2021/12/30

2021年オフラインネタ帳大放出祭9



「うっわー、なるほど」
過去に来た。家電量販店のテレビに映るニュース画面を見つめる。ETUの中に達海猛がいるし、ヴィクトリーに成田さんがいる。ということは、間違いなく前に生きていた時代よりも昔の世界である。とりあえず窓ガラスに写る自分を見るに高校生とか中学生くらいであるし、あとどう見ても男になっている。これは男子日本代表にいくチャンスでは?と思ったがどう考えてもあの家の状況からしてサッカーをしている暇はなさそうだ。働かなくては、と意識を改めたところでこのくらいの年の人間を働かせてくれる場所など皆無に近いのだろうが。くっそ、楽しそうだな、と、サッカーの試合をじっと見ていれば「なにしてんの?」と声をかけられる。知っている声である。振り返った先にいたのは達海猛本人である。
「いや……楽しそうにアンタがサッカーするなって思って見てた。ここさー、右から抜くのがさすが達海猛ってなるんだよなぁ。ああ言う場合左から抜くのが普通だからみんな釣られてるし」
そう言ってまた画面をみる。うーん、達海猛離脱前、よりもうちょい前か。成田さん上手いんだけどやっぱり達海猛の方がうまいんだよな、とおもっていたらグウとお腹が鳴った。
「達海猛お金持ちでしょ、なんか奢って」
冗談のつもりでそういえば、昔の達海監督はいーよと頷いた。
「まじで?」
「うん」
「よっし、今日は食いっぱぐれることない!」
ガッツポーズを決める。目を瞬いた達海猛には悪いが、そんな感じだぞ。目が覚めたらこの体なおかつ汚い部屋でご飯もクソもない状態で妹といたからな。頑張って小綺麗にしてこれである。
「妹連れてきていい?」
「いいけど、何、そんな食いもんに困ってんの?」
「金にも困ってるから働き口探してる。サッカーしたいけど、先に生活安定させないと」
そう言いながら達海猛と歩き出す。途中でアパートに寄り妹の手を引いて飲食街に行く。この人もうちょっと警戒とかしたらいいのに。


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「いや、親が蒸発したのか何なのかわかんないんだけどさー、目が覚めたらいなくて、残ってる妹と一緒にどう暮らしていくか考えてるとこ」
すやすや寝ている妹を抱えながらそう言う。達海猛にETU本拠地連れてこられたと思ったら一緒にサッカーできて、ヒャッハーと騒いでいたら、私の記憶では会長とかしていた永田さんとスカウトマンしてた笠野さんが現れてこの会話である。
「家賃滞納してるっぽいし、妹にはちゃんとしたモノ買ってあげたいしなんていうか……就職先探さないとなってなってる。なんかいい就職先ないです?」

そんな話をしたら若手スクールコーチになりました。赤崎くんが生意気なのがとても可愛いので適度に満遍なく可愛がりつつ、ユースに混ざったりする。スパイクとかは達海さんにもらった。ということで、ユースの大会に出たら蓮とハナちゃんがいた。うっわ、若!というかこれは同い年なのだろうか。同じ世代ではあるみたいだが。そんなことを思いながら私が調子乗ってるからハナちゃんからボール奪ってゴール決めたらエッみたいな顔された。ごめんね、ハナちゃん。次の試合は蓮を抜いたら殺す発言されてしまった。ウケる。私はケラケラ笑う。
「殺す発言はないだろー、仲良くしようぜ」
「はぁ?」
「お前知ってる。持田蓮だろ?で、この前の10番が花森圭悟。間違いなくこの世代の天才」
そう言ってからまだ少し私の方が背が高いので私は蓮を見下ろす。
「でも、俺も天才」
したり顔でそう言って手を振れば眼光が増したが気にしないでおく。
「苗字ー、持田に何言ったんだ?」
「お前は天才、でも俺も天才っていった」
「煽るのやめろよな、アイツ怖いんだよ」
「大丈夫大丈夫」
ケラケラ笑いながら前を見る。さて、楽しくやりたいところである。

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「何お前」
妹とメンバーと歩いてたら蓮に絡まれたなう。ナマエー、持田きたぞーと言われてもない。どっから湧いて出たみたいなことを言われてもな。ハナちゃん?ハナちゃんはおろおろしてるなう。
「何って……ETUのユースに最近加わった人」
「それは知ってる」
「まぁまぁ落ち着けって。お前らみたいな名門強豪チーム相手のサッカーが楽しくてちょっとはっちゃけたんだよ。俺はETUユースの苗字ナマエ。お前らは?」
「名前知ってるだろ」
「名乗り合うのが礼儀じゃん」
「……ヴィクトリーユースの持田蓮」
「ま、マリナーズユースの花森圭悟だ……」
「蓮とハナちゃんな!よろしくー!」
そう二人の頭をガシガシ撫でたら速攻で叩かれた。何これめちゃくちゃ笑える。
「誰がよろしくするか」
「じゃあアンダー代表の十番くれ」
「は?」
「十一番でもいいよ」
ケラケラ笑いながらそう言えば二人が怒るので冗談だと言っておいた。あー、面白い。私は目元を拭いながらひらりと手を振った。
「また一緒にサッカーしようぜ」
その言葉に二人はなんとも言えない顔をするのだが。

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「達海さんには海外行ってほしい」
そう言って頬杖をついて彼を見る。なに、急にと言った彼に、いや絶対海外で楽しくやれるでしょ、と言えば彼はなんとも言えない顔をした。
「なんかさー、疲れてそうだったから。アンタの人生って、このクラブのものじゃないじゃん。だからさー、もっと自由に生きていいと思う」
私なんかがいうことではないが。

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代表内定したけど妹を一人にできないから断るかと思っていたら永田一家が面倒見てくれることになって本当にありがたい。私ちゃんと妹の面倒みてるかなら!ちゃっかり保育所も入れれたからラッキーである。そんなこんなで楽しくサッカーする。いやー、面白いなー、この二人の関係。昔は最初から私はいたんだよなぁ。よく挟まれてたっけ。でもなんで今も私を挟む。
「問題児になんでか挟まれる」
お昼前である。一緒に移動していた越後さんと古谷さんにそう呟けば彼は私をみた、
「そういうおまえも問題児だけどな」
「は?越後のいってる意味わからん。俺は清く正しく城西みたいにみんなのお兄ちゃんとして生きてるだろ。あと越後今日も顔がいいな」
「おうありがとな」
慣れたなー、と思う。最初吃ってたのに。古谷さんが口を開く。
「いっつも思うけど、ナマエのそのムーブ何?」
「あまりに越後と岩淵の顔がいいから1日一回は誉めたくならない?」
「いや、普通言わない。女子にも言ってんの?」
「女子には……あんまり言わない方がいいってETUの事務方姉さんに言われたから言わなくしてる。アンタ勘違いされるわよ!!って」
「あー、確かに勘違いするな」
「いや、でもさー、顔がいい子は顔がいいって褒めたくなるし、自分に会うために頑張ってオシャレしてくる子とか慣れない化粧することか超可愛いくない?」
その努力が可愛いのだ、とは元が女だから思うことかもしれないが。越後さんが微妙な顔しながら私をみる。
「お前そのうちストーカーに刺されて死にそうだよな」
「それって今後ろからこっち見てるハナちゃんのことか、それとも最近ホテルの部屋で待ち伏せしてる蓮のことか」
そう言いながら振り返る。ハナちゃんと呼べばおずおずとやってきた彼は可愛い。
「な、なんだ、」
「いや、寂しそうだったからさー」
「そんなことなど、天才のおれには……」
「そうかそうかー、蓮は?」
「あいつのことなんかしらん……」
「シムシムと一緒かな。ハナちゃん一緒に飯食おうぜー」
そう言いながらハナちゃんを連行する。食べると言ってないが、仕方ないから食べるというだろう。

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そこはある意味私が昔焦がれた場所なのだ。性別の関係で並べなかったそこに私は今いて、同じものを目指して同じものを掴もうとしているのだ。私はこの世界でどこまでいけるのだろうか。それがとても楽しみであるのだ。もっともっと上手くなって世界を体感したい。だから相対したいろんな国の人とも仲良くするし、会話をしたりもする。語学なんてなんとかなるものだ。まぁだいたい迎えに来て回収されるのだが。もちろん試合は勝ちもすれば負けもする。そんなことを繰り返していれば、達海さんが海外に行くことになったらしい。ある意味で兄代わりのようだった彼と話せなくなるのは寂しくなるが、でも、きっと彼は戻ってくるのだろう。
「お前は怒らないんだなー」
「まー俺けしかけた側ですしね」
そうケラケラ笑って彼を見上げる。しっかり食べてしっかりと生活するようになったからだいぶ身長は伸びた。
「だって、達海さんの人生は達海さんのものなんですもん。達海さんが選んだ道なら俺は応援しますよ。またサッカーしましょうね」
「さぁなー、できなくなってるかもしれないしなー」
「プレーするだけがサッカーじゃないですよ。プレーするのはとても楽しいですけど。できなくなったら指導者で帰ってきてください」
ははは、と笑う。彼は目を瞬いて、私の頭をくしゃりと撫でた。緩やかに達海さんが笑う。
「頑張れよ」
「うん」
「あんま無茶すんなよー、お前結構無茶するんだからな」
「その言葉蹴り返しますよ」
まぁ、彼は海外で姿をくらましてしまうのであるが。


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「俺の目標は村越さんの結婚式で出し物するのが今の目標だから」
「なんだそれ」
「おっ、いいじゃん」
「丹波さんと石神さんもやろう。何踊る?女装してアイドルソング?」
「まるで地獄絵図だな」
「堺さんをはみごにしないから安心してほしい。ちゃんと堺さんの分の衣装も用意するし」
ケラケラ笑いながらそういえば、堺さんになぐられた。堺さんはツンデレだから仕方がない!
「何騒いでるんだ」
「村越さんの結婚式になんの出し物するか決めてたんですよ。女装してみんなで踊りますね!」

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「あ!!成田さんだ!!」
見つけたその姿に手を振る。何敵に手を振ってんだ、と味方敵双方から怒られたけど知らん。私は成田さん好きだぞ。まぁそんなのを見て蓮がゲラゲラ笑っているが。
「ぶっは!怒られてやんの!そんなに成さん好きならヴィクトリーきたら?」
「いやー、ETUは俺のお家なんでちょっと無理かなー。あと俺行ったらお前控えだから」
「あぁ?な訳ないだろ。俺のほうが上手い」
「お前は確かに上手い。でも俺も上手いから」
「今日はとことん潰す」
「お前イエロー累積で試合出れなくなんぞ」
そうケラケラ笑いながらチームに合流する。
「あ、城西くんと秋森じゃん、お互い頑張ろうぜー」

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「怪我すんなよ」
そう思いながら蓮の足を見る。変われるのならば変わって見せたい。この試合で蓮は怪我をする。海外への道も二の足を踏むことになる。自分に差し伸べられているものと同じものが差し伸べられてるはずなのだ。
「何?急に」
「いや、なんかさ、夢で歳食ったお前が怪我する夢みたから、無理すんなよ。俺はお前たちと世界に食い込みたいんだからな」
そう言って蓮の頭をポンと撫でる。ふん、と鼻をならした蓮にまだこないのかと言うふうにこちらを見たハナちゃんに私は足を踏み出した。

結果として怪我はしなかった。というか、無茶は止めたと言うのか。自分で招いたピンチは自分で覆すしかないから帳消ししたけど。珍しくでかいポカしたなぐらいにしか多分思われてないだろう。隣にいる持田蓮以外は、であるが。見るからに不機嫌だ。まぁそうなるわな。ハナちゃんがチラチラ見てるが知らない。
「俺はさー、お前らとするサッカーがすげえ楽しいわけよ。でも、誰かが怪我して抜けたらそれはなんか違うだろ」
私はあの頃見えなかった景色を見たいのだ。一緒に。
「お前案外俺のこと好きだよなー」
ため息をついて窓に頬杖をついた蓮に私は口を開く。
「そうだよ」
視線がこちらに向くので、私は口端を上げて口を開くのだ。
「このチームで一緒にずっとサッカーしたいと思うくらい、お前らが大好きだよ」
その言葉に周りが一瞬だまって、星野が「なんかたらしがまたほざいてる!」と騒ぐのだが。前の席の古谷さんが口を開く。
「ナマエは絶対そのうち勘違いした奴に刺されると思う」
「お前が女だったら絶対俺は勘違いしてた」
「ときめき与えちゃったかー!悪かったな!俺が男で!」
ケラケラ笑えば前から叩かれたけど。痛い。蓮からは馬鹿じゃねーのという言葉をいただき、モジモジしてるハナちゃんをみる。
「どした?ハナちゃん」
「な、なんでもない……」
「そかそか」
ぽんぽんと頭を撫でておく。はいはい、ハナちゃんは可愛い。

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イギリス行くにしても、妹連れて行けるんだろうか。そう思いながらぐうぐうと寝息を立てる妹をみる。ほっぺを突いても起きない妹にふふっと笑う。鳴ったインターホンに宅配か、と向かう。まぁ、そこにいたの私/俺を置いていった母親なのであるが。金を貸して、お願い、一緒に暮らしましょう。そう言った母親に嫌悪を示す。ちょっと考えるからまた来て、と笑顔で告げて扉を閉める。肯定ととったからか母親は潔く身を引いた。なんでここに。そう思いながら、どうすればいいかわからなくてぐるぐる考える。とりあえず荷物をトランクに詰め込み、鍵を閉め妹の荷物をまとめる。逃げろ、と頭の中で声がした。あの人はまともではないのだと。誰に電話をかけたらいいのか。会長の家族に迷惑はかけれない。監督、だめだ。村越さん、誰かとデートしてるかもしれない。達海さん、イギリスのどこかにいる。五味さん、遠すぎる。そう迷って、迷って、誰か頼れる大人/年上を、と考える。携帯電話のアドレスを探す。みんなダメかもしれない。そうして見つけた番号に電話をかける。数コールのちに出たその人は眠る前だったんだろうか。
「なんだ、苗字。何時だと思ってるんだ」
「成田さん、助けて」
震える声でそう告げる。
「苗字?」
「助けて……」
「……何があった?」
「怖い……どうすればいいかわかんない」
泣くな。まだ。泣くな。そうねんじる。成田さんは「今何処だ!」とわたしに尋ねる。
「俺の家……」
「今から行くから動くな。電話は切るなよ」
そう言って成田さんは歩き出したんだろう。小さく嗚咽をあげる。車を走らせる音がする。しばらくしてやってきたらしい成田さんに扉を開ける。私はしゃがみ込む。
「何があったんだ」
「母さん帰ってきた……」
「は?」
成田さんはそう言った。当たり前の反応だろう。ため息をついて、しゃがんだ彼は私の頭を撫でる。
「家教えてないのにいきなり来た……」
「親なら心配するだろ」
「あの人、まだ中学生だった俺とまだちっちゃい妹おいてどっか行った……金貸して欲しいって……やだ……俺あの人怖いよ。自分の思い通りにならなかったら、殴るんだ……どうしたらいいかわかんない……」
怖い。わたしには覚えがないが、多分暴力を振るわれた。成田さんは動きを止めた。多分トランクが見えたんだろう。そうして、家から出るぞ、と私の手を引く。
「俺はどうなってもいいから、妹だけでも連れてって」
「馬鹿野郎。妹も連れて行くぞ。荷物持っててやるから連れてこい」
そう言った彼にうなずいて妹を抱き上げる。そうして鍵を閉めて成田さんの車に乗り込んだところで私は安堵して泣いたのだが。

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「成田さんすいません。パニックになっちゃって」
そう言いながら目を擦る。久しぶりにがっつり泣いた。いやー、パニックになった。こわっ。ちなみに妹は広いソファでぐうぐう寝ている。
「いや……フロントは事情知ってんのか?」
「一応……」
「明日朝一番に監督やフロントにこのことを話せ、いいな」
「……はい」
ぐしゃぐしゃと頭を撫でられて安堵する。まぁ離れた手を名残惜しげに見たらまたわしゃわしゃ撫でられたけどな。

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「昨日、母親が家に来て」
そう話せば会長が「は?」と声を上げた。というか昔からいるスタッフが声を上げた。
「大丈夫だったのか!?」
「一緒に暮らすとか金貸せとかいってパニックになったから成田さんよんで助けてもらった。小学校行かせて妹になんかあったら嫌だし、今日ここで面倒みていい?あと引っ越し考える」
「構わないが、呼んでくれたらすぐ向かったのに」
「夜遅かったし……達海さんいないし……村越さんにも悪いし」
「成田はいいのか」
「成田さんは……なんだかんだ頼ったら来てくれるし……」
日本の元エースをそんな風にみたいな雰囲気であるが、知らん。会長がちょっと表情を曇らせた。
「いつかはこうなるとは思ったが」
まぁそれでイギリス行ってこいと言う話になるのであるが。いやでも妹……。

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「家族から逃げるのも含まれるというか」
そうぼやけば、昔から私がバイトしつつユースしてたの知っている村越さんがこちらを見た。
「お前の家やっぱりなんかあるのか」
「うーん、ネグレストって言うのか……まーあんまりいい親じゃないと言うか、俺が14くらいの時に両親が出て行っていなくなったというか……でこの前現れて金貸せとか言われて、何されるかわかんないし怖いから」
ちなみにもう自分は歳を重ねているのであれだが、妹の件があるため児相には相談済みである。まー、私が有名になったら現れるとは言われてたが、なんというか、うむ。
「で、成田さんにヘルプだしてその場から逃げて朝一に昔からある意味父親がわりの会長に相談したらゴーサインが出たというか。でも村越さんにも言うべきだよなって思って」
「妹はどうするんだ」
「代理人にも言ってるし、連れてくとは思う。ちゃんと日本語学校見つけてくれたし」
「そうか」
「でも、ETUは俺の家みたいなもんだから、多分ダメならまた戻ってくると思う」
そう言って足元を見る。まぁ無言でわしゃわしゃされたが。

行ってきます、と言って海外に行くんだけどな。

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どちゃくそ楽しいんだけどなにこれ。そう思いながら相棒的なウィルとハイタッチする。いやー、これは楽しいわ。なんやかんや知り合いが多いというかアンダーで仲良くなった上手い奴が覚えてくれていて仲良くしてくれるし。ウィルとは息が合うし。上の世代に相談したら教えてくれるし参考になるし。勝ったり負けたりを繰り返して、とん、とん、とん、とステップアップ中だ。偶に観光客やユースみたいな子と一緒にサッカーしたりもすればフロントに怒られたりもするが。上手い選手見つけてるからいいじゃんって思う。ちなみに妹も馴染めたようで安心しているのだ。
「まぁー、俺もお前くらいの歳の時働きながらユースのサッカーしてたしなぁ」
そう少年にドリンク渡しながら口を開く。
「日本なのに?」
「おー、親がろくでなしっていうか、俺が14ぐらいのときに家から出てったっきり帰って来なくて、こりゃあ妹と餓死すんなーって思ったから働いてた。サッカーする余裕とかなくてさー……でも、ある日街でテレビ見てたらサッカー選手に声かけられて、飯奢ってもらって、クラブハウスで働かせてもらうようになって、サッカー用具もらえて今」
ドリンクの蓋を開けてそうつげる。
「その人は恩人だね」
「そう。でも、何にも俺は返せてないんだよな。だからその代わりに同じような誰かに同じチャンスを渡すのが俺の役目かなとは思う。ま、上手い奴とか才能あるやつとサッカーすると楽しすぎてそんなこと今みたいに関係なくなるんだけどな」
ケラケラ笑って肩を叩く。
「お前上手いから自信持てよ。まー所属する国やチームは違ってもさ、どっかのピッチでは会うだろうし。待ってるからさ、来いよ」
ぐしゃぐしゃと頭を撫でればポカンとされたが知らん。近くにきたウィルがお前またフロントに怒られる云々言うので少年に手を振ってウィルと一緒に帰ったが。
「この人たらしめ。お前俺が目を離すと絶対刺されるぞ」
「なんでお前らそんな認識持つの?」
ちなみにその数年後一緒のチームに来ることになる。ウィルとアルバロの身長高いやつで挟むのやめろ。

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いやこのままイーストハムのチームが順当に勝ち上がると俺たちと当たるじゃん。達海さんいるじゃん!!ひゃっはーー!と思っていたのだが、次にイーストハムが勝てば私たちと当たると思ってたのに負けた。はー??審判どちゃくそプレミア寄りじゃん。
「はーー??あのチームには負けねぇ」
「ナマエあのチームと当たりたかったの?」
「当たりたかった!!達海さんと会えるとおもってた!!サッカー上手くなった俺を見てくれるっておもってた!!」
ギャイギャイ騒いでたらキャプテンしてるウィルに頭叩かれたけど。痛い。
「お前は鎮まれ」
「ウィル酷くない?お前こんなことするから女に振られるんだぞ」
「俺が振ってるし、だいたいがお前のせいだよ」
「辞めろよ責任転嫁」
「お前俺いなきゃいつか絶対勘違いした奴に刺されるぞ」

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「お、お前にはこの花森圭吾がいながら……イギリスで他の男と……な、仲良くするなど、ご、ごんご、どうにゃんだ!」
「なんか俺が浮気したみたいなことなってない?」
そう言いながらケラケラ笑いながらハナちゃんの頭を撫でる。ハナちゃんー!と抱き付けば満更ない顔をするのがはなちゃんは。私は知ってる。通常運転やわーとはアレックの言葉である。桐生さんがケッと毒づきながら口を開いた。
「お前がウィリアム・ジョーゼフと仲良くやってるからだろ」
「ウィルはなんだかんだ俺の保護者だかんな〜。事あるごとにお前が刺されないようにしてるだこっちは!って怒られる」
ケラケラ笑いながら言えば見つけた若手の姿を見てヒラヒラ手を振った。
「知り合いか?」
「いや。日本の知り合いはアンダーの赤崎くらいしかいない。だから、今から仲良しになろうと思って!」
「なっ、お、おまえはまたそんなことをする……!あの時の言葉は嘘だったのか!」
どれだ。でもまぁ嘘ではない。
「うそじゃないよ。ハナちゃんも若手に絡みに行こうぜー」
「い、いやだ……なぜ日本のエースであるおれが……」
「代表にーなったーらー、アジアカップにでーたーらー、とっもだっちひゃくにんでっきるっかな」
ずるずるとハナちゃんを引き摺って若手に近づく。
「あっ、越後と岩淵もいるじゃん!二人とも今日も顔がいいな!」
「おー、ありがとうな。お前はまだ勘違いしたやつに刺されてないんだな」
「かろうじてな!」
ケラケラ笑いながら言えば若手以外が反応した。反応すんな。

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「おーい、ハナちゃん、部ヤー、ばててる暇じゃないぞー」
そう言いながらハナちゃんの手を掴み引っ張る。イヤイヤ期か。というか拗ねてるんだよなー、と思いながらワシワシ頭を撫でる。
「ハナちゃんー、花森圭悟ー、圭悟ー、大丈夫かー?」
「大丈夫じゃない……」
「そうかそうか、ハナちゃんは疲れてるもんな、長旅だったし。でもさ、ハナちゃんは疲れてても凄いんだろ?俺、ハナちゃんが天才って知ってるし、俺は一緒にサッカーしたいな」
「……お、俺もナマエとサッカーしたい……だ、だが、ナマエは若手にら構いすぎだ……折角会えたのに……」
「うん、そかそか。寂しい思いさせてごめんな。今日の夕飯一緒に食べようぜ」
そう言ってハナちゃんをたたせる。まだぐすぐすしている。ちなみに蓮がいたら爆笑してキモいとかずっと言ってるが、電話は蓮の方がしてくるからな。

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「俺が女だったら成田さんと結婚してるから無理」
「は?」
「なんだそれ」
「成田さんはなー、夜中に助けてって言ったら車で来てくれたんだぞ。それだけでめちゃくちゃかっこいいだろ」
「何かあったのか?」
「イギリス行く前なんだけど、ちょっと色々あってパニックみたいになってさー、大人に助けて欲しくて成田さんに電話したら来てくれた。あれは一歩間違えてたら落ちてたね」
後もとより私は結構成田さんが好きである。前というか元の世界でも成田さんに構ってもらってたしな。
「今も連絡してるのか?」
「うん、してる。日本に来たら一緒にご飯食べたりする」

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私を名前は聞いたことあるけど知らないと言った椿くんがめちゃくちゃ揶揄われている。いや、別に知らなければ知らないでいいんだよ。私はケラケラ笑いながら口を開く。
「俺はお前ら知ってるよ」
「えっ」
「ムラはあったけど最近は安定して突破力があるETUの七番の椿、隣の窪田はセカンドボール拾いまくるガンナーズの7番だし、ここぞと言う時に決める清水の19番の大谷、攻撃も防御もきちんとこなす鹿島のやべぇ五番の綿谷だろ。多田はよく会うからもちろん知ってるし。一緒にサッカーやりたいなーって思ったから来てくれてめちゃくちゃ嬉しい!」
そう全員の頭をぐしゃぐしゃ撫でる。
「苗字さん国内リーグみてるんスか?」
「見てる見てる。JF1は全部見てるし海外組とか友達出てる試合は見てる」
そう言えばうわぁみたいにドン引きされたが知らん。
「お前何言ったんだ?」
「越後、今日も顔がいいな!」
「おうありがとな。で?」
「JF1の試合全部見てるし海外組とか友達出てる試合は全部見てるっていった」
「お前初手フックはやめろ。あと代表のやつだけにしないとお前過労死すんぞ」
「楽しいからいいんだよ。代表のやつだけっつっても、日本のサッカー選手には全員チャンスあるんだから全部見るしかないだろ?」
「そうだな」
「まぁ、今回選ばれたのが」
「アヤタカでした」
「そう!大手からでてきた古典的でありながら精鋭、業界の若手なはずなのにエースとして君臨してる綾鷹って何言わせてんだ」
古谷さんを軽く殴る。いやフリだろ?じゃない。
「もー、俺結構真面目に越後と若手と話してたのに!」
「あんま若手に構うとハナがヤキモチ妬くぞ。ただでさえ向こうでジメジメしてる」
「今回は蓮が代表復帰する可能性が高いからいつもよりああなってるだけだからな」
「兄さーん、俺らではあかんわー、拗ねてはるー」
「俺のエースはこんなことですねたりしないから多分10番は蓮だな!!」
そう言えばノロノロと起きあがってめそめそしながらきたが。うーーん、可愛い。

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「ナマエは人たらし」
「人たらしのサッカー馬鹿」
「人たらしのサッカー馬鹿?」
「コミュ力は鬼ですもんね」
「まーな!アイツ昔から遠征行くと目を離したらすぐによその国に声かけに行って仲良くなるからな」
「オリンピックの時も他のチーム団とサッカーしたりしてたしな。結局アイツといると居心地がいいんだよ。アイツ滅多なことでは否定しないし誰であっても褒めるからな」
「めちゃくちゃ誉めてくれるからハナはナマエのそばから動かないんだよ」
「あー、監督がメンタル持ち上げ係っていうのはだからっスか」
「そうそう」
「すぐにお前と一緒にサッカーしたいっていうし。だから多分そのうち勘違いしたやつに刺されるっていうのが俺たちの総意」
「……でもまぁ、アイツが誰かを褒めれるのは結局常にアンテナ張ってるからなんだよ。四六時中サッカーのことしか考えてないタイプだからな。サッカーで嫌なことがあったら、気分転換もサッカー。休みの日もずっとサッカー見てるらしいし。ほとんどが全部がサッカーで回ってるサッカー馬鹿」

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「アルルー!」
「ナマエー!」
見かけたのでハグをする。今回は敵同士だー、今回は敵同士だねー、と歩いてたのだが、危うくウルグアイの方に行きそうになった。危ない。ディエゴが笑いながら背後にいたから。あれ、ナマエなんでまだ着替えてないの?じゃないんだわ。同じチームじゃないから得点決めたときアルバロくんとスタイリッシュアルプス一万尺できないな。くっそー。


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ハナちゃんにやる気がないというかそんな感じなのだがこれはそろそろ自分で気づいた方がいいのでちょっと放置をする。私?私は蓮にワールドカップでまた会おう!って連絡したら若干多分泣いてたから今度会いに行くことにした。絶対だ。そんなこんなで私は無事また青色に選ばれたわけであるのだが、出場時間の制約があるのである。くっそー、私は元気だというのに。
「まー、ハナちゃんは多分蓮が来れなくて意気消沈してるからな。集中してないよ」
「そうなのか?」
「なんかやる気ないよ、今のアイツ。でも自分がおかしいってことは自分で気づいた方がいいから黙ってるけど」


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「そういや妹は元気かい?」
「元気元気。めちゃくちゃ元気です。最近は受験勉強頑張ってて。俺がなんか出来ることは後は勉強の環境整えたり大学の学費出すぐらいですね。後は妹の人生だから過干渉はどうかと思うんですよ。ここまでが俺の良心なんですけど」
「(良心)」
「やっぱり心配なんですよ。留学するとか言ってるし。でもほら過干渉って嫌われるし、妹の自主性も重んじたいんですけどね。今までサッカーと妹の世話だけで世界回ってたから妹が手を離れちゃったら妹のところで何したらいいかもわかんないし」
「のんびりしたらどうだい?君はいささか生き急いでいるみたいに見えるよ」
「うーん……いや俺いつ死んでもおかしくないし」
「人はみんなそうだけどね」
「……フロントが俺にマスコミ規制かけてるっしょ?」
そう言いつつサッカーしてる様子をみる。そうみたいだね、と監督が頷いた。
「あれ、俺がマスコミ好きじゃないのもあるんだけど、両親から逃げるためだったりマスコミが俺のこと探るの辞めさせたりしてるんですよね」
「両親から?」
「そ。昔妹と一緒に置いていかれてさー、15くらいの時にひもじくて死ぬかと思って勉強するの働くことにして、まぁ色々良い人に助けられて今なんですけどね。代表になって名前が売れた瞬間、教えてもないのに親が家に来ちゃって。一緒に暮らしたいだの金貸せだのいうし、このまま行くと母親に殺されるなって思ったからイギリスに逃げてきたんですよ。流石に金無かったらイギリスまで来れないでしょ?」
「そうだね、だから君はあんまり日本で召集してもこないのか」
「そう。まぁ、俺が死んでも妹とユニセフに金行くようにしてるから親にお金は行かないんすけどね〜」
「それにしても、君からそういう話ははじめてきいたよ。いつも他の人についてしか話さないだろう?それだけ僕が信頼されたって言うことで良いのかな?」
「うーん、信頼は元からしてる。監督は妹のことで色々相談乗ってもらえたし、言っとこうとおもって。ねぇ、次は蓮も連れてきて」
「いくら君からのお願いでも、それはちょっと保証できないかな〜。だって僕持田嫌いだし」
「うるせー、監督の癖に才能ある人を好き嫌いしてるんじゃない」
ケラケラ笑いながら監督の足をべしべしする。
「呼んだら君に10番渡すけど」
「いやだ、俺は7番がいい」

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「椿」
ピッチに入って椿くんを呼ぶ。反応しない椿くんの肩を叩きこちらに向かせる。うーん、ひどい顔である。
「大介、大丈夫だ。俺がいる。全部俺に任せてしまえ。全部俺にボールを向ける。なんとかしてやるから」
ぽんぽんと背中を叩いて前を見る。さー、ショータイムである。周りは、私を、見ろ。
「ハナ、行くぞ」

==

これ前負けてなかったっけ?と思ったのはPK戦にもつれ込み決めるシュートを打ったあとである。イエーイと騒いでいる周りに潰されながらである。まぁ勝ってしまったことは仕方ない。後は椿くんのメンタルの問題だろう。
「ナマエ?」
「うーーん、ハナちゃん俺椿くん構っていい?というか一緒にかまいに行こうぜ」
「む……」


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「……。……十年前くらいのさー、ワールドカップ予選でさー。1-1の時にさー俺が相手に誘われてファールしちゃったんだよね」
「は?」
「いやー、PKになってあのまま負けたら俺絶対非難轟々だわって思ったんだけど、成田さんと五味さんが得点きめてくれて延長で勝った。他にもETUいた時は今ほどじゃなかったし、ミスって敵のアシストして村越さんに助けてもらったりもした。まーそんなことあの人らの人生の中でも多々ある場面のうちの一つだから本人達覚えてないと思うけど」
「は、はぁ」
「それがめちゃくちゃカッコいいと思ったし、俺もそうでありたいと思った。だからああしただけ。それだけの話。だからこの話はおしまい」
そう言ってお立ち台のような場所を後にする。はっとしたインタビュアーはまたマイクを向ける。
「最後に一言!」
「窪田くん、また一緒にサッカーやろう!」
ひらひらと手を振って今度こそそこから立ち去る。あんまりマスコミと話したくないから時間制限あるのありがたいのだが。ちなみに蓮から浮気?と言われたが知らん。俺がいたら楽に勝てたは賛成なので頷いておいた。


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メンタルが沈んでいる上にちょっと足に無理があったのか、まぁ戦線離脱になる可能性はでかいだろうが。とりあえずハグしてよしよししたらグスグスしたので「泣いていいよ」と言っておく。あとハナちゃん達が心配そうにこちらを見ているが、とりあえず大丈夫だと手をひらひらしといたら城西さんに回収されてた。
「大丈夫大丈夫、俺達は味方だから。嫌いにならないよ」



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優勝してしまった。いや嬉しいし、普通に苦戦した上で勝ったのだが前だと四位じゃなかっただろうか。椿くんの成長云々に関わらないだろうか。まー、やってしまったのは仕方ないが。いちいち見送りに来たイシュマールは可愛い奴なのである。
「イシュマール、今度は美味しいご飯や連れてってくれよ」
「……わかった」
「じゃあまたな。一緒にサッカーしような」
そう頭をぽんぽん撫でればちょっと照れながら頷く。変わらないんだよなぁと思いながら手をひらひら振ってから日本代表に合流する。
「な、ナマエ、何故だ……何故あいつと仲良くする!」
「昔あいつがスクールだったかなんかの時に一緒にサッカーしたんだよ」
「でた、ナマエの現地妻だ」
「その言い方やめてほしい……」
「ナマエいつ日本に帰ってくるんだ?」
「んーー妹が日本の大学も志望してるし多分受験のために帰る。達海さんがいるし、蓮と話したいし」
「だ、だめだ、持田とあうなんて駄目だ……!」
「なんで。ハナちゃんは毎年なんやかんや会ってるだろ。成田さんや五味さんとも飯行きたいし、蓮とも飯に行く」
「うう……」
「……ハナちゃんも来る?」
「だ、だれが……あいつの見舞い何か……」
しょんぼりしているハナちゃんの頭をぐしゃぐしゃしておく。まあ途中まで一緒に帰るからあれだろう。

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「なんでこうなってるんだ……??」
たくさんハテナを浮かべながらそう告げる。いや、妹受験で日本帰るとは言ったし成田さんや五味さん達とご飯に行くも言った。でもテレビ出るとは言ってないし、日本代表vs国内選抜するとも聞いてないし、ウィルとユーゴがついてくるとも聞いていない。いや、テレビもまだサッカードッキリみたいな感じだからいいんだけど。?をたくさん浮かべながら食事の席に座る。ヨーロッパ組と一緒に飲もうという話になり、日本に帰る前にご飯を食べている。いやでも日本でも顔合わせするなこいつら。
「ナマエが目に見えて混乱してる」
「大丈夫か」
「いや、えっ、わりかしわかんない。俺妹の受験関連のために日本に戻るんだけど、試合とかテレビ番組とか色々聞いてない。えっ、もしかして俺フロントとか代理人とか妹とかウィルの策略にはまった?」
「多分はまってんなぁ、それ」
そう言ったアレックに私はがっくりと項垂れる。だよな〜。
「ETUに顔だそうと思ってたのにな〜、先に試合で会っちゃう可能性のが高いもんな〜」
「誰だ?椿か?」
「椿くんはたまにラインしてるから違う。達海さん。俺あの人いなきゃサッカーしてないどころか死んでたか保護処分されてる身だかんな」
「初耳がすぎる」
「そうだっけ?まぁ自分で言っといてなんだけど俺も結構シンデレラだし、その魔法使いが達海さんだったんだよ。そのあと今の永田会長達にはめちゃくちゃお世話になったし……」
そう言いつつ野菜をモリモリ食べていれば桐生に肉をよこされる。わかりづらい優しさである。
「じゃあ兄さんいつか古巣に戻んの?」
「んーー、それはわかんね。向こうでサッカー人生いきなり終わるかもだしな〜。でもあそこは俺の実家だから、いつか帰る場所はあそこ。またETUでスクールコーチとか広報してもいいしなぁ。子供の面倒見るの好きだし」
「いやお前多分イギリスが離さないだろ。ETUのコーチじゃなくて多分イギリスでコーチするんじゃないか?」
「えー……まぁこの前成田さんにお前引退視野入れてんのかって聞かれた時に成田さんやケン様の年でも現役やってるしなって考えない?場所選ばなかったらいつまでもサッカー選手ができる」


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そろそろ色々考えなきゃならない。妹もこのまま順当に行けば大学生になって日本で一人暮らしをする。あと四年、もしくは六年学費を払ってしまえば私にできることは極端に少なくなるだろう。試験に向かう妹に頑張れと両手を持って告げ、見送る。明後日のオールスター戦のようなものを皮切りにテレビなどの出演があるらしいとは聞いているが、それがあまり乗り気じゃないのも含まれるだろう。適当にうろつくか、自分と他競技の友人、そして他のスタッフで作り上げた場所にいくか。いやでもそこは別日に行く話になってるしなー、とうろちょろしていれば、公園で子供がサッカーをしているのが見えて足を止める。ギャラリーいるし近くかなー、と思えば親子大会みたいなものだったらしい。親と子供がキャアキャアと楽しそうに歓声をあげていた。両親。もしくは片親。多くの人に当たり前にいるもの。『昔』の私かなはいて、今の自分にはないものである。ぼんやりと眺めていれば、ポツンと子供がその試合を見ているのが見える。少しボロボロだがサッカーができる格好をしているのにも関わらず、試合に入れていないのを見ると恐らくは彼の両親は来ていないのだろう。はた、とあった目に彼はこちらにやってくる。おや?と思っていれば、あの、と緊張したようにこちらを見上げた。
「あの、お兄さん、誰かの」
「いーや、久しぶりに日本に帰ってきたんだけどさ、サッカーやってんな〜と思って眺めてただけ」
そう言って目線を合わせて屈む。靴が今にも敗れそうだ。なおかつ、靴のサイズが合ってない。少年は目をぎゅっと瞑った。
「あの、じゃあ、」
「いいよ。でもその前に今何センチの靴履いてる?」
「えっ23センチです……」
「5分だけ待ってて」
そう少年の頭を撫でて確か向いあたりにスポーツショップがあったなとそちらに向かう。そこでサイズ違いの靴を買い、そのまま戻った。きちんと待ってる少年はえらい。
「履いてみて」
「えっ、でも」
「いいのいいの、俺が好きでやってることだしね」
おずおずと、ちょっと嬉しそうに靴を履いた少年に「どう?」と聞く。丁度です!と言った彼に足を触っていいか聞いてから靴を触る。
「うん、過不足ないな。あれ参加するんだよな?君の名前は?」
「大河です。佐原大河」
「ok、大河。俺は……ナマエ。いざ行こうぜ」
そう拳を突き出せば彼もまた拳を突き出す。そのまま彼に手を引かれてそのままこの大会を指揮してる人の元に向かう。大河?とちょっと困ったようにした人物に、俺が一緒に参加します、といえば目を瞬かれたが。
「えっ、と、」
「あ、もしかして肉親以外ダメな感じですか?じゃー今から俺大河のお兄ちゃんだから、お兄ちゃんって呼んだらいいよ」
「……お兄ちゃんです」
「大河のお兄ちゃんです」
そういえば折れたらしい。わかったよ、と言った彼らに大河は嬉しそうにした。
「大河ー!誰だそいつー!」
「俺?大河のお兄ちゃん。よろしくなー」
「うそつけー!ぼろ大河ににいちゃんなんているわけないだろ!」
「かぞくいないもんなー!」
「お兄ちゃん普段海外にいるから大河に会えないんだー、今帰ってきたとこ」
信憑性のある嘘なのだが、納得したらしい。周りの大人が疑わしい目で見てるが知らないふりである。大河の頭をガシガシ撫でてから頑張るぞー!と言えば彼は嬉しそうに笑ったのだが。

うーん、歳のわりに大河くん上手いな。そう思いながらボールを回す。あとはあんまり贔屓にならないように子供や保護者にパスをまわしたり相手にもボールを取らせたりもする。ゴールを決めた大河を持ち上げてくるくるしたりもする。みんなでワイワイしてたら交代してさがる。いやー、こういうのも楽しいな。
「大河のにいちゃんスゲー!サッカーうまい!」
「だから大河も上手いのか!」
「俺が上手いのと大河がサッカーうまいのは別。大河がうまいのは大河がサッカー頑張ってる証拠。というか、君たちもめちゃくちゃ上手じゃん」
右からとか左からとか子供にわかりやすいように褒める。だろー!とすぐに自信につながるのが良い。私は大河にあわせて屈む。
「大河もすごいと思うぜ。めちゃくちゃ上手い。才能あるよ、お前」
そうぽんぽんと頭を撫でていれば、大河のにいちゃん一人対俺らなとかいう無茶振りをされるのだが。
「あっはっは!それいいな!でも流石の俺でも厳しーかなー」
「じゃあ大河もそっちでいいよ」
「どーしよっかなぁ」
ケラケラ笑ってギャラリーを見てたら見知った顔を見つけたのでひらりと手を振れば固まった。
「よし!兄ちゃんの知り合い見つけたから連れてくるし、その人含んだらいいよ」
「誰?」
「ちょっと待ってな」
そう言ってそちらに近づく。まぁそこにいた椿くんを引っ掴む。
「よーし大河ーお前らー俺の味方増えたぞー。集団でかかってこーい」
ずるずると椿くんを引きずる。えっ!?えっ!?何事!?と叫ぶ椿くんに口を開く。
「何事って、見てたらわかったろ。みんなでサッカーしてるんだよ」
「えっ」
「子供対俺一人は流石に無理だしさー、みんな楽しそうだしいいだろ?難しく考えないで軽くやったらいいよ」
自分が被っていたキャップを被せてそのまま向かう。椿くん変装もなく出歩く派なのね。
「大河はこっちねー、あと一人くらい人がほしいな。誰か俺たちの味方になってくれる人ー?」
そう聞いたら様子見てた幼女が手をあげた。うーん、可愛い。
「おっ、いいねいいね、おいでおいで」
「ずるーい!おれもやる!」
「お、そのやる気負けん気いいね!おいで!」
と言いつつ結構上級生vs下級生っぽいやつだ。他の保護者載ってくれるかと思ったらそうでもなかった。まー、応援も楽しいよな。

小さな子に合わせてプレーしたり、わざと子供に取られたり、大河にシュートを決めさせたりする。椿くんもそれに倣ってそういうプレーをしたが楽しくなってきたらしい。転倒して泣いたちっちゃい子を抱き上げて、ぽんぽんする。ちっちゃい子を抱えたままボールを処理をする。多分もうすぐ時間だろうら、
「よっし!ハンデ追加したから勘弁な!」
向かってきた子供をひらりひらりと交わし、そのまま威力を緩めた回転シュートをうつ。キーパーの子が取れるか取れないか微妙なラインだったが手をかすめてネットを揺らした。うーん、反応がいいなあの子。鳴った笛に子供が一斉に群がる。何今のーー!と騒ぐ周りに椿くんもくる。俺はケラケラ笑いながら俺の服を握りしめて離さない子供を抱えたまま、よーし整列ーと声をかければ整列した。うーんいい子。俺は椿くんを手招き、帽子を外した瞬間周りがポカンとした。一瞬の静寂、のちに「ETUの椿だーーー!」と叫ぶ子供が可愛い。俺もサングラスを外せば、こちらを見上げて子供は口を開く。いやー、大河もポカンとしてるしな。大人も固まってるしな!
「マンチェスターの苗字選手だーー!!」
「よーす」
そこからは大人子供合わせてある意味阿鼻叫喚である。まぁ、俺に抱きついたまま離れないちみっ子を親に返したりサインしたり一緒に写真撮ったりもしたが。そうしてようやく落ち着いたそこで、飲み会に行く途中だった椿に改めてお礼を言い、こちらの様子を伺っていた監督や指示をしていた人の元に向かう。
「まさか貴方達のような人が参加してもらえるとは」
「たまたまです。日本に帰ってきていて、ぶらぶらしてたらサッカーやってんなー、と思ってみてたら寂しそうな大河を見つけたので」
「やはり、そうだったんですか」
「やっぱり何かあるんですか?」
「えぇ、大河の両親はあまり家にはいないようで……」
「ネグレスト疑惑でも?」
そう尋ねたら二人が神妙な顔で頷いた。俺はやっぱりかーと言いながらあたまをかいた。
「やっぱり?」
「大河、靴のサイズあってなかったし服もあんなんだし親の関心が薄いから親がその余裕がないかどっちかだろうなって思ってみてたんですよね。でもそっか……んー……大河の親って大河に勝手に物あげたら怒ったり売ったりするタイプかな……つーかあいつ飯食べれてるのかな……そういや、このクラブって中学上がったらどうなるんだ?」
「みんな地元の中学のサッカー部だったりに行きますね」
「ふーん、そうなんだ。ユースとかの試験受ける人少ないのか」
「まぁ難しいですからね」
「俺的には大河とゴールキーパーしてた真中くんだっけ。あの二人頭ひとつ分以上上手いからチャレンジしてみていいと思うんだよなぁ。緩くしたとは言え最後のシュート反応したし」
「大河と凛都に目をつけるあたり流石ですね!あの二人特に上手いんですよ!」
「へぇ、凛都っていうのか。凛都ー」
そう呼べば親と一緒にいた凛都が反応する。こちらに寄ってきた凛都にまだ時間ある?と聞けば頷かれたのでよしよしと思う。サッカーボールを鷲掴み、監督をみた。
「このグラウンドってもうちょいつかえます?」
「ええ、大丈夫です」
「よーし、大河ー」
そう呼べば様子を伺っていた大河もやってくる。
「じゃあお前らチームな。俺適当に力抜いてやるし、お前らで頑張れ」
二人の頭をぽんぽんしてゴール前に向かう。うむうむ、楽しいな。


「やっぱり反応いいな〜」
そう言いつつボールを回収する。そろそろ妹の試験も終わるだろう。
「いやー、君たちやっぱり上手いよ。目安として、なんだけどな。中学生の体の捌き方ってだいたいあんな感じなんだよ、確か。シュートに関しては高校であれくらいだっけか。それに反応できてるんだから二人とも凄いよ」
そう褒めつつ保護者と監督に合流する。
「その道というか、サッカーもっと上手くなりたいならユースとかの試験受けてもいいと俺は思う。中学の部活が悪いわけじゃないし、そこにいても上手くなる。強豪の高校の監督目をつけられたらそのまま強豪校いけるだろうしな。でも、ユースってスクールの中で上手い奴が上がってくる場所だから今のプレーの質を落とさずに君たちの次のステップに上がれると思うんだ」
そこまで言って、少し考える。これで天狗になっても困る。
「でも、なんていうか、ユースレベルになると君たちのレベルって結構いるんだよ。でもソイツらと競いあったらもっと上手くなる。別にこの地区で1番ってなってもそれはそれで楽しいとは思うけど。試験を受けてみるだけでもいいよ。世界って広いから今いる世界だけじゃないって思うのは大事なことだと思うし」
「ユースって何?」
「あー、そっからか。プロクラブチームの下部組織みたいなもんだな。ここから1番近いのはETUとヴィクトリーのユース。スクールっていうのはETUとかヴィクトリーとかのスクール」
「でも通常ユースは持ち上がりですよね?」
「ヴィクトリーとETUと鹿島に至っては俺の紹介枠が若干あるんですよ。なんか俺が受けてみたらって誘ったやつがみんな結構いい線行ったりするらしくて。でも落ちるやつは落ちる」
「受けてみるか?」
そう伺った凛都父に凛都が二つ返事である。よしよし。大河はどうする?と聞けば、大河は下を向いたままだ。私は屈んで彼の手をとった。
「大河、お前がどうしたいかだよ。他のことなんて、子供が気にすることじゃない」
「……」
「……大河、俺はさー、昔、お前みたいだったんだよね」
「えっ?」
「お前見たいっていうのはお前の人生知らないから変な話だけどさ。まーもとより不在がちだったんだけどな、俺がお前よりちょっと歳重ねたくらいに完璧に母親帰って来なくなってさー。家に妹と俺だけ。あわや水道止められる寸前。なんとか妹と食っていかなきゃいけないから、もちろん高校も行けないしサッカーなんてできなかったのね」
そう言いつつ目を伏せる。
「その日暮らしでバイトとか手伝いさがしてさー、ある日、たまたま街角でサッカー選手に会って話しかけて飯奢ってもらったの。その人とサッカーできて、その人にユースの試験受けてみたら?って言われてユースの試験ねじ込まれて色々あって……んで、今の俺がいるわけよ」
目を開いて彼をまっすぐにみる。
「サッカーは別に金持ちのスポーツじゃないよ。誰にだって楽しむ権利もあって、当たり前だけどプロになる権利もある。ただ、そのチャンスっていうのが俺たちみたいな奴には普通の家庭に比べてかなり少ない。だから、そのチャンスを物にできるか否かっていうのは人生左右するほどでかい」
ぽんぽんと頭を撫でて立ち上がる。
「その話を踏まえてどうする?」
「……受けてみたい。俺、もっとうまくなりたい!」
「よーし!よく言った!ちょっと待ってろ、知り合いに諸々連絡するから」
そう言って電話をかける。ヴィクトリーとETUの人に問い合わせたら、ヴィクトリーの試験は今日だったらしい。うーん、タイミングだ。ETUは二枠作ると言ってくれたのでそちらになりそうだ。なんでも急に転校になってしまう子がいて枠が空いたらしい。
「持田がいるヴィクトリーの方は今日試験だったから無理だけど、ETUは明日みたい。明日いける?」
「行ける!」
「俺も大丈夫です」
「よしよし、じゃあ明日待ち合わせて一緒に行こう。どうせ明日も妹試験で俺やることないからETU覗こうと思ってたんだよ」
そう二人の頭をぽんぽん撫でる。喜ぶ二人は可愛らしいというか、なんというか。

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とりあえず凛都にグローブをプレゼントして別れ、大河に逃げてきたりただでご飯を食べたりできるシェルター的な場所を紹介する。ぱっと見スポーツジムのようであるし、中には一応ジム施設やホテルのような場所、勉強できる場所がある。
「ここに大河のスパイク預けとくし、サイズ変わったら取りに来なよ。あと、何か嫌なことがあったらここの人に相談すること。いいな?」
「うん」
「じゃあ明日迎えに行くから、家まで送るよ」
「えっ、でも……」
「いいのいいの」


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「好きにすればって言っても、俺が連れて行ってしまうと誘拐だなんだって話になるわけなんです。あと子供に邪魔だとか言わないで」
そう彼の親に言う。この人どっちかっていうとノイローゼ気味ではなかろうか。多分、誰かに助けを求めたくてもそうはできない形だったんだろう。生活にいっぱいいっぱいで、どうすることもできないような。
「あのね、お母さん。お母さんが辛いなら、誰かに助けてって言うべきです。俺はこの子に他の子と同じチャンスを掴んで欲しいとか色々思うけど、お母さんにも幸せになって欲しいよ」
そうぽんぽんと背中をさする。最初はヒステリックにしていた彼女もだいぶ落ち着いてきたらしい。目線を合わせて口を開く。
「ずっと一人で育てて大変だったんだよね?お母さんも人間だし、自分のことで精一杯だし、しんどいもんな。今までよく頑張ったね。凄いしえらいよ。一人でここまでって凄いことだよ」
そうあやしていたら号泣されてしまった。うんうん、と背中をさする。大河がオロオロとしていたので、大河の手を握った。
「じゃあさ、こうしよう。お母さんは今日から一週間おやすみ。おしゃれしたり、買い物行ったり、美味しいものを食べに行ったりしたらいいよ。その間俺が大河のお兄ちゃんとして面倒みてるし。あ、そうだ、大河のお母さんもうご飯食べた?まだならご飯食べに行こう。他人の作る飯はうまいしな」
ケラケラ笑いながらそう言って、ゆっくりまた来た道を戻る。実は向かい側には親支援のNPOがありカフェを作って相談に乗っているのだ。少し離れた場所にはなるが、女性用の似たようなホテルもある。ちなみにイギリスではキリスト教けいとうなのだが、この国のは宗教色はない。お互いが幸せになるのが1番だから、とは私は思いつかなかったことである。私は今の親は許せないからだ。でも、だ。恐らく救いの手があればそれも変わったのかもしれない。お洒落なカフェの扉を開ければ視線がむく。
「よぎねぇ……じゃなくて、柊さんいますか?」
「柊さん、お客さんですよ」
「苗字くんじゃない!!日本帰ってきたの!?」
「帰ってきた。明後日試合だし。ほらほら、大河の母さんも入って」
そう促せば彼女はおずおずとはいってきた。それで合点がいったらしい。あらあらまぁまぁと言わんばかりにやってきて、大変だったわね!と彼女の目線に合わせてかがんだ。
「たくさんお話ししましょう。愚痴だってなんでもいいのよ。美味しいご飯を食べながら、ね?」
そう背中をさすられてまた彼女は泣きそうに顔を歪めた。お母さんは任せて、ということなので、私はずっとオロオロする大河と話すとする。目線をあわせて、大河も悪くないんだよ、と。
「大河も大河のお母さんも悪くないんだよ。ただ、大河のお母さんはちょっと疲れてただけみたい。大河はしばらく俺と一緒でもうちょっと頑張れそう?」
「……うん」
「そかそか、ちょっと待ってな」
そう言いつつスマホを確認する。試験無事に終わったし斗真さんにご飯連れて行ってもらいます、とのことだ。とりあえず電話をかける。
「もしもーし」
「なに?お兄ちゃん」
「いや、試験どうだったの?」
「ウィルママの教えが超良かったから完璧だと思う!苦手科目もクリアしたし!」
「そかそか、良かった」
「安心した」
「うん。安心したし、やっぱりお前はすごいなって思った」
「ふふーん、褒めても何も出ません。夜にはホテル行くね。駅前だよね?」
「うんそうそう、いつもの。あー、あと」
「弟妹どっち?」
「弟。明日も遊びにいくんだろ?」



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