今生も


「ちょ、おま、ばっかやろう!何してんだ!」

「暑いからカキ氷作ったんだよ!食べよ!」

「違う!俺が突っ込みたいのはそこじゃない!」

「え、何々何をどこにつっこむの?やだセクシュアルハラスメント!」

「あぁもうめんどくせぇな!俺が言いたいのは何でカキ氷機の下に器を置かないんだってことだよ!」

「え?あ・・・」


はっちゃんに言われてようやく器を出していなかったことに気づいた。
え、だって氷とカキ氷機さえあればカキ氷はつくれるじゃんね?


「あ、シロップ!」

「違う!その前にやること!」

「ああ、スプーンも用意しなきゃね」

「圧倒的に一つ前が抜けてる!」

「それ圧倒的にって言いたかっただけ?」

「あーもーうっせぇな!なんとなく語呂がいいだろうが!」

「ほらやっぱりー!はっちゃんの頭なんて所詮そんなモン!」

「その語呂のほうが何か嫌だ!理由わからんけど何か嫌だ!つーかお前に言われたくねぇ!」

「ダイジョーブ、私頭イイよ」

「器を置いてない時点で無理がある」


何か少し冷静に言われて、こちらもテンションを下げる。
ま、別に熱いままでもいいんだけど一人熱くても引かれちゃうし?


「じゃあお盆持ってきて?」

「どんだけでかいの作る気だよ!氷足りねぇよ!」

「だいじょーぶ!うち冷蔵庫二つあるから!」


現代兵器なめんなよ!と続けようとしてやめた。
だって今冷蔵庫の存在は当たり前なんだから、別に言う必要はないし。


「ていうかやっぱりはっちゃん大好きだー!」

「いきなりなんだよ!?俺だって大好きだー!」


だって冷めても一瞬で点火しなおしてくれるなんて、はっちゃんぐらいじゃん?


「・・・で、いつものことだがこの茶番劇はいつになったら終わるんだ?」

「まぁまぁ、いいじゃないの。かやも久々に遊べてネジが外れてるんだよ」

「雷蔵も何気に遠慮ないよね!おれらものっちゃう?」

「収集がつかなくなるからやめとこう。それより俺早くカキ氷食べたい」

「後ろで眺めてるお前らも大好きだよ!はっちゃんには劣るがな!」

「勝てなくて結構だ。ていうかお前なんでそんなにハチになついてるんだ?」


おや、いまさらながらも核心を突いた疑問が跳んできたな。


「そういえば、会ったときからかやのはっちゃん好きはハイペースだったねー。昔会ったことあるとか?」

「え、俺覚えてねーよ?」


お、乗ってきたね。これは続けて話しちゃおうか。
私のいままで作ってきたノリなら、問題ないでしょ。


「実はー・・・私の前世はハチに助けられたタヌキなのでした!それからも少しの間だったけど世話してもらってたから、情がのこってるんだよー!」


しばし、沈黙。
ニヤニヤした顔が辛くなってきたから、自分で器を出して氷を砕くことに専念し始める。


「・・・へぇ〜、俺ってじゃあ前世も人間だった?」

「・・・うん、そだよ〜前も変わらず動物好き!」

「何だ、ハチは絶対狼か何かだと思ってた」

「ハチが人間なら、俺たちは全員人間だろうな」

「ちょっと待てそれどういう意味だ!」

「まぁまぁ、で、実際のところは?かや」

「え、あ、皆人間だよ。忍者してた」

「忍者!?マジでいたんだー!」

「う、うん・・・え?信じるの?」

「え、嘘なの?」

「ち、違う!・・・あ」


しまったー・・・。
ごまかす程度のつもりだったのに、思い切り否定してしまった。
嘘や冗談にはしたくないから、でも事実だと押し付ける気もなかったのに。


「かやはふざけたり冗談は言ったりしても根が真面目だからね。最初の沈黙で冗談って言わないなら事実でしょ」

「俺はかやが嘘をつくところを見たことが無い」

「あははっ!兵助はたまにめちゃくちゃ真面目な話してるよね!」

「頭の固い者とは頭の固い話をするのが一番合わせやすいしな。私と話すときはよく悪知恵を働かせてくれるぞ」

「なんだよそれ!じゃあ俺と話してるときは馬鹿なふりしてるってことか!?」

「ハチ、それは自分を馬鹿だと認めてることになるぞ」

「でもやっぱり一番楽しそうだよね、かや。ハチと話してるときがさ」


わー・・・想定外。
でも、やっぱり。


「お前ら最高だーーー!!!」

「!?うわ、ちょ!お前はハチに飛び掛ればいいんだよ!」

「そうそう、世話してもらいなよ!一生!」

「“一度助けたら最期まで面倒見るのが人として当然”なんだろ?」

「一言も間違えず言うんじゃねぇよ!」

「そういうのは一言一句って言うんだよ」

「雷蔵の言葉がいたい!」

「私今度の生もはっちゃんに面倒みてもらうー!」



やっぱりお前ら最高だ!


「カキ氷できたよー!」
「コイツマジでお盆に作りやがった!」
「シロップ足りるかな?」
「問題はそこじゃないよ、雷蔵・・・」



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