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最近の気温はすごく気まぐれで、暑かったり寒かったり忙しい。少し前まで半袖一枚で過ごしてたなんてなぁ。毎年思うが、なんだか不思議な気持ちだ。
校門から校舎にかけて続く道に植えられている木は、所々色が変わって地面を赤や黄色に染めはじめている。

「もうすぐ秋ーってカンジだねぇ!」

寒くなってきたから出したのか、Tシャツではない黒のレザージャケット姿が、冴ちゃんこと田中冴子によく似合っている。
私も八分丈の服の袖を無理やり伸ばして腕を隠した。寒くはないが、なんとなく。

「秋かぁ〜…。てことは春休みはまだ遠いね」
「春休みはアタシ毎日バイト三昧だ」
「私も大して変わんないよ」

昼休み中だからか、そこかしこからいい匂いがする。

「今日お昼どうする?」
「アタシ今日は今から弟の学校にお弁当届けに行かなきゃダメなんだよね、アイツ忘れてっちゃって」
「男子高校生でお昼抜きは死ぬよ」
「育ち盛りだかんねー!」

冴ちゃんの弟の自慢話はよく聞く。冴ちゃんに似てきっと活発ないい子なのだろう。

「そだ!美緒さ、今日一緒にアタシんちでお昼食べる?」
「え、いいの?」
「そんでお弁当届けるのついて来なよ!ついでにアタシの自慢の弟見せたげる!」


ー ー ー ー ー



冴ちゃんの家まで行き、車に乗せてもらってお弁当を届けに烏野高校へ向かう。

「ねぇ冴ちゃんの運転荒い!マジで酔う!空腹にキく!」

訴えかけても車が減速することはなく、私は窓を開けて冷たい空気を浴びながらなんとか耐えた。

「ほら着いたよ!」
「いや無理気持ち悪い…冴ちゃんの運転二度と御免…」
「ごめんごめん…」

苦笑いで、帰りは美緒の運転ね、と言われ背中をさすってくれた。

高校なんて何年振りだろう。まして自分の出身でもない高校だ。なのに何となく懐かしさを感じるのは、このお昼前の授業中の、静かで誰もいないような空気感のせいだろうか。

「ちょーっと早く来すぎたかな。」
「何時からお昼なの?」
「確かー…12時半くらい?」

ならあと30分くらいだ。そのくらいなら空腹も我慢できそうだ。

「あれ、田中の…」

声がして振り向いた先には、グレーっぽい短髪の男の子がいた。

「スガちゃーん!」

"スガちゃん"と呼ばれた男の子は、冴ちゃんの方へ上履きのまま小走りで来た。

「授業サボってほっつき歩くなんて…」
「違います!ちょっと用で…ってそれより、こんな時間に何しに来たんですか?」
「これ。龍がお昼忘れてってさ、届けにきたってワケ」
「良かったら俺渡しときますよ」
「マジ!?助かるわ〜さすがスガちゃん!」

二人の話し合いの内容的に、どうやらこの"スガちゃん"が弟くんにお弁当を渡してくれる事になったようだ。

「美緒!ちょっと来て来て」

少し離れたところに居た私を、冴ちゃんが手招きした。
なんだろうと近づいて隣に立つと「この子、龍の先輩の菅原くん」と紹介してくれた。

「冴ちゃんの弟くんの先輩か。どうも」
「あ、どうも!」

私が軽く会釈すると、菅原くんも少し慌てたように返してくれた。大学ではもう見なくなった初々しい感じが何とも可愛らしくて、高校生!って感じで羨ましくなる。

「で、こっちがアタシの友達の牧野美緒。彼氏居ないから狙うなら今がチャンス!」
「ちょっと冴ちゃん!」
「冗談だって」

いつもの調子で笑いながら冴ちゃんの肩を軽く叩く。菅原くんはその様子を見て「二人、仲良いんですね」と笑っていた。


大きなお弁当箱を菅原くんに託して別れ、冴ちゃんから車のキーを預ろうと思ったが、冴ちゃんの家までの道がわからないので大人しく運転を譲った。「帰りはゆっくり行くから」と言う冴ちゃんの言葉は全く信用できないけど。


『初めまして』

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