「ご飯中にごめんね〜みんな〜聞いてくださ〜い。本日の夕食、肉じゃががいいかカレーがいいか多数決を取ります…カレーの圧倒的多数ですね、わかりました。今からルーを買いに行きます」
「え、無いんすか」
「それがね、驚いたことに無いんだよ」

昼食中に夕食のメニューについて聞くのはどうかと思ったが、聞いて回るのも放送をするのも自分でどちらかに決めるのも面倒くさかったので許してほしい。隊員たちはほとんど全員がカレーに挙手をしていたので気兼ねなくカレーにする決断をする。
近くに座っていた荒船が不思議そうな顔をしている。私だって目の前にじゃがいも玉ねぎにんじんのいかにもカレー作るぜ!セットがあってルーがないと思ってなかったんだよ。忘れてきた張本人はキッチンで勝手に餅焼いて食べる自由プレーをしていたので、脇腹を強めに小突く。

「太刀川付き合え」
「え、俺名前さんと付き合うのはちょっと」
「カレールー買いに行くだけだよ!」

太刀川を強引に引きずって本部の社用車の助手席に押し込める。運転席に乗り込んでシートベルトをするとエンジンをかけて発進した。
合宿所を出て一つ目の信号でタバコに火をつける。少しだけ開けた運転席側の窓から紫煙が逃げるように出ていくのを横目で見た。

「社用車じゃないんすかこれ、タバコ吸っていいの?」
「こっちで運転するの私だけだからなあ。もう一人の職員は自分の車あるし」
「ふーん」

前に諏訪たちと行ったスーパーでいいかと車を走らせる。近いし。太刀川は窓に肘をかけ頬付けをついている。ぼやーっとした表情してるけどお前のせいで買い出し行くことになったんだけど?わかってる?絶対合宿で誰と戦うかしか考えてないでしょ。
ハンドルを握りながら、ふと、三門市から合宿所までバスで来たんだよなと思う。「太刀川がバスって似合わないよなあ」と呟くと、眠そうな太刀川がこちらに視線を向けた。いや寝んなよ。

「二宮が居たら車に乗せろって頼んだけど、日程別になったからなー」
「二宮嫌がりそうだね」
「嫌がってた」
「ウケる。唯我んちの車で来るのも楽しそうだね」
「あっ頭いいな名前さん!」

ぐだぐだ中身のない会話をしスーパーへ着くと、太刀川を待たせて外の灰皿でタバコを吸う。その様子を太刀川がカメラを向けていると気づいた。

「名前さんこっち向いて」
「待って写真?」
「動画」
「動画!?忍田さんにだけは送らないで!」
「ハハッ必死だな」
「クソ野郎〜」

上司に任務時間内にスーパーでタバコを吸ってサボってる動画を送られてみろ。いやサボってるわけではないんだけどサボってると見られても仕方ない。実際そう見えるし。引っ手繰るようにしてスマホを奪い撮影をやめさせると、タバコの火を消して店内に駆け込んだ。カレールー買ってさっさと帰ろ。まじでサボってる通告されたら敵わない。

調味料のコーナーを目指し早足になる。太刀川が後ろから何回かスマホを向けてきて、逃げたけど数回は撮られてしまった。店内で遊ぶな!と怒っても太刀川は笑ってのらりくらりと交わす。埒が明かないと、カゴにカレールーを突っ込み早足でレジに向かった。
セルフレジで会計をする様子もばっちり動画に収められてしまった。疲れたので抵抗するのをやめた。太刀川、思いっきり笑ってたけど声入るのとか気にしないのかな。カレールー会計する女を撮影して楽しいのか私には理解できない。

「なんでさあ、そんな写真撮るの」
「…ん〜?合宿だから?」
「どういうこと?」
「思い出残したいじゃん」

レジ袋を太刀川に持たせて、車に戻る。太刀川ってそういうの気にするやつだっけ。覚えていない、けど昔からそうだったのかもしれないなあと流して、車を合宿所に向けて発進させた。