はるがすみ
[二]倉庫

キューティクル(虎→洋)


「若」

九条組の事務所に長身の影が二つ。一人は体格のいい男、もう一人は細身ながらも一人目にひけをとらない力を感じさせる男である。

「終わったか。首尾はどうだ」
「はい、使えそうな情報が集まりました。あとはこれを元に、実行に移すだけです」

報告を聞いていた細身の男が僅かな喜びを示すように口角を上げた。

「そうか。いよいよだな…。よし、皆に伝えろ。作戦開始だ」
「はい」


事前調査からもう一週間というべきか、やっと一週間というべきか。九条組の若頭になってから色々な修羅場は乗り越えてきたが、今以上の緊張なんかなかったんじゃないか。ま、行くしかないけどな。

「探偵さん」
「ん?お、若。最近よく会うなぁ」

俺が声をかけると探偵さんはすぐに気付いてくれた。相変わらず髪に視線がいってる気はするが…

「ここいらはウチの縄張りなんでね。ところで、今日はアンタにお願いがあって来たんだ」
「なんだ?…まさか、またヤギが何かしてきたのか」
「いや、そうじゃないんだ。ただちょっとな、キューティクルに詳しい探偵さんに俺の髪を切り揃えてもらおうかと思って」

これは調査からの一手だ。しかしこんなんで上手くいくのか?

「な・・・!!本当か!?弄らせてくれんの!?」

・・・上手くいくもんだな。

「もうすぐ大事な集会があってね。折角だから探偵さんにキメてもらいたいんだ」
「そういうことなら、まっかせとけ!なぁなぁ、シャンプーとかもしていいのか?」
「勿論。一通りのケアはお願いするよ」
「よっしゃ!最高の髪をプレゼントするぜ」

そう言いながら笑う探偵さんは、やっぱり可愛い。耳のような髪と、ないはずの尻尾が揺れているのが見えるよ。

「ありがとう。今日は用があるから、また近いうちに連絡する。その時は俺の家に来てもらえるかい?」
「おう。…って、九条組の若頭がそんな簡単に住処バラしていいのか?」

おっと。少し軽かったか?「探偵さんは特別だよ。隠すこともない」

「んー、まぁ信頼してくれてる…のかな。わかった、じゃあ最高の道具も持ってくよ!連絡待ってるからなー」

最後に一度俺の髪に触れると、探偵さんは嬉しそうに帰っていった。
よし、一先ずは作戦成功だ。顔がニヤけそうだ。


「若」

ニヤけた顔を引き締めていると、鉄が声をかけてきた。

「作戦の第一段階は成功ですね」
「あぁ、当日が楽しみだ。・・・鉄、皆に第一段階完了を伝えといてくれ」
「はい」
「(ふ・・・探偵さんがどんな顔をしてくれるのか、考えるだけでゾクゾクするな)」



初:2010.3.6














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