とある英傑剣士の独白
僕達はいつも一緒に成長してきた。
お互い近衛の生まれで負けず嫌いで、一日に何度も剣を交えては良いところ悪いところを指摘しあったり、たまにはこっそり城を抜け出して遊んだりした。そして、いつの日か幼馴染みでありながらかけがえのない親友となったのだ。
僕が彼女との勝負に勝ち、英傑となり退魔の剣に選ばれた勇者となったとき、誰よりも真っ先に喜んでくれた。彼女の護衛対象であったゼルダ姫には当初あまりいい顔をされなかったが、彼女のゼルダ姫と仲良くなるためのアドバイスのおかげで今では他の英傑たちと同様仲良くなれた。
そんな強くて優しい彼女と僕は親友より少し上になりたかったがこの関係を崩したくない。何しろ厄災の復活はもう目の前。いつ復活してもおかしくは無かったため考える余裕もなかった。
そして、彼女の変化に気づくはずも無かったのだ。
──遂に、厄災ガノンが動き出した。
「君たち英傑なら出来るよ。退魔の剣に選ばれた君とゼルダ姫様ならきっとやり遂げられる。背中は任せて、死んでも守ってみせるから」
君がそういって笑うから気が付かなかったんだ。きっと大丈夫だと、心の端っこにある違和感をかき消して全ては英傑の長ゼルダや仲間の英傑たちのために、愛するハイラルのために……そして君を守るために僕はまた剣を取った。
でも、次に目覚めたのは100年後のハイラルだった。しかし、全部思い出した。何もかも思い出したのだ。
あの日何があったのかを、ゼルダや英傑のみんなと過ごした日々をようやく思い出すことができた。カッシーワというリト族の詩人から受け取った額縁に収まった一枚の絵は、100年前このシーカーストーンで撮ったものに違いない。ゼルダの事も、そして英傑たちのことも自分が知らなかった話を彼から聞くことが出来て良かった。このことが無ければ知ることもなかっただろう。
これで最後の準備は整った。今までハイラル中を駆け巡り、思い出の場所に赴き眠っていた記憶を呼び覚ます旅は過酷なものだった。
色んな人や種族に出逢い、今は亡きかつて共に戦った英傑たちの神獣を乗っ取り悪事を働いていた魔物を退治し、神獣たちを無事開放できた。他に敵のアジトにも潜入したし、時には各地で使いっ走りだった時もあるが、その中でもイチカラ村は活気溢れる村となり今では沢山の思い出ができた。
カッシーワから受け取った絵を大切に仕舞い込んで、ゼルダを助けるために皆の思いを背負いあのハイラル城に向かうのだ。
黒い魔獣に乗った騎士の女性が立ち塞がる。やっと本丸に近づいたのに、後少しで辿り着くという時に彼女はやって来た。彼女の堂々とした立ち振る舞いに、彼女が厄災の器でありさらに強敵であることは確かだ。一瞬でも油断したら首が飛ぶのは確実だろう。剣を握る手に力がこもる。
戦いは互角だった。
盾で弾き返しても、攻撃の隙をついて一気に詰め寄り斬撃してもタフな彼女は中々怯んでくれない、まるで僕の戦い方を知っているような動きだった。
お互いに一歩も譲らない激闘は、黒い魔獣を倒し彼女が一瞬目を逸らした隙に勝敗がついた。地面を蹴り詰め寄り彼女の持っていた剣を弾く。カラン、と金属音が鳴り静けさを生み、気を取られた彼女の脚を払い除け彼女の肩を地面に押し付けるように倒し彼女に覆い被さり、片手は彼女の腕を押さえつけ剣先は彼女の喉元近くに捉える。互いに肩で息をするほど厳しい戦いだったが勝敗は明白だ。しかし、彼女はこの不利な状況下でも驚くほど冷静で無抵抗だった。
この静けさの中、最初に口を開いたのは彼女だ。
「……迷いの森の秘密基地」
「は?」
「誓を立てた約束の場所。抜け出した星の観測所。月が覗く海」
「──何を、言っているんだ」
そう聞き出す前に彼女は闇に消えた。彼女の言った言葉に疑問符を浮かべるも厄災を倒し、ようやくこのハイラルに平和が訪れた。
──だけど、何か足りない気がした。
何かを忘れているような、思い出さないといけないような大事な何かを……。
──誰か、を。
※リンクがもし、プルアに主人公のレプリカのシーカーストーンを見せずに厄災を倒し、主人公も死に彼女のことは一切何も思い出さないままエンディングを迎えた。というルート。
主人公=敵の認識だったため心の奥底では何か引っかかっていたが、写し絵を見なかったためそのまま厄災を倒してしまった。リンクが主人公ナマエを思い出すことは、もう二度とない。
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