アニポケ13話ネタ

 システムの再起動をかけるからしばらくボウルタウン付近に滞在する、来れそうだったら是非来て欲しい。そう連絡を受けて向かった先では、ライジングボルテッカーズのみんなが穏やかにピクニックの準備を進めていた。真っ先にキャップが、そしてキャップの声を受けたフリードがこちらに気付き手を上げるのに振り返し、少し離れたところへ降り立つ。

「よおナマエ、早かったな」
「ナッペ山の方に居たからね。いつの間にかこっちに到着してるからびっくりしちゃった」

 なにか手伝うことは?と問えば客なんだからゆっくりしていろと返され、手持ち無沙汰さについ呻ってしまう。せめてピクニックだと聞いていればなにか手土産を持ってくることもできたのに。そうぼやけば「あれ、言ってなかったか?」と予想通りの返答があるものだから、こちらも「聞いてません」といつも通りに返してやる。
 わたしのしかめた表情も、フリードの申し訳なさそうな表情も、長く続く訳がなく。目が合えばお互いに噴き出してしまう。くすくすと笑い合っていればキャップが呆れたように声を上げた。

「ナマエ、来てたんだ?」
「フリードに誘われてね。ピクニックだって聞いてれば何か持ってきたのに」
「アンタまた何も説明してないの……」

 ナマエだって困るでしょうとオリオが呆れるのにそうだそうだーと便乗すれば、悪かったと軽い謝罪が返ってきた。バンバドロの耳に念仏、フリードの耳に苦情である。

「そういえばナマエはまだロイと会ってないんじゃない」
「ロイ?リコとは会ってるけど……」
「リコの後に来たんだよ。ほら、向こうでリコと話してる」

 モリーが示す先では、二人の子供がハッコウシティを眺めていた。少し見ない間に随分と賑やかになったなあと見つめていれば、マードックが買い出しの間に話してくればと薦めてくれたのでお言葉に甘えることにする。


***


「で、随分懐かれたもんだねぇ」
「……」

 ナマエさんナマエさん!!とひっきりなしに話しかけるロイに、大人たちだけでなくリコまでもが苦笑している。
 ポケモントレーナーが身近に居なかったというロイからしてみれば、様々な地方に行きたくさんのポケモンに触れるナマエの話はどれも真新しい驚きに満ちているのだろう。英雄が好きだというから遠く離れた地方の伝説を話したら予想より刺さってしまったこと。そのうえロイ自身の知的好奇心や積極性が合わさって、準備の終わった席に着いてもなお疑問が止まらない姿は見方によっては微笑ましいと言えなくもなかったが、ナマエを挟むようにしてロイの反対側に座るフリードの機嫌がどんどん下がっていくのをその背に感じている身からするとそろそろ助けが欲しいところである。

「そのふたごのポケモンっていうのが英雄のパートナーなの!?」
「うーんと、そうだったらいいよね。ロイ、そろそろ……」
「じゃあじゃあ、その王様と英雄っていうのは…」

 だめだ、止まらない。
 ああああ……と狼狽えていれば、流石にどうしようもないと思ったのか苦笑していたマードックたちがロイを止めに入ってくれた。

「ロイ、そろそろ落ち着け」
「そんなに質問したってナマエが困るでしょ」
「でも!ナマエさんのはなしすっげー面白くて!」
「いいから。まずはサンドイッチを完成させなよ。食べながらでも話は聞けるだろう?」
「うーん……そっか、そうだね」

 ようやくロイの意識が離れたことで怒涛の質問攻めから解放されて息をつく。あっという間に食材に夢中になった姿に元気だなあと思った瞬間、ぐいと腰を引かれバランスを崩した。やばい、と思う間もなくぽすりと予想よりも軽い衝撃と、するりと腰に巻きつく温かさ。

「ちょっ……と、フリード、どこ触って……!」
「いいから。ほら、ナマエも食べるだろ」
「はいはい、そういうのは部屋でやんなよ」

 教育に悪いだろ、と呆れたモリーの声を聞きながらなんとか腕から逃れれば、フリードは拗ねた声を上げる。それでも、より一層口を尖らせている口元へいちごスライスを差し出せば文句を言いながら口を開く素直さについつい絆されてしまうのだから惚れた弱みである。
 もぐもぐといくつかのフルーツをわたしの手から咀嚼したフリードは、いつのまにかけろりと機嫌を直していた。

「俺が作ってやろうか」
「遠慮しとく、フリードが作ると肉ばっかりになりそう。……キャプテンにでも作ってあげたら?」
「おっ!いいなそれ!」

 途端にウキウキとサンドイッチを作り出すフリード。モリーの「子供か」という冷静な指摘と「ナマエも大変だねぇ」と楽しそうなオリオに、乾いた笑いを返すことしかできなかった。