STAGE.23
大晦日。
新年があと数時間後に迫っているなか、真選組屯所の食堂にて、私は、元日を迎える準備の最終確認の真っ最中だった。
『おせちに甘酒と…あと、お雑煮の下準備もしたし…よし!』
下ごしらえした材料と並べられた料理を一つひとつ確認していき、漏れもなく我ながら準備は完璧なようで満足気に手を叩いた。
何と言っても、ここ真選組で迎える初めてのお正月だ。
せっかくだから皆に喜んで欲しいし、皆と過ごす時間はきっと楽しいに違いない。
そう考えると、自然と頬が緩んでくるようで、明日が待ち遠しくて仕方なかった。
「……」
『……』
そんな中、陽気な鼻唄を歌いながら食堂を軽くスキップする姿を、あろうことか鬼の副長に目撃されてしまっていた。
穴があったら入りたい。
まさに、その心境だったが、ここで立ち尽くしている訳にもいかず。
『ひ、土方さん…ど、どうしたんですか?』
「あ、いや…コーヒーでも淹れようかと」
意を決して話し掛けたが、気まずさそうに視線を逸らされてしまい、私の恥ずかしさは倍増されてしまった。
何か、この間の遊園地と言い、変なとこばかり土方さんに見られてる気がする。
心の中でハァと溜息を吐きつつも、沈んでいく気持ちを何とか奮い立たせ、平常心で接しようと改めて顔を上げた。
『コーヒーなら、お部屋に持って行きますけど…土方さんは、宴会には出ないんですか?』
「いや、俺は…」
今しがた、その宴会場から出てきたと言う土方さんに、具合でも悪いのかと尋ねたけど、そうではないらしい。
何か気になる事があるようだけど、「それよりも」と話を変えられ、私自身は宴会に出ないのかと逆に質問された。
『宴会場には何が何でも近付くなって、総悟と名無しくんが…』
「…そうだな、それがいい(ハメを外した上司がいる)」