STAGE.1

不意打ちキスじゃ奪えない

「はァ、はァ・・・」


ポタポタと汗が流れ落ち、地面に痕を作るさまを熱さに揺れる視界でボンヤリと眺めながら、銀時は肩で大きく息を整えていた。

腕の中の少女は、既に意識を手放しており、スースーと寝息を立てている。

余韻も何もあったもんじゃないが。

片腕で彼女を支えながら、もう片方の手で顎を引き寄せ此方を向かせると、その唇を重ねていた。


「んっ―――・・・」


それは、あの時と同じように心地よくて。

相手の瞼は閉じたままで、口付け後に見つめ合えないことに多少の寂しさを感じつつも、自身を引き抜くと、互いの衣服を整えた。


「・・・ったく、いい気なもんだぜ」


捕らえられていた手錠を外してやり、その身体を横にして抱き上げると、胸元でぐっすりと眠る名前の姿に苦々しく吐き捨てる。

10歳近くも年下の少女に、こんなにも翻弄されて。
こっちの気持ちなどお構いなしで、気持ち良さそうに寝ている。

ハァと軽く溜息を零してから、このまま真選組の屯所に連れて行こうかと歩み出したところ。


「苗字っ!」


血相を変えて、駆け寄ってくる黒い影が一つ。


「「・・・・・・」」


顔を突き合わせた両者は、何も言えずに立ち尽くす。


「「・・・・・・」」

「・・・旦那じゃねーですかィ」


二人の沈黙を破るように、何とも言えない表情で立ち尽くす土方の後方から現れた沖田が、銀時を見付けて声を掛けた。

集まった三人の男。
何をしていたか、なんて互いに問える状況でもなく、気まずい空気が流れる。

が、このままの状態で居る訳もいかず。


「あー、何だ、そのー・・・とりあえず、ゆっくり休ませてやってくれや」


腕に抱えた名前の身体を土方に託すと、銀時はその場を足早に去って行った。

そして、我が家への帰宅途中。


「・・・あー、どうすっかなコレ・・・」


銀時は頭をガシガシと掻きながら、日が昇り明けていく空に向かって呟いた。


END.

不意打ちキスじゃ奪えない
こんな偶然じゃなく、今度は。
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