甘いお菓子はいかが?



「甘っ…!」



あーもー、と非常に残念そうに姫が呟いたので何が起こったのか気になって読んでいた本から顔を上げる。
キッチンにはエプロン姿の姫の後ろ姿。
辺りには僕でも気分が悪くなりそうなくらい甘ったるい匂いが漂っている。

そういえばお菓子が作りたいって言って、ガトーショコラ作りだしたんだっけ……
さっきの歎き方を見る限り、成功したとは言い難そうだけど、焦げた匂いは全くしない。
代わりに姫の「甘い」という一言と、この匂い。
…もしかして、砂糖の分量でも間違えたのかな。

どうなったのか気になり初めて、読み掛けの本をぱたり、と閉じてキッチンへ向かう。
僕の気配に気づいたのが情けない顔をした姫が弱々しく振り返った。



「恭弥…」

「どうしたんだい?」

「絶対砂糖の分量間違えた…!」



せっかく焼き加減は最高なのにー!と頭を抱える姫に予想通りすぎて笑いが込み上げる。
くつくつ、と笑いを咬み殺していると笑いごとじゃないよー!とかみつかれて、さらに笑いが込み上げてきた。

恐らく砂糖の分量を間違えたであろうガトーショコラはあの鉄板の上にあるやつだろう。
近くにあった包丁で小さく切り分けて、ぱくり、と一口。
途端に広がるのがチョコと砂糖の際限ない甘さ。
いや、甘いなんてものじゃないね、最早。
確かに甘いものが比較的好きな姫でもこれは甘いと言うに決まってる。
思わず眉に皴が寄ってしまうと姫まで悲しそうに眉をハの字にした。



「ごめん、甘すぎるよね…」

「姫」

「な…、…っ!?」



俯いていた姫の名前を呼んで顔をあげさせると素早く姫に口づける。
ちゅ、という音をたてればぽかんとした顔がみるみるうちに赤くなっていく。
その様子が可愛くてにやり、と笑ってみせて、



「ごちそうさま」



そう囁くと同時に姫から小さな反抗の声があがった。



甘いお菓子はいかが?

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