「女がタバコを吸い始めるきっかけなんて十中八九過去の男のせいだろ」なんて決めつけながら言ったのは誰だっけ。その男も紫煙をくぐらせながら、呆れるような目線を私にくれていた。可愛くないからやめろって散々言われたっけ。それでも女らしくない重いタバコを吸い続けていたのは、喫煙所で彼と話すためだったな。思い出した。元気かな、諏訪。
私は大学を卒業し、就職先に四塚市にあるボーダーの合宿所を選んだ。卒業と同時に所属していた諏訪隊を抜け、合宿所に住み込みで働きつつ、もし四塚に近界民が出たときに対応する職員みたいな立ち位置だ。合宿所と言っても頻繁に人が訪れることはなく、普段は館内の掃除をしたり訓練を行ったりする程度。これでお給料貰っていいのかと思えるほどにホワイト。本部就職にしなくて本当に良かった。
太刀川や東さんたちはたまに合宿所を使用してくれていたけど、そう言えば諏訪は来たことなかったよなぁ。合宿所は誰でも使えるのに。今度、あまりにも合宿所の勤務が暇なので隊関係なく合宿しませんかって忍田さんに連絡してみようかな。面白いかな、それ。
喫煙所でぷかあと煙を吐き出して、実行しようと思い立つ。もし実現したら、個人的に諏訪に連絡しよう。昔よりは軽くて女らしくなったタバコを見せながら、「一本どう?」と誘おうと思うのだ。