名前から突然『諏訪さんヤバイ大変だ助けて』と連絡が入り、喫煙所で吸っていたタバコの火を消して慌てて大学の裏門へと向かう。途中風間に会って「馬鹿みたいに慌てているな」と言われたけど無視した。
裏門につくと、そこには見慣れない車と、しゃがんで頭を抱えている名前が居た。え?何だこの車。いつものピンクの軽自動車はどうした。名前は俺に気付くと少しだけ顔をあげた。涙目になっている。
「順を追って説明するのと、すっ飛ばして聞くのどっちがいい?」
「じゃあまずすっ飛ばして」
「二宮の車盗んじゃった」
「待て待て待て馬鹿か?」
「すっ飛ばして聞くって言ったのそっちじゃん!」
理不尽!と怒りだす名前に呆れて空いた口が塞がらない。とりあえず場所も場所なので、移動をしたい。いつもなら慣れた名前の車へ乗り込むところだが、見知らぬ車では憚られる。そうも言ってられないか。名前が持っていた鍵をひったくり、縮こまっている体を助手席に押し込むと、俺は運転席へ乗り込んだ。
「うう…諏訪さん…どうしよう…殺される」
「落ち着け。まずどうしてこうなったか説明しろ」
「うん…」
ぐすぐす、めそめそと涙を服の袖で拭っている名前を横目に、車を発進させる。行き先は、まあ決めてねえけど、名前んちの方向に向かえば気持ちが落ち着くだろうか。大学から離れて少し経つと、名前はゆっくり口を開いた。
「…昨日東さんちで二宮と太刀川と飲んでたんですけど、みんな潰れて泊まることになって」
「んで?」
「朝起きたら講義始まってたんで、バカスカ寝てる太刀川と二日酔いの二宮を置いて慌てて車運転してきたら二宮の車でした」
信じられないと思うが、こいつは大真面目なのだ。本当に真面目で、考えられないくらい馬鹿なのだ。俺がため息をつくと、名前は慌てて運転してる俺の服の裾を掴んだ。
「め、めちゃくちゃ慌てたんだから!だって、彼氏がいるのに、自分の隊長の家だとはいえ、寝落ちして複数人の男と泊まるとか」
「そっちかよ」
「えっ軽い…なんで…愛想つかしちゃった…?」
また目に涙をためてめそめそしだす名前の頭をハンドルを握っていない手でわしわしと撫でてやる。んな顔すんな。別にそんな心配してねえよ。
目的地を名前の家から東さんの家に変更する。東さんちなら俺も何回も行ったことあるし、おそらく二宮が名前の車を運転するとは思えないからまだ居るか、車を置いて帰っただろう。太刀川はどうでもいいや。
「早いとこ二宮に車返して、飯でも食いに行くか」
「殺されると思うんでいっそ心中しません?」
「バーカ、さっさと返しに行くぞ」
「チェッ」
殺されるかもしれないんですけど