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店内のBGMはとっくに消えていて、お店の中にはお皿を洗う音だけが響いている。

「終わんないよー!絶対間に合わない!」

フロアにあるドリンクバーの締め作業を慌ててやりながら、仕事に不慣れな新人さんを先に帰してしまったことを後悔した。
キッチンではスガくんが必死に大量に残っているお皿を洗っている。

「12時半にはシネマ館の出入り口閉まるし…急がないとまじでやばいかも」
「そんなこと言うなよ!慌てるじゃん!」

閉店作業に不慣れなスガくんは、私の言葉に答えながらお皿洗いを続けていた。

今日は本当に忙しい日だった。売り上げはいつもよりだいぶ多い上に、元々閉店は11時だというのにも関わらずお客さんは11時半までいるわ、新人さんは仕事がまだ覚えきってないわで散々だ。店長は今日は会議で遠くの店舗へ出かけているので頼るわけにはいかない。
現在時刻は11時50分。まだまだ終わらない作業に泣きそうだ。

「なぁなまえ!」
「なに?」
「これさ、もし12時半過ぎたらどうなんの?」

前確か店長たちが遅くまで会議してたら閉じ込められたとか言ってたな…と思い出してそのまま伝えると「げ、まじかよ」とスガくんもさらに必死に作業を続けた。

「しかも閉まったシャッター無理やり開けると警察来るって」
「はぁ!?じゃあ遅れたら出れねーじゃん!」
「そうだよ!だから急げ!」

キッチンの材料などを冷蔵庫にしまって、次はレジを閉めたら、あとはスガくんがお皿を洗うだけだ。もう他の作業は明日の朝の人に託そう。

そう決めて慌てて材料を閉まってレジ締め作業に取り掛かる。じゃらじゃら小銭が出て来る音に紛れて「終わった!」とスガくんの声が聞こえた。

「スガくーん!今何分!?」
「12時15分!」
「いややばいよそれは!」
「最悪、布団売り場まで行って寝るかー」
「絶対嫌!」

レジの小銭が止まって、金庫に仕舞うと2人で慌てて着替え出す。「更衣室使っていいよ」と言ってくれたので、お言葉に甘えた。

「そういえばさー、俺最近ハリーポッター1からみてるんだけど」

更衣室の扉越しに、スガくんの声が聞こえる。

「おー、いいじゃん」
「スッゲー面白い。エクスパルソとか使えたら、俺も出入り口爆破出来るのに」

スガくんが呪文で出入り口のシャッターを爆破する事を考えると笑えた。

「もっと穏便に出よう」と笑いながら言い返せば「じゃあ動き止める呪文にするべ」なんて提案されてまた笑ってしまった。

「そもそも魔法使えないし!」


着替え終わって荷物をまとめて、2人で慌てて店を出た。鍵をかけて出入り口まで走る。

「まだ五分あったし余裕だね!」
「なまえが着替えるの遅いから5分しかないんだぞー」
「ごめんってば!」

そんな他愛ない話をしながら走る。五分あるんだし走れば余裕だ。

と思っていた。
ウィーンと何かの起動音のような音がする。

「シャッター閉まってね!?」
「閉まってる閉まってる!なんで!?」

2人でおかしいおかしいと言いながらケータイを見ると12時32分だった。

「おかしくね?俺達25分に出たはずなのに…」
「お店の時計ずれてたって事?」

慌ててお店へ戻って時計を確認すると、まだ30分にはなっていなかった。

「嘘でしょほんとに閉じ込められた…」
「こんな事本当にあるんだな…」

とりあえず、2人でお店の外の椅子に座った。バイト終わりなのにスガくんからは洗剤のいい匂いがした。


『夜のデパート1』
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