ドライブしようよ2


「寝んの、弱いねぃ」
「寝ない…お話しよ、なんか面白い話して」
「いやそういうの良いって、寝てな」
「眠たくないから…」
「嘘つくな、その声で眠くなるわ」

 結局、旅館も海もBBQも、最後に連れて行ってくれたライトアップされた綺麗な夜景まで、思っていた倍以上、子供みたいにはしゃいじゃったから、疲れてるみたいだ。会話の途中で一瞬途切れてしまった意識を指摘されて、眠気に抗えなくなっている自分に気が付いた。家に帰るまでが旅行、この時間を最後まで楽しみたいのに。それに、疲れているのはイブも一緒で、だからこそ助手席で寝てしまうなんて、申し訳ない。暗くなった静かな海を眺めながら流れるBGMに合わせて体を揺らしてみたら、さらに眠気がやってきたから、ぶんぶんと首を振って静かなBGMをスキップして陽気な曲に替える。一連の動きを見たイブは、強がってんなよって言いながら笑っていた。

「ごめんね、ほんと」
「なんでぇ」
「振り回してばっかりだったから、昨日も今日も」
「いや今更よ、いつもの事だろ」
「それは…じゃあいつもごめん」
「いや、そう言うことじゃなくて。楽しかったじゃん」
「ほんと?」
「ほんとよ。行くまでは暑いしダルいけどさ、実際行ってみたら全部良いもんよ。旅行ってさ」

 そう言うもんじゃね? とガムを咀嚼しながらハンドルを片手で持つ姿は行きよりもリラックスしてゆったりしている。助手席との間にある肘置きに置かれた左手は規則的にリズムを刻んでいて、ご機嫌みたいだ。似合うと褒めちぎって頭の上に乗せたサングラスは、シャツの胸元にかかっている。山々が近づいてきて、このトンネルを抜ければ海とはさよならだ。そして、現実が帰ってくる。家に帰って、またいつも通りの日常が始まるということをまじまじと思えば寂しくなって、左腕にそっと触れてみると刻んでいたリズムが止まった。

「なに、帰っても一緒よ」
「泊まってく事になってる」
「そのつもりだったでしょ」
「ん、イブがいいならそうしたいなとは」
「ダメって言うと思ったん」
「…言わない」
「でしょ、っていうかもうさぁ…」
「…」
「もう寝てんじゃん」
「っ、なんか言った…?」
「いや、いいわ。大丈夫だから寝てろって」
「…ごめん…帰ったらいっぱいありがとうするからね…」
「ふは、そうしてよ」

 寂しくなった気持ちに寄り添うみたいに優しい声に安心して更に瞼が重くなる。ついに眠気に抗えなくなって、こくこくと頭が揺れているのを自分の事なのに客観的に感じながら、意識が底へと落ちていく。非日常が終わっても、イブの隣に居られる幸せを感じながら。
 


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