23、期待する
「ほぉお〜最近の花火は、こげん色鮮やかなもんか!」
「・・・?」
「陸奥守の言葉は訛りが強えから、べににはわかんねえってよ」
「がははは!まあええきに!そんんち慣れるき!」
バシバシと和泉守の背中を叩きながら、“てれび”の中の花火に集中する。
まっこと、美しゅうできとる。
しばらく寝ちょる間に、世界はどんどん前に進んじょるんじゃのう!
「しっかし、この“てれび”っちゅうんはすごいがちっさいもんやのう・・・こげんこつ目ん前で見れたら、最っ高にわくわくするんやろうなぁ!」
「・・・!べにも!」
「ん?べにも見たいんがか?」
「べにも!みる!」
「まっはっはっは!まーかせちょけ!火器の扱いやったらわしが一番やき!」
「おいおい、何言ってんだよ?」
「ん?誉取ったもんは好きなもん一個頼んでいいと聞いたぜよ?」
「あぁまあそうだが・・・ってはあ!?お前入ったばっかで誉取る気かよ!?」
「勝てばええんじゃ、勝てばなぁ!」
「ばーか」
ぐっと握りこぶしを作っちょる後ろから、冷めた声がかかってきた。
せっかくやる気になっちょったが、一気に興ざめや。
「・・・なんじゃあ?おんしは」
「誉なんて、そんな簡単に取れるわけないよ。ましてあんたみたいな打刀がさ」
カチン、とくる物言いをするのは、べにより少し大きいくらいの子ども・・・短刀か?
むっとした表情で、何に怒っちょるんか知らんが、人に喧嘩売るんはいかがなもんかな。
「得意なのは火器の扱いなんでしょ?刀が二の次なら、あんたの出番は火をつける時だけでいい」
「・・・なんじゃと?」
それは、流石に聞き捨てならん。
立ち上がったわしの腕を和泉守が「おい、」と掴んで止めちょるが、そんなこつ知ったことか。
一度、口の利き方っちゅうもんを教えたらんと・・・
「ほたうー♪」
和泉守に足止めくらっちょるわしの隣をてててと走りぬけたんは、べに。
嬉しそうにほたうと呼んだその短刀のところまで走って、腰に抱き着いた。
ほたうは、べにの頭を優しい目で一撫でして。
「・・・実戦に出るのは、俺とまともに戦えるようになってからにしなよ。じゃないと、周りに迷惑かけるだけだよ?」
「・・・ほうか!ほんなら手合わせ、よろしゅうな!」
「・・・ほーお?」
怒気が抜けたわしの腕から、和泉守が手を離した。
隣で茶を汲んでくれとった堀川がその様子に首を傾げる。
「兼さん?」
「いや、意外だなと思ってよ。あれだけ言われて、笑うだけとは」
まぁ、嫌味なだけの奴じゃったら、頭に血ぃ上ってたかもしれんけどな。
べにに好かれる奴が、悪い奴なわけがない。
もし仲間思いの奴じゃったら、後悔するのはわしになりそうじゃからの。
時代の流れを読めんやつは、流されていくだけやきに!
結論だけ言えば、わしの読みは“アタリ”じゃったんじゃろう。
「いや参った、降参じゃ!がははは!」
「・・・んー。ちょっと物足りないかな」
そりゃそうじゃ。生まれたてのわしとすでに戦場に出て経験を積み始めてる大太刀の蛍丸じゃあ、地金に差がありすぎる。
短刀やったらまだ、勝機はあると思っちょったんじゃがのう・・・
手合わせ用に内番着から着替えた蛍丸が手に取った木刀の長さに、一瞬口の端が引きつったのは勘弁してほしいの。
「ほら」
「・・・ん?なんじゃあ?こりゃあ・・・」
汗を拭く蛍丸からポイ、と投げられたのは、木の枝みたいな棒のぎょうさん入った平ぺったい袋。
「べにのためのもので、安いものなら、誉取らなくても結構もらえるんだよ」
ちなみに値段は端末で見れるからね、とつっけんどんに言う蛍丸に、もしや、とぎょうさん書いてある文字に目を走らせる。
見つけた“花火”の二文字に、「おおおおお!」とそれを道場の天井に掲げた。
「蛍!おまん、いい奴じゃのう!」
「っ・・・うるっさい!たまたまお願いしてただけだってば!」
「お前さんが頼んだがか?ほんなら一緒にべにのところに持っていくぜよ!」
「わっ!?ちょっ、はっ、話を聞けーー!!!!」
がっはっはっはっは!こういうんは動いたもん勝ちぜよ!
こりゃあ夜が楽しみよな!
「おおー!すげーな!」
もう夏も終わりがけで、夜になるとめっきり冷え込む。
上に一枚羽織って外に出たわしらは、火薬が作るまっこと美しい世界にぎゃあぎゃあと子どもみたいにはしゃぎまわった。
「この人数にたったこれだけじゃ、一瞬だよ・・・」
「せっかくもらったんやき、文句言ったらいかんぜよ?」
「・・・わかってるよ」
ぷくーとやわそうなほっぺたを膨らませちょるんはまるで子供じゃの。
思わず笑いながら頭撫でてしもうたわ。
・・・本人がぷんすか怒っちょるのより、向こうからこっち射殺しそうな目で見ちょる眼鏡の方が怖いわ・・・
「ねーずおー、おっきいの?」
「え?おっきいのですかー?んー・・・今日は手持ち花火しかないみたいですね・・・」
「えー・・・」
「べに!ほれ見てみい!」
「きゃあーっ♪」
「おおっ!」
「いけません陸奥守殿!そのような使い方は危のうございます!」
しょぼくれた顔するべにの前に走り出て、両手に4本ずつ持った花火をかざして見せる。
べにと鯰尾には好評じゃったが、鳴狐には怒られてしもうたの。
「がっはっは!今のわしには、これで精いっぱいじゃ!」
向こうで和泉守が「いやいや、これ以上危ないのは・・・」とか言うちょるが、そがなもんは無視じゃ無視!
わしが言いたいんは、そこじゃなか!
「強くなったら、おまんのためにでっかい花火打ち上げちゃるけんの!楽しみに待っときぃ!」
「・・・!うん!!」
ほんときは花火にも負けん笑顔で褒めてくれな!約束じゃ!
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