてしまう命があるように、私もきっと何かのタイミングで死んでしまうのだろう。それが今か今じゃないか、私に決めることができるのだ。
「きっと今、名前が屋上から飛び降りても俺は助けないよ」
「嘘。絶対助けるくせに」
迅の胡散臭そうな笑みは変わらず、臆病であと一歩踏み出すことができない自分に気づいている私も、たまらないなぁと笑った。