はるがすみ
[二]倉庫
遙か3(泰九)
「なに・・・?なんだって?今なんと言った、弁慶。冗談ならたちが悪いぞ」
「九郎。信じたくはないかもしれませんが、これは冗談ではありません。奥州の藤原泰衡殿がお亡くなりになりました」
「そんな、こと・・・そんなことを俺に信じろと言うのか!あいつが・・・あいつが、なぜ!」
「落ち着いて下さい、九郎。僕にも詳しいことはわからないんですよ。ですが烏たちからの確実な情報です。それから・・・これを君に」
「・・・?なんだこれは」
「泰衡殿から九郎、君への文です」
「泰衡から・・・!?」
「僕は中を見てはいませんから。どうぞ気持ちが落ち着いたら開けてください。・・・僕はあちらに行っていますね」
『この文が御曹司殿の元に届いたということは、私の作戦は上手くいったようだな。
厄介事を抱え込むお前の世話など造作もない。
それは初めて会った頃から変わらず俺の役目だ。
変わらずこの地の空を眺め、風を感じ、お前のためにできることを自問した。
そして答えに辿り着いた。
かつてお前と共に過ごした日々が、時を経て再びお前と過ごす時間が、些細な事が俺の幸せとなりえた。
お前が幸福に生きる日々のために、俺達が幸福に生きた日々があったのだとわかった。
そしてその想いは容易く消えるものではないだろう。
それ故にお前が悲しむ必要などない。
ただ願わくば、この地を離れても奥州の風が、空が、お前と共にあることを。
独りで何でも抱え込む、頭の固い御曹司殿を見張ってもらわんといけないからな。
さて、文などと慣れぬ事をしたせいで余計なことまで書いてしまった。
結局、俺がお前に伝えたいことは一つだ、九郎。
生きろ。
生きて成すべき事を成せ。それだけだ。
たが、そうだな、最期ぐらい俺がお前に厄介事を押し付けてもよいならもう一つ、お前を愛しているという俺の想いも、その風に乗って空をかけ、お前の元へ伝わるだろうか』
「っ、やす、ひら・・・泰衡、なぜ、お前は・・・!独りで抱え込むのはお前だろう!何が生きろだ。お前が、お前が生きて共にいる、そんな日々を望んでいたのはお前だけではないのだぞ・・・!独りで逝くなど俺は許さん!許さんぞ、泰衡・・・、・・・お前の願いは、お前が伝えていれば、叶う願いだったんだ。なのになぜお前は・・・お前、は。・・・・・・今も、ここに、いるか?お前の想い、伝わっているぞ。だからっ、だから・・・俺にも伝えさせてくれないか。俺の想いを・・・」
初:2010.3.29
ALICE+