あなたの為の私です


荷物を持った君のために、俺はドアを開けよう。
授業中に寝てしまった君のために、俺はノートを綺麗にとってあげよう。
部活に行く君のために、俺はスポーツドリンクを買ってきてあげよう。

全部全部、君のため。

モーニングコールをしてあげる。
迎えにいってあげる。
飲み物を買ってあげる。
荷物を持ってあげる。
ノートを見せてあげる。
家まで送ってあげる。

君のため、と銘打って、俺は君にしてあげたいことをする。

「過保護だ」と、知らない人はそれを言う。
「おかしい」と、わかってない人は後ろ指を指す。
そりゃあ、俺だって田中や西谷にはこんなに尽くさないさ。

ただ、君が頑張りすぎるから。

前も見えないほど積み上がった荷物を、「悪いから」と全て一人で運ぼうとするから。
体調が悪かったのに、夜中までかけて宿題を仕上げてくるから。
「これを部活中に飲みきること、」とでも言わないと、君は脱水症状を起こすまで練習を続けるから。
俺は君がいつか倒れちゃうんじゃないかって、心配でしょうがないんだ。

君は俺がそんな風に世話を焼くと、いつも申し訳なさそうに「ごめんね、」と言うけど。
だからそのたびに言い返すんだ、“俺のためだから”って。
君を放っておいたら、きっと俺の胃には穴が開く。結構本気で。
俺はこの若さで胃に穴なんて開けたくないから、君の世話を焼いてるんだよ。
それを言うと、君は困ったように笑って「ごめんね、」と言う。
俺はとりあえず、今はまだ笑顔で返事をするだけ。
そのうちそれに「いつもありがとう」が付くことを、夢見ながら甲斐甲斐しく世話を焼く。

我ながら健気だなぁとは思うけどね。

送り迎えは、そんな俺に対するご褒美だとでも思ってよ。



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