私を見て


「ねぇかや、おれが前世の記憶持ってるっていったらどうする?」

「・・・じゃあ勘ちゃんは、私も覚えてるよって言ったらどうする?」

「・・・ホントに?」

「・・・・・・」


そう、本気なんだ。
突然振られた話題に、我ながら秀逸な返事ができたと思ったら、まさかの返答。
冗談なら笑い飛ばすなりさらにふざけて乗ってくるなりしただろうけど、今の彼の目は本気だ。


「ねぇ、かや・・・約束、覚えてる・・・?」

「・・・・・・勘ちゃん・・・」


あぁ、どうしたらいいの。
もう何をしても勘ちゃんを傷つけることにしかならない。
でも、ごめん。
誤魔化すようなことは言っても、嘘だけはつきたくないから。
正直なことだけが、私のとりえだからさ。


「・・・私は、“今”の私なの。・・・昔の“私”とは、同じじゃないよ」

「・・・・・・」


勘ちゃんだって、わかってるでしょ?
私の反応がおかしいことに、気づいてるでしょ?
ほら、呼吸が深くなってる。泣きたいんだよね。
そんなに、前の“私”に逢いたかった?
でも、でもさ。


「・・・勘ちゃん、・・・私を、見てよ」


過去に縋るってことは、勘ちゃんは私を通して私じゃない人を見てたの?
ううん・・・見てたんだよね。
目がもう、私を見ているようで見ていない。
虚ろだよ。(死んだ人たちは、そろってそんな目をしてた)
悔しくて悔しくて、たまらない。
前の“私”なら、彼を引き寄せることができた?
今の私に、“私”から彼を取り戻す手段はあるの?
・・・それも、おかしな話かな。
元々彼は、私ではなく“私”を見ていたんだから。


ねぇ、私と“私”はそんなに 別人 かな?



(“私”だと思ったから、賭けたんじゃないの?)
(かやなのに、かやじゃない。けど、かやなんだ。)



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