07
「いった」
「大丈夫!?どしたん!?」
横で書類整理をしていた同期が小さく悲鳴をあげた。
いつもしらーっとしてるクールの同期が眉をひそめている。
「大丈夫、書類で指さき切っただけ」
彼女の人差し指からぷくりと小さな赤い粒があふれている。
それを見て私はすぐに閃く。
「私がなめてあげようか?」
「やめて汚い。血液感染するよ」
「んま!我が愛しの同期は純潔だと信じていますのに!」
「それ何キャラよ。ちょっとほかの人に絆創膏もらってくるわ」
椅子から立ちがった同期を見送り、データ処理を続ける、
てか、まず私に絆創膏もってるか聞かないんだ。ふ、ふん!いいもんね!まあ持ち合わせてないけどね!!
*
うわ!きたな!この男、刀についた血なめてるよ!
仕事中の同期とのやりとりを思いだして、思わず眉をひそめてしまった。
いやいや、それ自分の舌も切れるんじゃないの??
夢見そうそうこれは衝撃だわ。包帯を顔と腕に巻いた男を見つめる。
ぐるりと周りを見渡すと、2人の男が倒れていて、2人の男が包帯刀血舐め男と対峙している。
包帯刀血舐め男は、襲いかかる炎と氷と緑の電気?に刀と肉体で対応している。
ビジュアルはどうみても包帯刀舐め男が悪だけど、見かけで判断しちゃいけないからね!
どっちを応援するか、傍観していると炎と氷の子が包帯刀血舐め男を「ヒーロー殺し」と言った。
ヒーロー殺しが渾名ってすごいな。
よくみれば、髪の毛が半々の子も緑の子もどっかで見た気がする。
とろろと月島しずく・・・?つながりのない情報が記憶をめぐるが思い出せない。
ふむふむ!夢だから仕方あるまい。しかしなるほど、今回はやはり包帯刀血舐め男が敵のようである。
了解のすけ!したらば、ただいまをもってこの2人を助さんと格さんに任命する!
おゆきなさい助さん格さん!!
隠居おじいのように送り出したはいいが、助さんと格さんは包帯刀血舐め男に防戦一方だ。
こんなに押されている助さん格さんみたくないよぉ〜ファイト〜と応援していると緑の子が吹きとばされた。
「ミドリヤ!!」
炎と氷の子が叫ぶ。
ミドリヤは「トドロキくん右だ!」と叫びかえす。
その叫び声を聞いて、あ、ミドリヤとトドロキだ。と認識した。
そうだそうだ。月島しずくでもとろろでもなく、そうだった。確かに聞いたことのある名前だ。
夢の中の出来事は全てが曖昧で、鮮明に覚えていることもあればうっすらとも覚えていないこともある。
緑の子がミドリヤ、白と赤の髪がトドロキ。ふんふんと納得し頷く。
では取り直して、ミドリヤ!トドロキ!やっておしまいなさい!!ミドリヤ動けてないけど!
正しい名前で手を前にだすと、トドロキが大きな炎と氷で応戦する。
包帯刀血舐め男はそれを素早い動きで躱していく。
くぅ〜〜〜なかなかいい動きである。
敵ながら感心していると、いつのまにかトドロキが刀に切られそうになっていた。
え!あぶなっ!夢の中といえど、刀で真っ二つに切られるようなグロテスクシーンは見たくない。
思わず目をつぶろうとすると、「レシプロバースト!!!」と寝ていた男の1人がすごい速さでその刀を蹴り上げた。
そのあまりにも衝撃的な登場シーンに私は感動した。
あ、あなたはピンチの時にやってくる風車の弥七!!!!
ひゃー今のはひやっとした!トドロキが切られるかと思った!綺麗な顔が傷つかないでよかった!
あーどきどきした、と胸に手をあてる。
しかし弥七が来た今、われらは最強。そうしているうちに吹き飛ばされてたミドリヤも立ったみたいだ。
トドロキが弥七の足に手のひらをかざし、足に氷をだすと弥七が覚悟を決めた顔をした。
ミドリヤの全身もばちばちと光っている
!!!!
きたきたきたきたきたきたきたー!!!!!
この瞬間だよ!!!これを待ってた!
絶対この瞬間!いま!!ここ!というタイミングで私は二人の後ろに立つ。
いっけえええええ!エターナルフォースブリザードォォォ!!!
*
目の前にのステインに一撃を与える!
緑谷と飯田はいまもてる己の最大出力を拳と脚に込めた。
その瞬間、ふわりと後ろから風が吹き白い羽が視野に入ると体の奥底から力がぐんと増したのが分かった。
2人はさらにぐっと力をいれる。
「ワンフォーオールフルカウルッ」「レシプロエクステンドッ」
ステインの顔と右脇腹に2人の渾身の拳と膝がクリティカルヒットした。
体制をくずしたステインに畳みかけるように轟の炎が炸裂し、長い激闘の末にステインは気絶した。
*
保須総合病院にて、緑谷、轟、飯田の3人は治療をうけ入院していた。
「冷静に考えると、すごいことしちゃったね」
「そうだな」
「あんな最後見せられたら、生きてるのが奇跡だって思っちゃうね」
3人は昨夜のステインとの闘いを思い返していた。
「それと、最後。これが自分の最大出力だって思ってたんだけどそれ以上に力がぐっと押し出される感覚があたんだ」
「あぁ、それは俺も感じた。轟くんに氷を出してもらって」
「緑谷と飯田がステインに一撃を食らわせた時か?」
「うん」「あぁ」
緑谷は自分の右手をじっと見た。
そして、あの騒動では鳥も飛ばないような環境で真っ白い羽が見えたんだ。
「多分、ニケが来てたんじゃないかと思うんだ」
「「ニケ?」」
「なんだ、そのニケってやつは」
飯田と轟は、聞きなれない単語に首をかしげる。
「最近プロヒーローの間で噂になってて、勝利の女神って言われてる存在なんだ!プロヒーローがピンチの時に現れて勝利を導いてくれるから、ギリシャ神話の女神の名前からとって
「でも俺たちまだプロじゃねぇぞ」
轟が緑谷に正論で返事をした。
「うん、ニケはこれまでプロヒーローのもとにしか現れてなかったからね。これは仮説でしかないんだけど、プロヒーローに限らず、危険な状態の戦闘者のところにも来てくれるんじゃないかなって思って。
僕も、ニケの姿、あっニケって白いモヤがかった女性の見た目をしてるんだけど、それを見たわけじゃないから本当に来てたのかは分からないんだ。でも、確かに自分が持ってる力以上に力を出せたのは確かだし・・・・都合がいい考えなんだけど、僕たちがピンチの時には救ってくれたって思っていいのかなーって」
かなーって、と自信なさげに緑谷は語尾を小さくさせた。
「いや、俺は2人の実力だと思う。俺はステインに一撃を食らわせたわけじゃねーから、力が湧き出たっていう感覚も分からねぇ。でも、あの時一緒に戦ってステインが倒れたのを見れば、そのニケってやつの力じゃなくて、緑谷と飯田の実力だったって俺は思うぞ」
「「轟くん」」
濁りのない綺麗なオッドアイに見つめられ、己の実力だと口説かれた2人はじーーんっと目を潤ませた。
そのあと、保須警察の署長が来てその感動はすぐに吹っ飛ぶことになるのだがそれはあと数分先のお話。
「風車なんて机に置いてどうしたの」
「ヒーローってピンチの時にくるとよりかっこよさ増すよね」
「それと風車の関係性が全くわからないんだけど」