まずはバス酔いでグロッキーな冬島さんを寝室に寝かせる。当真に手伝ってもらわなかったら運べなかったな。ていうか冬島さん明日帰る予定になってるんだけど大丈夫?またバス酔いして本部で使い物にならなそう。
待たせていた合宿メンバーの前に戻り、合宿所内部は広いので主要な施設だけを説明した。訓練室、キッチン、大浴場。あとは外のマラソンコースや歩いて15分のコンビニやファミレスなどをゆるっと説明して、簡易地図を渡して終わり。何たる手抜き。いいんだ、東さんが前に出来る女はうまく手を抜くって言ってたし。
部屋に案内すると隊員たちは荷物を置いて、訓練室に向かったり施設内を探検したりするようだった。部屋は5〜6人の同室で、数少ない個室は冬島さんみたいな大人か女性が使用する。部屋割りを各自に任せたら米屋・出水・佐鳥・緑川・菊地原という地獄のような部屋ができていた。菊地原夜眠れなさそう。可哀想。相談してきたら離れの個室を貸してあげよう…。
私は昼食の準備をしなきゃなあと思いラウンジに向かう。近くのお弁当屋さんに人数分発注しているので、そろそろ届くだろうか。すぐ配膳できるようにしとこう。ちなみに人数分作るという考えはなかった。だって職員一人だよ。何十人分、しかも食い盛りの男たちの食事を作るなんて死んでしまう。お弁当が嫌な人はコンビニでもファミレスでも行ってもらおう。もしくは食材を買ってきて自炊。そこら辺は自由で。
そんなことをぼんやり考えながら訓練室の前を通る。後ろから名前を呼ばれて振り返ると日佐人がいた。
「あっ!日佐人!久しぶり〜」
「名前さん久しぶりです!元気でしたか?」
「元気だよ〜日佐人も元気そうで何よりだ」
日佐人も身長伸びたね。アタッカーとしても成長したかな。諏訪隊にいたときは毎日顔を合わせていたのに、こうやって離れてみると懐かしくて堪らなくなってしまう。
「名前さんも訓練ですか?」
「いや、私は昼食の準備。そろそろお弁当届くから、いつでも食べれるように配膳しとこうと思って」
「一人でやるんですか?俺、手伝いますよ」
ひ、日佐人〜〜〜!!!大好きだ日佐人!訓練しようと思ってたんじゃないのかな?いいの?手伝ってくれるなら職員冷蔵庫にしまってあるプリンを日佐人にだけ付けちゃうけど!
聞くと人数が多いから、訓練室があくまで待ってるつもりだったらしい。後輩に甘えて手伝ってもらうことにしよう。先輩としては教えることはもう何もないんだけどね。ほぼ引退してるようなもんだし。
「今日の夜バーベキューなんですよね。諏訪さんと堤さんは間に合うように来るって言ってました」
「そうなんだ。おサノは?」
「おサノ先輩はオフです。来たがってましたけど、久々のまとまった休みなので家族旅行するらしいです」
「そっか。会いたかったなぁ」
「今度また本部に来てくださいよ」
日佐人は優しいなぁ。ずっと優しかったなこの子。昔、B級ランク戦で二宮のアステロイドの壁避けにしてごめんね。
「あ、私一服してから向かう。この道まっすぐ行ったらラウンジだから、座って待っててよ」
「まだタバコやめてないんですね」
「うん、やめれないなぁ」
でもほら、吸ってる銘柄は前より軽くなったのとパッケージを見せる。日佐人は困った顔をしながら笑ってくれた。
「そう言えば、諏訪さん禁煙してるんですよ」
「え!?諏訪が!?嘘でしょ」
「いや本当に。3ヶ月位前からですけど」
「まじか衝撃なんだけど」
諏訪が?この世が終わるくらいの衝撃だけど?奴は私と同じく病気になってもタバコはやめられない人間だと思っていた。3ヶ月も禁煙だなんて、私は2日目で脳がイカれて死んでしまう自信がある。こんな自信いらないな。
喫煙所に入り、タバコを取り出して火をつけると軽いはずの煙草が何故かいつもより重く感じた。胸いっぱいに吸い込み吐き出す。
そっか、みんな変わっていくんだな。