STAGE.21
『すごく綺麗だなぁ』
恒例となった夕食の買い出しの帰り道。
ふと、足を止めて辺りを見回しながら呟いてみた。
空も道も人もオレンジ一色で染められたような。
鮮やかな夕暮れ。
どこか切なくて、愛おしい気持ちにさせる。
そんな哀愁に満ちた光景が視界に広がり、しばらく見惚れていたところ。
目の前にあった公園のベンチで、銀髪パーマが揺れていることに気付いた。
『あれって…銀さん?』
言葉にした疑問を確かめるべく、その人物に近付いてみたが、どうも雰囲気が違った。
いつもの白い着流しではなく、黒い羽織姿で頭には包帯を巻いている。
人違いかと思いつつも、こんな根性ネジ曲がったような天然パーマは他にはいない。
『銀さん?どうしたんですか、こんな所で』
「……貴方は?」
ん。
何か、違う。
声を掛けて振り返った顔に違和感を覚える。
顔は間違いなく銀さんだけど、銀さんじゃないような。
「すみません…僕は…」
向けられる悲しそうな視線に思わず言葉を飲む。
普段の様子からは想像できないほど、とても怯えて見えて。
これ以上、何も聞き出してほしくなさそうな。
けれど放っておく訳にもいかず、私はただその場で立ち尽くすしかなかった。