STAGE.13
声が、出ない。
身動きが封じられ、首を掴む手に力が込められていく。
(怖い――――‥)
ギリリと首を締められ、恐怖と息苦しさにギュッと目を閉じた。
掴まれた手をはがそうとしても、ピクリとも動かず、段々と血の気が引いていく感覚。
『離しッ―――‥!』
抵抗の意味はない。
まして、苦痛に歪む私の顔を男は楽しそうに見下ろしていた。
『殺される』、本気でそう考えたとき、急に首の圧迫は解放され、高杉が首元に顔を埋めると生暖かい感触が首筋を伝った。
それは、強く押し当てられ、痛みを生む。
嫌だ。
気持ち悪い。
『―――‥嫌ッ!』
「―――!」
咄嗟に払いのけた腕は男の顔を掠め、爪先がその頬へと傷をつくった。
一瞬、相手は退く。
が、まだ解放された訳ではない。
『ゴホッ、ゴホッ‥‥ハァ、ハァ‥‥』
早く、この場から逃げないといけない、頭の中では分かっていても体は思うように動かなくて、息を整えるだけで精一杯だった。
「‥‥‥‥」
目の前の男は何故か黙ったまま。
右頬についたかすり傷をゆっくりと指でなぞっていた。
「フッ‥‥ククッ‥‥」
『‥‥?』
そして含み笑いが聞こえたと思ったら急に声を上げて笑いだしてしまい、私は少し呆気にとられてしまった。
「俺の顔を傷つけるとは、いい度胸じゃねーか‥‥名無しさん?」