友達のススメ


人と知り合うのは苦手だ。
新しく関係を作ることは面倒だし、ゲームみたいにわかりやすい選択肢もなければセーブもできない。


「翔陽・・・やっぱりいいって・・・」

「何言ってんだよ!絶対仲良くなれる、俺が保証する!」

「・・・・・・、」


引っ張られる腕に、翔陽はどんな選択肢を選んでも強制的にルートが決まってそうだ、なんて考えてため息をついた。
そもそもあの人の人となりを翔陽に聞いたのは自分なのだ。聞いた相手を間違えた感は否めないけど、話を振ったのが自分である以上、この手を拒否するのは少し違う。
意気揚々と歩く翔陽についていくのは少し小走りなくらいで、ふわふわと軽く揺れるオレンジ色の頭を見つめた。
あの人・・・烏野の13番のことを翔陽に聞くと、翔陽はぱっと嬉しそうな顔をしてみせた。
けれどすぐに固まると、困ったように首を傾げて、結果「口で説明するの難しいから、直接話せばいいよな!」と腕を引っ張られて今に至るわけで。


「おーい大野ー!」

「ぉぁひっ!?ひひひっ・・・ひ、日向くん・・・!?・・・!?」


片付けようとまとめて4〜5個持っていたボールが、手から零れ落ちてばらばらに転がっていく。
翔陽声大きいから、驚くよね・・・と気の毒に思っていると、13番と目が合って思わずふい、と目を逸らした。
・・・やっぱり、人の目は苦手だ。


「!?っご、ご、ご、・・・!」

「?何うなってんだ?」

「ごっ、ごめ、ごめんなさい・・・!」

「はっ!?」

「!?」


突然ガバリと頭を下げた13番に、翔陽と二人で目を剥く。
いきなり何、と驚いていると、腰を折ったまま震える声で話し始めてさらに驚かされた。


「ぼっ、僕なんかと目、合わせたくないですよね・・・っ!ほ、ホント、気付かなくてすみません・・・!」

「え、えええ・・・」

「・・・・・・、」


ウソ・・・目逸らしただけでそこまで考えるの?
翔陽が何を言っても「ごめんなさい、」を繰り返す13番には、これ以上何か言っても無駄そう・・・。
そう考えた俺は、まだ翔陽に掴まれたままだった腕を軽く振り払った。


「・・・翔陽、やっぱりいいよ」

「え?でも・・・」


残念そうにそう言う翔陽だけど、13番のつむじを見て諦めたらしい。
「また今度な!」と言う翔陽に小さく手を振って、それ以上13番に目をくれることもなくみんなの元へ戻っていった。










そして次の日、昼休み。
クーラーなんて便利なものがあるわけもなく、扇風機も争奪戦な食堂から早々に抜け出して、体育館の裏へ回る。
日当たりの悪いここは結構涼しくて、でも誰も知らないみたいで人気はなくて、ゆっくり昼休みを過ごすには最適の場所だ。
だからここに合宿に来るときはいつも、この場所に来てたんだけど・・・


「・・・なんで、居るの」

「っ・・・!?すっ、すみま、せ・・・!」


体育座りでふさぎ込む、烏野の13番が先客にいた。
すぐにでも立ち去ろうとする13番だけど、そんなのなんか、俺が嫌いな“一年早く生まれただけで偉そうにする先輩”と同じな気がして嫌だ。


「・・・いいよ、俺が後から来たんだし・・・」

「でででっ、で、でも・・・っ!」

「・・・じゃあ、俺こっち座るから。・・・君はそっち」

「えっ・・・!?え、あ、は・・・はぃ・・・」


ちょっと変な感じになったけど、とりあえずこれで嫌な先輩にはならずに済んだだろう。
ちょこんと座る13番から目を逸らして、持ってきたゲーム機の電源を入れる。


カチカチカチ・・・


「・・・・・・」


カチカチカチカチカチ・・・


「・・・・・・・・・・・・」


カチカチカチ・・・カチカチカチ・・・カカッ


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



あれ・・・これってすごく気まずくない!?
今更ながら自分がとんでもない選択ミスをしたことに気付いて愕然とする。
そもそも13番を見つけた時の様子からして何か目的があってここに来ていたわけじゃないようだし、わざわざここに留めることもなかったんじゃ・・・!
恐る恐る13番を盗み見ると、なんかダラダラと汗を流しながら固まってる。
その汗の量と顔色の悪さに驚いて思わずしっかりと顔を向ければ、俺が動いたことに気付いた13番がびくっと肩を震わせた。
・・・・・・。


「・・・ねぇ」

「っ!?」

「何でそんなに怯えてるの・・・?」


多分、13番はかなり臆病な性格なんだと思う。
普段のプレイスタイルからはちょっと想像できないけど、普段の姿を見ていれば一目瞭然。
それでも、苦手なのはクロとか梟谷の主将みたいなタイプで、俺とか赤葦君みたいなタイプとはまだ普通に話せると思ってたんだけど・・・


「き、昨日・・・」


俺が考えている間に結構な時間が経っていたらしく、13番の考えもまとまったらしい。話し出す様子に、こちらも姿勢を整えた。


「ぼ、ぼくが余計な事言ったせいで・・・っ、せ、先輩、用事があったのに、それの邪魔して・・・っ!!ご、ごめんなさぃい・・・!」

「・・・・・・」


思わず、まじまじと13番を見つめた。
この子、もしかして・・・怯えてるって言うより、・・・それ、気にしてただけ・・・?


「・・・君、・・・えーと・・・」

「あっ、か、烏野の大野圭吾です・・・っ!ね、音駒の孤爪先輩、ですよね・・・!」

「うん。・・・圭吾って、結構いろんなところで“気にしすぎ”って言われない・・・?」

「うぅ・・・っ」


図星な様子に、こっそりと小さく、絶対に聞こえないようにため息をつく。
そんな理由で、普通に話すこともできないなんて。


「・・・別に用事なんてない。圭吾と話してみたいと思ったから、翔陽に取り次いでもらっただけ」

「ぼ、僕と・・・?」

「うん。・・・嫌?」

「と、とんでもない・・・!」

「なら、普通に話してよ。翔陽や烏野の人たちと話すときみたいに」


それが今の俺の用事、と付け足してみれば、案の定どうしたらいいかわからずに悩みだす。
ある意味想像通りな反応に思わず笑えば、圭吾の肩の力が少し抜けたのがわかった。


「ちょっとずつでいいから、ね」


普段ほとんど使わない表情筋を何とか動かして微笑みかければ、「は、はい・・・が、がんばり、ます」と肯定の返事。
なんだ、意外とちょろいぞ、なんて、攻略できた手ごたえに心の中で小さくガッツポーズをつくった。






「・・・あれ?大野どこ行ってたんだよー探したんだぞ・・・、?研磨と一緒だったのか?」

「あ・・・ご、ごめん。外でちょっと話してて・・・」

「俺が引き留めたんだ。圭吾を責めないでやってよ」

「え、研磨・・・?・・・そっか!わかった!」


嬉しそうに頷く翔陽に、ちょっとむずがゆい気持ちを感じながらも悪い気はしない。
調子に乗って「今日の自主練一緒にやろうぜ!」なんて言う翔陽にあからさまに嫌な顔をしてもまるで引く様子はなくて、圭吾まで「せ、せっかくですし、僕も孤爪先輩のトス、近くで・・・み、見せてもらえたら・・・う、嬉しいな、なんて・・・」なんて言ってきて。
しょうがないな、なんて考えてしまうあたり、俺も意外とちょろいのかも、なんて思ってまた少し、笑った。






「研磨にまた友達が・・・っ!」

「うげっ!?黒尾お前汚ねぇよ!その顔から出てるイロイロ全部拭けっ!」

「夜久ひどいっ!」


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リクエスト:なつき様 ありがとうございました!
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