今日のドライブでは名字が「バッセンに行く」と目的地を決めていた。前回目的地を決めずに行くのがドライブって言ってたのに。ていうか何でバッティングセンター?野球好きだっけお前。

「こないだ太刀川隊と合同の任務だったんですけど、太刀川がバッセン行きてぇな〜って孤月で素振りしてて」
「任務に集中しろ」
「まぁまぁ聞いてくださいよ。その後、太刀川の孤月がすっぽ抜けて私の肩に刺さっちゃって、トリオン漏れでベイルアウトしかけたの東さんに無茶苦茶怒られたんですけど私悪くないですよね?」
「何してんのお前ら」

て言うことでバッティングセンターを経験してみたい、ということらしい。東さん怒らせんなよ、あと話が飛躍しすぎて雑。名字は意気揚々と運転席に乗り込むと、俺に助手席に乗るよう促した。前と同じ待ち合わせ場所のコンビニを出発しナビ通りに進む。
前よりは運転に慣れたようで、アクセルを踏む足がスムーズだ。

「バッセン行ったことねーの?」
「行ったことどころか、バット握ったこともないです。あ、素振りはスコーピオンでならしたことあるけど」
「それで良く行こうと思ったな」
「諏訪さんとならどこ行っても楽しいから!」

そう満面の笑みで言われてしまえば、俺はもう名字に口出しする術を持たないのだ。





「オラッ!」
「威勢はいいけど下手くそ、代われ」
「ちぇー」
「オラッ」
「イーヒヒヒ!諏訪さん下手くそ!ヒヒーお腹痛い!」
「俺お前のときそんなに笑わなかっただろ!?」

俺は名字よりは上手いぞ、ボテボテだけど一応バットには当たっている。ムカついたのでムービー撮って東さんに送ってやろ。最初名字、次俺の順で打席に入ったので次は名字の番だ。いっちょ前にホームラン予告をしている。

「かっ飛ばしてやりますかぁ…!」

俺は馬鹿だなこいつと思いながら動画の撮影ボタンを押した。


散々遊んで、疲れたと名字が言うのでバッティングセンターの中の自販機でジュースを買う。本部でもよく飲んでいるオレンジジュースがあったらしく、嬉しそうに自販機のボタンを押していた。

「これなかなか見つからないんですよ〜」
「美味いの?それ」
「美味しくはないです」
「なんだそりゃ」
「なんていうか、こう、オレンジジュースと名前のついた着色砂糖水って感じ」

でもそれが子供の頃を思い出させる味で好きなんですよねぇと缶に口をつけながら言う。諏訪さんも一口飲んでみます?と缶を差し出され、俺は瞬間的に断ってしまった。

「オレンジジュース嫌いですか?」
「嫌いっつーか…お前そういうとこあるよな」
「何が?」

間接キスとか気にしねぇのかよ。恥ずかしがるような年齢ではお互いないけれど、それはもっとこう、段階踏んでからだろ。
上手い返しが見つからなくて悩んでいると、ポケットに入れていたスマホが振動した。取り出して通知を開くと東さんからだった。さっき送った動画に対する返事として「デート楽しめよ」とだけ来ていた。

「東さんだわ」
「東さん?なんで?」
「デート楽しめよって」
「デート…え!?…こ、これデートなの!?」
「あー…まあ俺はそう思ってたけど」

ちなみに前回もな、と言って名字を見ると言葉をなくした。耳まで真っ赤だったからだ。初めて見る表情だ。名字は両手で顔を挟み「ちょっと待って」と繰り返している。

「意識、しちゃうんで、そういうの、言われるとさぁ」
「…おう」
「意識、してしまうと、もうそういう風にしか見えなくなるし、」
「…別に意識してもいいけど、俺は」
「私の、心の準備がまだ出来てないので、待って」

顔が熱すぎて多分ちゃんと運転できないから帰りは諏訪さんが運転して、と鍵を投げるように渡され、両手で顔を抑えた名字が足早に車に向かうのでその後を追う。そう可愛いこと言われる俺の身にもなれ。
あぁ、帰り道、どう話せばあのバカに伝わんのかな、なんて。
バッティングセンター行きません?