2021/12/30

2021年オフラインネタ帳大放出祭14




パチリと目を開いた時、目に映ったのはボロボロ泣く女の子である。にーに、にーに、と拙い言葉で一生懸命私の体をゆする彼女に私はゆっくりと彼女に手を伸ばす。目に映ったのは自分の手ではないし、どうしたの、と紡いだ声は私の声ではない。なんだ、夢か、と思ったがズキズキと痛む頭がそれを否定する。ゆっくり起き上がり、痛いところに触れれば血は止まっているようである。そして、視界に映ったのはーー。
「……は?」
ーー一面のゴミである。


いくつか理解したことがある。苗字名前は同じであるが、どう見ても私は15歳の男の子になっていた。周りをガサゴソあさり、妹であろう子供の名前も判明する。で、ゴミ屋敷は多分家だ。幸いまだガスと水道は止められていない。中学にはまともに通っておらず、母親や父親の帰りを何日かまってみたが帰ってこないのを見るにネグレストだかなんだかいうことなんだろう。金目のものを漁ってもなさそうである。ということは、妹と食べていこうと思うと私が働くしかないのではなかろうか、と気づきバイトを探すことにする。アパートの家賃、ガス水道代、食費、妹や自分の必需品。サッカーをする余裕なでなさそうである。とりあえず家は全面的に掃除した。頭文字Gから逃げるオンナじゃなくて良かったと心の底からおもったのは閑話休題だろう。しっかし、中卒で働ける内容ってなんだ。とりあえず妹を抱き上げて近くの商店街に向かう。こういう活動したことないからわからないが、多分履歴書買わないと始まらない気がする。


「ここで働かせてください。広報のバイト、クラブハウスの清掃、食堂の調理、なんでもやるので!」
身なりを簡素に整えて、そう頭をさげる。妹は大家さんが面倒見てくれることになった。いや、ETUで働くのは将来的にか?みたいな和やかな話ではなく。
「いや、俺が働かないと家族が食っていけないのでガチで働かせてください」
そう言って頭を下げたままキープする。いや、サッカーできないのならせめてサッカーに近い場所で働きたい。こういう時、多分ヴィクトリーよりETUの方が雇ってもらえそうな気がするのだ。まぁ詳しい話は別室で聞こうかと会議室っぽい場所に案内されたのだが。

「年は?」
「今年で16です」
「高校生か?」
「いえ、高校に行ってません。そんな余裕なんてないです」
そう言いつつGMの笠野さんをじっと見る。この人スカウトだった気がするんだけどな。あと、広報部長が会長の気がする。
「どうせこの年から働くなら、好きなことに関わることで働きたいんです」
それくらいの楽しみはあって欲しいのだ。だからお願いします、と頭をもう一度下げる。
「サッカーが好きなのか?」
「はい、とても」
「どこのチームが好きなんだ?」
「JFは全部好きですけど、ETU好きです」
そう言って目についた選手の長所だとか印象的だったプレーをあげていく。
「あとは……」
「なんの話してんの?」
ひょっこりと窓から顔を出したのは達海選手である。こら達海、と軽く叱った広報部長に後藤選手が達海選手の首根っこを掴んだ。未だに顔を出している彼は私を見た。わー、若い!
「誰そいつ。新しく来るやつ?それともユース?」
「いや、クラブハウスで働きたいそうだ」
「えっ?その歳で?」
「あぁ、だから話を聞いてる」
「ふぅん。雇ったらいいじゃん」
「簡単にいうがなぁ」
やっぱりそうだよなぁと思いながらちょっとしょげる。いや、新聞配達とかでもいいんだけど。体は流石に売りたくない。
「その歳なら部活とかでサッカーはしないのか?」
「いや、スパイク買うお金もサッカーボール買うお金も無いんですよ。もちろん、ユースやクラブに入るお金もないし高校いってないですし」
苦笑いしながら言った私の言葉に後藤さん達が固まった。まぁ、後藤さんがいうのは多くの人に当たり前だ。気にしないでほしい。
「でもまぁ生活に余裕ができたらなんとでもできるんで」
「ちょっと待ってな」
笠野さんと広報部長が席を外す。達海さんがこちらをみおろした。
「せっかくだし、ボール蹴って待っとく?」
「え!いいんですか!」
「練習終わったしな」
「やったー!」
手巻いた達海さんに続く。かっさんには後藤話しといてと言ってたので私は軽く頭を下げる。スパイクないって言ってたらちょうど買い替えるとこだったしとかいって達海さんくれたしこの人神様ではないだろうか。とんとんと靴紐を結び、グラウンドに足を踏み入れる。飛んできたボールを受けて、彼に渡す。それを繰り返したのちにゴールの連携とかになるんだけどな。やっぱりサッカーをプレイするのは楽しい、とボールをとめて見つめる。でも、我慢するべきなのだ。
「どうした?」
「いやー、フットボールやっぱり楽しいなって思って」
最高の仕事してる選手たちが羨ましいです、とケラケラ笑いながら言えば彼は目を見開いたのだが。まぁそのあとすぐに広報部長と笠野gmが来てバイトとして雇ってもらえることになった。よし、とりあえずこれで少しは余裕できるはずだ。職が決まったことにホッと安心して息を吐く。よかったよかった。

==

妹を家に一人にするのはどうかと思うので、大家さんに相談したら近所のお寺が預かり保育してるらしい。うーーん、金がかかるが仕方ない。稼ぐしかない。激安スーパーで食品は買うし、自分のものを節約したらいけるだろう。と、広報のバイトしたり臨時で食堂のバイトしたりする。本屋で学資保険の記事を申し訳ないが立ち読みし妹にどれくらいお金がかかるか算出し、妹の絵本を激専して買う。たまに広報手伝いで遠征連れて行ってくれるのめちゃくちゃ嬉しい。
でもたまに「同い年」くらいが楽しそうにサッカーやってるのを見るとひどく羨ましくなる。あんまり見ないようにしていが、今日は他のチームがきてるということは多分練習試合か何かなんだろう。うーん、ダメだなとほおを叩き、クラブハウスに向かう。その途中でくんと腕を引かれて振り返れる。そこにいたのは蓮である。じっとこちらを見た「同い年」くらいの蓮は私を見て微かに目を見開いた。
「ナマエ?」
「ん……ん??」
これは混乱である。嫌だってこれ「俺」が蓮と知り合いなのか、そもそも「私」みたいな状態なのかが理解しかねるからだ。不機嫌そうな顔をした彼は口を開く。
「お前何やってんの?」
「クラブハウスで働いてる」
「はぁ?お前今何歳よ。同い年じゃねーの?」
そこで納得する。こいつは私みたいな状態の蓮だ。いやぁ、と頭をかく。
「今年で16だけどさー、親がネグレスト?だかなんだかで妹と私おいて帰ってこないんだよね。私が働くしかなくない?」
そう言った瞬間めちゃくちゃ眉間にシワを寄せた。ふざけてんな、と言った彼にふざけてるよな、と私は頷く。というか、蓮の掴む力強くて痛い。
「蓮、痛いよ」
「こっち」
「いや、私仕事あるし……」
ずるずると引きずられる。おーい、話を聞け。そのままユースがたくさんいるそこにたどりつく。ETUのユースのコーチが私をみた。
「あれ、苗字さん永田部長が探してたよ」
「ヴィクトリーの持田君が離してくれないんですよ」
「持田ー、何やってんだ」
「監督、コイツ入れて」
今日も王様な片割れはすぐ無茶振りしよる。大人が困った顔をしてる。は?みたいな顔した周りに、誰それより上手いからとか言わんで欲しい。私はケラケラしながら口を開く。
「蓮ー、大人を困らせない。俺選手登録も年会費もなんも払ってないから」
「うるさい、お前は黙ってろ」
「蓮、落ち着けって。俺は今サッカーしてる余裕なんてないよ」
「お前の都合なんか知るかよ」
これには私もカチンときた。いやいやいや。
「お前は俺たちとサッカーしたくないの」
「……やりたいけどできねぇの!生活かかってんだから仕方ないだろ!」
そう言って怒る。いやー、これには私もおこである。まだたった半年だっいうのに結構ストレスかかってんな私。
「仕方ないだろ!俺が色々我慢して働かなきゃ妹が死ぬんだよ!全人類お前の家みたいだとは思うなよ!俺も!サッカーしたいの!将来サッカーする為に今頑張って働いてんの!」
「はぁ?将来サッカーするなら尚更今やらなきゃ無理だろうが!!お前は俺たちと世界行きたくないわけ!?」
「行きたいに決まってんだろ!馬鹿蓮!俺様!お前たちと同じ青着たいに決まってんじゃん!」
ギャンギャンと吠え合いである。いやー、落ち着けってわかってんだけどな。いやー、ストレス溜まってんな私。
「や、やめろ、二人とも、みっともない……持田もナマエも落ち着け……」
「あぁ!?」
「はぁ!?」
割り込んだ人物をみる。うーん、ハナちゃんである。びっくりさせてしまった。ひっ、と怯えたハナちゃんに息を吐く。
「……ちょっと待ってな、ハナちゃん。クールダウンするから十秒待ってな……」
そう言って目を瞑る。数秒カウントして、ため息で怒りを逃す。
「ごめん、ハナちゃん。怖がらせた」
「……いや……」
「ごめん、蓮ちょっといろいろストレス溜まってたっぽい」
胸ぐら掴んでた手を離す。まだ向こうは眉間に皺寄せられているが。ガツンと頭突き食らった。いたい。
「ナマエ、大丈夫なのか……」
「大丈夫……ハナちゃんは相変わらず優しいなぁ。誰かと違って」
「はっ、俺も優しいだろ」
「でたよ俺様」
はーやれやれと息を吐く。
「じゃ、俺仕事あるし」
「……待て、ナマエ、待て。今の話が本当なら然るべき機関に相談するべきだ」
「いや、相談したところで母親か父親が帰ってきたら終わる話だしな」
「苗字」
後ろからガシリと確保される。なんだ!?と振り返れば、笠野さんと広報部長である。やっべー。ヤクザに囲まれる気分である。
「苗字、色々初耳なわけだが?」
「お前家族が病気で働けないって思ってだけど違うのか?」
「いやー、あっははは」
「はっきり話せ」
うーん目線に合わせて屈むあたりこの人らいい人なんだよな。
「いや、うーーーん」
「ここじゃ話しにくいな」
ずるずると引きずられていく私、心配そうにこちらを伺うハナちゃん、眉間にシワをよせてる蓮である。ヒラヒラ手を振っておく。
「うーーーん、いやー……うーーーーん。父親と母親がかれこれ約一年ぐらい帰ってきてない。二ヶ月暗い様子見てたけど帰って来ないし、家賃滞納したりガス水道電気止められたら終わりだし妹食べさせなきゃいけないから俺が働くしかないじゃん。だから仕事探して……今に至る、みたいな」
そう言った瞬間、永田部長に軽く叩かれた。痛い。
「そういう話は早くに言え!」
「うーーーん、だって家庭の問題だし」
「な、訳あるか!」
「……今までも母親はこんなことあったのか?」
「それわからないです。なんかすっころんで頭打ったからか妹に揺すられて起きるまでの記憶ないんですよね!」
「はっ?」
「起きたらゴミ屋敷だったし、なんか色々書類漁って今なんですけど、通帳とかの類なくなってるし帰って来ない可能性もありますかね!」
「明るく言えばなんとかなるって話じゃないぞ」
「妹は?」
「大家さんの知り合いのお寺の預かり保育です」
「生活できてるのか?」
「今はなんとか!妹の学資保険1番低いので積み立て始めたましたし!まぁ俺がサッカーする余裕はないですけど」
そう説明してたらまた達海さんが顔をひょっこりと覗かした。
「苗字じゃん、何やったのお前」
「いやー、家庭の環境のことバレたから話してたんです」
「お前うまく隠すってたじゃん」
「いやー、畳に耳あり障子に目ありどこで聞かれてるかわかんないですね〜」
「達海知ってたのか?!」
「だって苗字上手いのにユースとか入ってねぇっていうから……というか、知ってて雇ってると思ってた」
頬杖をついた達海さんに私は苦笑いする。達海さんは少し考えて、首を傾げる。
「俺が払おうか?セレクション代と選手登録代と年会費」
「えっ」
「働きながらサッカーしたらいいんじゃねぇの。プロプレイヤーになったら返してくれりゃいいし、ならなかったらならなかったでどーせここで働いてそうだし働きながら返してくれたらいいし」
その言葉に目をキラキラさせて立ち上がったのは悪いと思うが、めちゃくちゃ嬉しいので仕方ない。
「やった、やった、マジで!?」
頷いた達海さんにやったーー!と騒ぐ。父親か母親帰ってきたら請求する!という話になったのだが。

==

ちょっと楽しすぎてセレクションはっちゃけすぎたら無事ユースに入れたし、なんかサクッとスタメン入りしてごめんな!って感じだけど仲は良好だから許して欲しい。仕事も育児もバリバリ頑張ってる。いやー、適度の息抜きは大事。
「蓮ー!」
そう手を振る。こちらを見た蓮は私のユニフォーム姿をみて目をパチパチ瞬いてから、爆笑した。
「うわっ、似合わねぇ。ナマエ、なんでヴィクトリーじゃないの?」
「俺の保護者がETUだから」
「ふーん、そうかよ。これでハナの地位が脅かされんな」
「お前の地位も脅かされるんだよ」
「はぁ?俺が1番上手いに決まってんだろ」
周りがハラハラしてるが気にしない。私はケラケラ笑う。
「お前は天才。でも俺もハナちゃんも天才」
「ふはっ、なんかいってら。さっさと登ってこいよ」
「頑張る!あとじゃあ10番もらうし」
「はぁ?」
そんな会話の後の試合である。ガシガシやりつつチームよいしょした私は頑張ったと思う。まー、ドローだったけど。残念。とりあえずハナちゃんに写メ送るから写真撮って送ったら返信が即きて蓮が爆笑してたとだけ。そのうちハナちゃんとも試合するのだが。

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そりゃあ私一人だと暮らせるだろう。でも、にいに、にいにと私に懐く妹だけを施設に預けるという選択肢はあんまり取りたくないというか。ただでさえ帰ってこない親をあの子は待っている素振りを見せるのだ。どっちの方が妹にとって幸せなんだろうか。どちらに転んでも私のエゴになるのだが。然るべき組織の人、児童支援をしているその人たちに私は悩む。後警察も絡むのか警官も同席中である。
「うーーん、こう、今はなんとなってるし俺が歳重ねたらもうちょっと余裕ができると思うんです。今やっと慣れて、自分が好きなこともできる時間も確保できましたし。毎日ご飯の心配しなくても良くなったし。もうダメだってなりかけたらもう一度連絡してもいいですか?あと両親帰ってきた時」
そう言えば、なんか名刺を渡された。タダでご飯食べたりできる場所やらも教えてもらえる。よし、ストックするのと、私に何かあった時に妹にも分かりやすいようになんかまとめておこう。あと通報してもいいよ、とは警察の言葉である。警察みながら口を開く。
「両親帰ってきたら通報するから、俺の代わりに殴って欲しい。俺怖くてできないし」
そう言ったところでピシリと警察が動きを止めた。おっと口が勝手に動いたというか。私の記憶にはない。
「気にしないで欲しい」
「でも、怖いってことはなんかあったんだろ?」
「いやー、覚えてないから」
「覚えてない?」
「んーーー、お巡りさんも会津さんも忙しいし長引かせたくないから気にしないで」
「君こそ気にしないでほしい」
「……というか俺が引き伸ばした方が仕事長引くのか。すいません、うっかり口がうごいたばっかりに。かれこれ約一年くらい前、妹にゆすられて目を覚ましたんですけど。それまでの記憶多分飛んでるっぽいんですよね。なんか頭痛かったし。滑って転んだとかそういうことだとは思うんですけど」
「それは自分のことも?」
「まー、若干は?家のものとか漁って再確認はしたんですけど、両親のことぜんっぜん覚えてないんですよ。ただ、たまにさっきみたいにポロッとなんか出るみたいな」
そう頭をかきながら告げる。まぁ、普段は気にしてないことである。



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