「あ、急に呼んですみません。少し確認したいことがあって……お邪魔でした?」
「へ?」
星導の向こう側にある、窓に反射した自分の顔を見て驚いた。平静を装ったふりをした男の顔は、その実耳まで無様に真っ赤に染めて、僅かに潤んだ目をしていた。
…まさかこの顔でユキと話してたんじゃないよね。思わず長く息を吐いてその場にしゃがみ込む。驚く星導の声も今はただの雑音で、顔を覆った手のひらから感じる熱にまた溜息をついた。
「ちょっとどうしたんですか」
「ん〜どうしよう星導」
「何がですか」
ペラペラとクリップで止められた紙束を捲りながら心底どうでも良さそうにする星導の顔を見上げてみるも脳裏に浮かぶのはやっぱり頬を赤く染めるユキの姿。指先に触れた肌は熱くて、溶けてしまいそうだった。
「…好き、なんだよなぁ」
「知ってますよ」
「やっぱり?そんなにわかりやすいかな」
「別にバレたくない人にはバレてないんだからいいじゃないですか?」
「ほらあなたの分の書類です」と数枚の紙束を頭の上にぽすと緩く叩きつけた星導は用事が済めばあっさりとその場から立ち去ろうと背中を向ける。
オレもユキのところに戻らなきゃ。ドアノブに手を伸ばして、一度窓に映る自分の顔を確認した。
「…も〜オレの馬鹿。これじゃ帰れないじゃん」
隔てた壁一枚。内と外。静寂に包まれた両者共に二人分の溜息が満ちた。