灼熱の中で叫べ、星霜の歌を!
肺が焼けるようだ。
荒れ狂う炎の海は容赦なくそこに在る全ての物を飲み込んでいった。誰かが書いたであろう本に、名前にはよくわからない機械、建物の残骸、そして人……全部ぜんぶ劈く悲鳴をかき消すように優しく残忍に名前の目の前で飲み込んでいった。
緊急事態。鳴り止まないサイレンが煩わしい。
熱い、あつい、何もかもが燃えている。
自分の両の手では救いようがない状況に名前は絶望していた。立ち上がる気力はあるけれど、この絶望から這い上がる気力は彼女の中から静かに消えようとしていた。
でも、まだ死にたくはなかった。
何のために魔術師になったのか、何のためにここまで辿り着いたのか、誰を守りたかったのか。
助けたかった / 救えるこの手で
守りたかった / 立ち上がるこの足で
それならば、私は死に物狂いで地獄の中を突き進もう。
「──素に銀と鉄……。
礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。
四方の門は閉じ、王冠より出で、
王国に至る三叉路は循環せよ。
閉じよ。 閉じよ。 閉じよ。 閉じよ。 閉じよ。
繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する。
──告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。
誓いを此処ここに。
我は常世総すべての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷しく者。
汝、三大の言霊を纏まとう七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ──!」
巻き上がる風に色素の薄い髪が揺れる。手のひらに握った魔力が溢れ雫となって地面に落ちた。 英霊召喚は成功した、はず。
私は目を開けて、その光景に驚いた。
──そこには、変わらず轟々と唸る炎だけがあった。
失敗した。自分の魔力の大半を要したというのに周囲に異変は現れない。そもそも陣を描かずに召喚するのが不味かったか、もしかして英霊召喚の呪文を間違えたか、考えても悩んでも後悔したって状況は変わらない。
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