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「もう逃げられないよ」
「……っ」
ずいっと私との距離を一気につめて…すでに距離は10cmもない。
密着、とまではいかなくても…すぐにキスができそうなくらい近いこの距離に自然と顔が赤くなる。
…そういえば…こうやって近くに来てやっと気づいたけど…恭弥、身長伸びてる。
前はこうやって近くにいるときは首が見えていたのに今は見上げないと見えない。
大人の、男性に…近づいていってる……
そう思っただけでなんだか気恥ずかしくて、もう恭弥なんて見れなくて、思わず俯いた。
「…美瑠」
「……っ!」
低い、低い声。…色香を含んだ、声。
痺れるような、酔うようなそんな低音にびくりと肩がはねた。
恭弥のクスリ、と笑う声が聞こえてそっと包み込むように抱き締められ…恭弥の顔が私の首筋に埋まる。
ふわふわした髪は相変わらずで、擽るように私の頬を撫でた。
「ずっと…ずっと、待ってた」
「…きょ、うや…?」
「美瑠が、帰ってくるの」
耳を擽るくぐもった声。
恭弥が少しだけ体を離して、ようやく私は恭弥の顔を見ることができ…思わず息を飲んだ。
さっきまでの恐怖を煽るような笑みじゃない。
すごく優しくて…私のことを本当に好きだって教えてくれるような、穏やかな笑み。
その笑顔がすごく綺麗で…心が落ち着いて、安心した。
…だからか、一気に肩の力が抜けてもたれかかるように恭弥の胸に顔をうずめる。
「もう、待たなくていいよね?」
「…うん」
もう、勝手にイタリアに行ったり、しないよ。
そう小さく呟くように伝えると、恭弥は満足そうに笑って私にキスを落とした。
最初は、軽く触れる程度。所謂バードキス。
ちゅ、ちゅ、と小鳥が啄ばむように触れては離れて、触れては離れてを繰り返す。
すると次第にそれでは満足できなくなって…自然と深くなっていった。
まるで一年間伝えられなかった体温を確かめるように……
電話でしか囁けなかった愛を、無音の言葉で伝えるかのように。
ゆっくりと、どんなキスよりも甘くて優しいキスを繰り返した。
あぁもう…その優しさに、甘さに、頭がくらくらするよ……
ぎゅうっと目を固く瞑れば恭弥の唇が名残惜しそうに離れていき、合わせたように目を開ければ恭弥と視線が絡む。
真っ直ぐな…熱を帯びた、黒くて鋭い瞳。…その中に見える、優しさ。
どこまでもやっぱり綺麗な瞳に見惚れながら頭がふわふわするせいか現実味が感じられなくて。
顔真っ赤、と笑ってまた頬にキスしてくれた恭弥が緩やかに抱きしめてくれた。
「恭弥…」
「…何?」
「……ううん。なんでもない。…ただ、呼びたかっただけ」
「クスッ…そう」
何も言葉にしない、けれどとても穏やかな空気が私たちを満たす。
その雰囲気に身を任せながら私はゆっくりと恭弥の腕の中で目を伏せた。
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