花火は一言で表すなら地獄だった。緑川が「スコーピオン!」と言いながら手持ち花火を振り回したことが発端となり、参加者の男子特有のテンションが振り切ってしまったことが原因だ。緑川に応ずるかのように米屋の「幻踊孤月!」、出水の「アステロイド!」という声が響く。馬鹿だなあいつら、と思ってないで止めればよかった。次に「ライトニング!」と声が聞こえてきて、ん?と顔を上げると誰かが打ち上げ花火を手持ちしていた。おい馬鹿やめろ、と声を荒らげるも、時すでに遅し。打ち上げ花火から放たれた火花の弾丸が近くにまとめて置いていた花火に引火して大爆発。その後ねずみ花火も引火して100個もの暴れ狂う花火が隊員たちを襲う。ちょ、ちょっと男子〜!?なにやってるの〜!?マジで死傷者が出てもおかしくない事故だった。地獄絵図だ。シュパパパッと勢い良く花火が襲ってきてみろ。運動神経のない私なんかは離れていなかったら巻き込まれて死んでいた。あぶねー。打ち上げ花火の手持ちは危険なので絶対に真似しないでくれよ。
花火は一瞬で消滅し、夜はお開きになった。たった10分かそこらの出来事だった。
ちなみにへび花火100個は本当に地味だった。月明かりのなか、もくもくと煙が立ち込めて、花火がにょろにょろ伸びていくのが逆に面白くて長い間ムービーを回してしまった。5分近くある動画を諏訪に送ったら心底嫌そうな顔をされた。
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「おはようございまーす。ジャージ、もしくは動きやすい服装に着替えて6時に玄関前に全員集合してください。繰り返します。ジャージ、もしくは動きやすい服装に着替えて6時に玄関前に全員集合してください」
朝5時。館内に放送を流す。合宿監督の朝は早い。放送を終え、くわあ、とひとつあくびをする。混む前に洗面所に行って身支度を整えようと放送室を後にした。
6時を少し過ぎて全隊員が玄関前に集まると、今日一日のスケジュールを説明する。今から朝の走り込みだ。眠そうな隊員たちよ、起きろ。立ちながら寝るな、当真勇。
「戦闘員は体操をしてから、アップがてらジョギングでマラソンコース一周。そのあともう一周、次はタイムを取ります。あ、タイムは本部に報告するから手は抜かないでね。なお下位5人は昨日のバーベキュー、花火の片付けと今日一日私の雑用をしてもらいます」
「なんでこんな朝っぱらから走んなきゃなの…しかも生身ででしょ…」
「文句があるなら忍田本部長に言ってくださ〜い」
うげえ、と文句を垂れる犬飼を一蹴。合宿をやるからには、と忍田さんが直々にメールでメニューを送ってきたのだ。私だってこんな早くに起きたくないわ。
オペレーター隊員たちには館内の掃除と終わり次第朝食の準備をしてもらう旨を伝える。館内に戻っていったオペレーター隊員たちを見てから戦闘員たちをマラソンコースに誘導する。
「名前さ〜ん」
「どうしたの?当真」
「いやー俺腹痛くて」
「はいはい、ちゃんと走ろうね」
「冬島さんが夜に帰ったの絶対メニュー知ってただろ」
「たぶんね」
「ねえ」
「どうしたの菊地原」
「部屋五月蝿くて眠れなかったから個室にして」
「ああ…あいつら大騒ぎだったもんね」
「あと部屋が臭い」
「臭いの…」
臭いってあいつら何したの。菊地原は防げた事故に巻き込まれてしまった。本当にごめん。忍田さん、何となく予想はしてたけど合宿2日目も朝から前途多難なようです。