はるがすみ
[二]倉庫

爆闘相棒(リクショウ)


「な、何言ってんだ、ショウ?」

背に引く武装力俥の重みが増したように感じながらリックは目の前の相手、ショウに問いかける。リックとは型違いの武装力俥を引くショウの表情は真剣そのもので冗談を言っている風には見えない。
自分が言われたことが信じられないという顔をしているリックを一瞥するとショウは再びその口を開いた。

「そのモジャ毛は耳にまで浸食してきたか?ならかっぽじってようく聞け。俺とあんたの仲良しごっこも仕舞だよ。今からは、元通りの敵同士だ」

混乱するリックにショウは冷ややかに告げた。リックは握っていた梶棒から思わず手を放すとショウに詰め寄る。

「どうしてだよ!?あの地殻変動は第三国の仕業だったんだ。今更俺たちの国が争う必要はない!」
「今更だって・・・・?勘違いするなよ。あの地殻変動前から争いはあった。長らく冷戦しちゃいたがな。地殻変動が他国の仕業だったとしても俺たちが戦わない理由にはならない」

ショウは掴みかかってきたリックの手を避けると責めるような目を向ける。リックはそんなショウの視線に瞬間怯むも、納得ができないというように声を荒げる。

「なら俺たちがそれを止めればいい!ラシーナ様もお前を信頼している。お前みたいなやつがいる国なら分かり合えるって、そう話していた!」
「無理だよ。例えラシーナちゃんが俺を良い奴だと思ってくれているとしても、一兵卒を引き合いにして国を語れるか?そんなことをして国民がラシーナちゃんに不信を抱き始めたらどうする。国を建てなおさなきゃいけないって時に、その国の中でも争いが起こるぜ。あんたは大事な大事なラシーナちゃんにそんな辛い思いをさせるつもりか?」
「ラシーナ様は民から愛されている。みんなも姫様の言葉になら耳を傾けるはずだ」

リックはさも当然というように言う。ショウが軽く首を振りながら否定の言葉を発しようとすると、リックは手を挙げて制する。

「それとな。確かに姫様は俺にとってお守りすべき大事なお方だ。だが、一人の男として俺が大切に思っているのは、ショウ、お前だ」
「いまはそういう話をしてるんじゃねえ」

リックから受けた言葉にショウは顔をしかめると、自分より高い所にある顔を睨みつけた。二人きりの長い旅路の中で相棒としての信頼から恋人としての愛情まで、積み重ねてきた時間と想いがあった。それを忘れたとは言わせないと、リックはショウの顔を真正面から捉える。

「そういう話だ。愛する人を守るために争いを止める。俺はいま、そういう話をしてるんだ!」
「・・・・これ以上話しても埒が明かねえな」

リックは頑なな態度を崩さない。ショウはため息をつくと、突如として自身のアーマード・リクショウをヒト型に変形させリックに襲い掛かった。リックも咄嗟に愛機を変形させるとショウの一撃を受け止める。

「ぬぁっ・・・・おい、ショウ、やめろ!俺はお前とは戦いたくない!」
「いい加減に現実を見ろ!いいか、俺はあんたの敵だ。この先いつ俺がラシーナちゃんを手にかけるかわからないんだぞ。祖国の脅威を払うのが兵士であるあんた務めだ。得意の理想語りはあんたも、あんたの国も滅ぼすぞ!」
「お前はそんなことしない!俺が愛するショウってやつは、誰より人の幸せを、平和を願うやつだ。そんなやつだから俺はお前と一緒にいたいと思うんだ」
「それもお前が作り上げた理想の俺だよ。俺は、国から命じられればいつでもラシーナちゃんを、あんたを殺す」
「嘘だ!」
「嘘なものか。俺は自分の国が好きなんだ。あんた達がそれを脅かす者であるなら俺は俺の務めを果たす。わかるだろ?そんな俺と、お前がこの先一緒にいられるはずがない。そんな現実、ありえねえよ」

ショウは戦う手を止めずに叫ぶ。リックはショウが繰り出してくる一手一手を受け止め、往なしながら必死にショウに語りかける。

「ありえないことなんかあるか!なぁ、ショウ。二人でそれを現実にしよう。ラシーナ様を助け出すまでだって俺たち二人で色んな障害乗り越えてきただろう。あの時みたいに一緒に」
「もうよせ。あんたにとっての現実は、その救い出したラシーナちゃんと一緒に自分の国を立ち上がらせることだ。ラシーナちゃんもあんたを必要としてる。あんたは・・・・ラシーナちゃんの隣にいてやれよ」
「ショウ、お前、もしかして・・・・」

これまで絶え間なく続いていたショウの攻撃の手がほんの少し緩む。その隙を見逃さなかったリックはショウの機体の腕部を掴むとそのまま相手を地面に引き倒した。

「くっ・・・・!」

ショウはリックのアーマード・リクショウから逃れようと自らの機体を操作するが、パワー面での機体性能に勝るリックの機体は少しも動かない。ショウが無理やりに動かした右腕部は相手の力に負け、みしみしと音を立てて砕けた。
それを見たリックは機体を操作し、ショウが納まる操縦席の扉に手をかけるとそれを力任せに引きはがす。その扉を脇に放り投げるのも早々に自らの操縦席の扉を開くと、相手の機体の中を覗き込んだ。

「・・・・やはり、だな。ショウ・・・・泣くくらいなら、もう、やめよう」

リックが覗いた操縦席には腕で顔を覆い静かに涙を流すショウがいた。リックはショウの機体へ飛び降りると腕の隙間から見えるその涙にそっと手を伸ばす。

「・・・・触るな」
「それはできない」
「触るな!」

ショウがリックの手を払う。その拍子に見えたショウの瞳は真っ赤に濡れている。リックはその瞳を見つめると今度は言葉を添えながらショウに触れていく。

「ショウ、好きだ」
「っ・・・・言う、な・・・・」
「いいや。言う。俺はお前が好きだ」

リックが伸ばした手はショウに届き、流れる涙を掬い取ると、ショウの頬を包み込む。

「俺はバカだからお前みたいに国がどうとか難しいことはわからない。俺がわかるのは、自分の国も、お前も、失いたくないということだ。当然お前の国も失わせない。そのためにできることはなんだってしよう」
「ラシーナちゃんの想いはどうなる」
「もし、もしも、だ。ラシーナ様が本気で俺なんかを好きだと仰ってくれるのであれば、俺は誠心誠意謝罪する。ラシーナ様はまだお若い。この先彼女を幸せにすべき俺以上の方が現れるはずだ」

いかにも大事なものを思うような表情で話すリックを見てショウは「そんな顔して語んなよ」とぼやく。

「何か言ったか?」
「いいや・・・・。そういうのが理想語りだっつーんだよ」
「それが俺だからな。理想でもなんでも語らなければ叶えられない。そう思えなければお前に想いを伝えることだってできなかっただろう」
「くっそ、そうだったよ。あんたはそういうやつだよ、リック」
「ようやく呼んでくれたな」
「あ?」

泣いていた顔をほんの少し緩めたショウに、リックも笑顔を見せる。頬に添えていた手をショウの頭に移動させると思い切り抱きしめた。

「お、おい、リック?」
「それだ」
「どれだよ」
「名前、やっと呼んでくれたな。自分と戦えと言い出してからずっと俺の名前を呼んでくれなかっただろう」
「そうだったか・・・・?」
「俺はお前が呼んでくれる俺の名が好きだ。ラシーナ様から命じられる際に名を呼ばれると身が引き締まる思いだが、お前に呼ばれると全身が暖かくなるようだ」
「・・・・あのなぁ、あんたって野郎は、ほんっと、ほんっとにどうしようもねえな」

リックの抱擁から身体を放したショウはリックの頭を一発叩く。

「あいてっ」
「呼ぶな、とは言わねえ。けど、俺の前であんまりラシーナちゃんの名前を出すなよ。・・・・俺だって嫉妬くらいする」

ぷいっと赤い顔をそらしたショウにリックは満面の笑みだ。その笑みを見たショウが再びリックを叩こうとするのを手を握り締めることで止めるリック。

「もうお前を放さない。ずっと一緒にいると誓おう、ショウ」
「頼りにしてるぜ、相棒・・・・いや、リック」

この先も、抱きしめる腕と力俥を引く手に愛を籠めて、二人は前へと進んで行く。





初:ぴくしぶ掲載2015.1.4
伝説の『爆闘相棒リック&ショウ』からリクショウです()
ロリガの放映前に期待を込めて支部アップしたもの。
力俥から2年くらい?経っての実現でしたね。














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