はるがすみ
[二]倉庫
だれかがこころにいてくれること(PP/縢狡パロ)
おれは野獣だ。
人とはちがう、獣。
まわりのだれともちがうから、気づいたときにはひとりぼっちだった。
なんで、どうして、って思うより前に野獣だったんだから、しかたがないって思ってる。
そんなおれにもさ、名前はあるんだ。
かがり しゅうせい。
ふしぎでしょ?野獣に名前があるなんて。
名前があるってことは、それをおれにつけてくれただれかがいるってことだよね?
人にこわがられてひとりぼっちで生きてきたけど、この名前があるだけでちょっとさみしくなくなる。
それにね、いまはもうひとつ。おれをひとりじゃなくならせてくれるものがあるんだ。
こうがみ しんや。
ある日おれの前にやってきた、獣とはちがう、人。
こうちゃんは「俺もお前も一緒だ。」っていうけど、そんなことないと思う。
だってこうちゃんは、きれいで、やさしくて、あったかくて、おれの大好きな人。
はじめて会ったときはびっくりしたよ。
人をみるのもひさしぶりだったし、たまたま出会っちゃったおれをみてもこうちゃんはおどろかなかったんだから。
逆におれのほうがおどろいて、そのときはこうちゃんを傷つけて逃げちゃったんだ。
どうしたらいいかわからなくて、でも、もういっかい会いたいって思った。
そうしたら、そのつぎの日もこうちゃんはおれのところにきてくれたんだ!
おれ、またおどろいたけど、そのときは逃げなかった。こうちゃんのこと傷つけたりしなかった。
それからこうちゃんは、毎日おれのところにきてくれた。
ずっとひとりだったおれにいろんなことを教えてくれた。
ずっとだれにもさわってもらえなかったおれに、手をのばしてくれた。
この前なんかね、やわらかいなって、おれの髪をなでてくれたんだよ。
あのときの手、すっごくあったたかったなぁ。
「どうした?シュウ。」
「んー。こうちゃんがね、はじめておれの髪さわってくれたときのこと思いだしてたの。」
「…そうか。」
「こうちゃんはさ、おれにさわるのいやじゃないんだね。」
「嫌なものか。お前の髪に触っていると気持ち良いんだぞ。…痛かったら言えよ?」
ふふ。
この前はね、髪をなでてくれただけだったけど、いまはおれの髪をピンでとめたり、むすんだりしてくれてんだ。
こうして向かいあって、こうちゃんの顔をながめてると、むねのあたりがほんわかしてくる。
こういうのを、しあわせ、っていうのかな。
「ねぇ、こうちゃん。」
「なんだ。」
「こうちゃんはなんでおれといてくれるの?」
「それはお前が好きだからな。」
すき。
そのことばを聞くと、また心があったかくなった。
こうちゃんがおれに教えてくれたことば。おれからもこうちゃんに伝えたいことば。
「おれもこうちゃんが大好きだからね!」
「…ありがとな。」
「おれも、ありがとう!」
なんでおれが野獣なのかって、いまなら答えられる気がする。
おれが野獣なのは、こうちゃんに会うため。
こうちゃんに会って、このあったかい気持ちを知るため。
だから、おれを野獣に生んでくれて、名前をつけてくれただれかにも、ありがとう。
おれはいま、ひとりぼっちじゃないよ。
おれはいま、すっごくしあわせだよ。
初:ぴくしぶ掲載2013.3.21
某有名アニメ映画のテレビ放送があり、ふぉろわさんと盛り上がって書かせていただいたパロ。B&Bです。
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