「どんなのがいいかなって、めちゃくちゃ迷ったの」
「おぉん、んで、全部いいなって思っちゃったん」
「うん、そんな感じ」
 
 机いっぱいに広げられたチョコレートの箱に、最初はビックリよ。バレンタインデーとか興味なさそうだし?それはそうだけど、チョコ好きだしな。それに、何渡されても喜んでるけどね、どんな時でも。てか、伝わってないかも知らんけど、全然嬉しいぞ。なんかもう箱見てるだけでいいわ。いや嘘。比喩っていうか、そんくらい嬉しいって意味でね。ちゃんと食べますけど。
帰宅早々固まった俺に不安げな顔を見せるから、どしたんと思ったけど、そうか、マスクで顔も見えんまま固まられたら不安になるわな。ちょい恥ずいけど、マスクを外したら、ゆるゆるの口角を見て安心したみたいに笑顔が戻ったから、よかった。
 
「でもこんなにいっぱいは食べきれないか…」
「別に今日明日で食べなきゃいけない訳じゃないでしょ。チョコとか」
「そうだけど…」
「え、めっちゃ嬉しいぞ」
「そ?」
「色々食えるじゃん。ゆっくり一緒に食ってこ」
 
 好みとか考えて、一生懸命選んでくれたのね。こっちは宝石みたいに綺麗なの、こっちは単純にいちご味か、そんで、これは?…ああ。ちょっとダサいの好きだからって?うるせえわ。あれはイケてんのよ。いいから食べようや。柔い唇に雫の形したチョコレートを押し付けたら、ふに、唇が押し込まれて、ぱくりと入っていくのが小動物みたい。いいね。何か羨ましくなったから、俺もしていい?




-チョコもいいけど、お前もね-ib

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