2022/12/31

2022年度没ネタ整理29


「よー、親友。相変わらず重い奴らに好かれてるか〜?」
のしっという重さと共に聞こえてきた声に私は無理矢理起き上がる。うお、という声と共に滑り落ちたらしい人物に私は振り返りハグをした。
「リシー!」
「お前、周りが怖いからやめてほしい。マジで。お前の周りヤンデレ多すぎ。俺が刺される」
「えっと、ナマエ、知り合い?とりあえず離れた方がいいよ」
「知り合いというか、友人というか、親友です」
「えーと、はじめまして?ナマエが世話になってます。名前はリシ、苗字は張三。誰でもない誰か。ナマエ共々よろしくお願いしまーす」


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「俺たちの世界では、一回死んだ記憶があるやつがたまに生まれてくる。最短で百年前。普通は六百から七百年前あたり、または千八百年から二千年前あたりとか言われてる。まぁ、そんなでかいブレの中、多くは名前も残ってない誰かの記憶を持ち、珍しい奴だとあんた達みたいな後世にも伝わる記憶を持つ奴がいる。俺は名前も残ってない誰かの記憶を持ってる」
「じゃあ、彼女は?」
そう尋ねた荀ケ殿に俺は答えるべく口を開いた。
「ナマエは特級で珍しい。いや、アイツの父親と揃って稀中の稀だ。昔々から始まって、歴史に一切記されていないに関わらずでも何故かいたあったと口伝で残っているものがあるだろ?アイツはそれだ」
「どんな話だ?」
「あんた達それぞれの国の話じゃねぇな。昔々、綺麗な白い花が咲き誇る王国に美しい白亜の城がありました。そこには厳しくも力強い国王と、美しい王妃、そしてひとりの王子と二人の姫、そしてそれを守る数多の騎士がおりました」
「騎士?」
「あんた達でいう将だな。まぁ、簡略すると、お姫様の一人は大変できた人で身分病人そんなもの分け隔てなく接するものだから国王も大切にするし国民にも兵にも将にも好かれてたんだよ。もっと西の方じゃよくある話だ。でも、ある日、もう一人のお姫様と王子の悪事がバレた時に一変する」
「えっ」
「二人はこう言ったんだ。貴方達が愛する姫は魔法ーー妖術を使って自分達を操った。貴方達が彼女を愛しているのも魔法で操られてるだけである。そう彼女は邪悪な魔女ーー妖術使いである、ってな。その瞬間、向けられてた好意は憎悪に変わり、彼女に忠誠を誓った騎士も国王も反旗を翻し、魔法が解けて美しい声さえも出せなくなった魔女を捕らえ、魔女は騎士たちによって処刑されました。これで国からは邪悪な魔女がいなくなってめでたしめでたし」
「……彼女がその悪い妖術使いだと?」
「いや?あいつはそうじゃない。その話は珍しく『めでたしめでたし』幸せな終わり方の続きがある。彼女の死後に彼女の父親も病で倒れ亡くなると、王妃と王子が執務をするようになる。それでも、多々、彼女の呪いだということが起こる。騎士達はそこでようやく疑問を抱く」
「ははぁ、お姫様は利用されたってことか」
「そういうこと。宰相により王妃たちの悪事がばれ、彼女の無実が証明されるんだが、全てを解き明かしても時全て遅し。自分達が愛したお姫様は自分達が殺した後。多くの将達はすっかり戦う気力をなくし、隣国に攻め込まれてその国はあっけなく滅びた。まだ続いたりするが、それは蛇足の蛇足だな」
あとは怪談じみた話に変わるのだ。誰もその城に辿り着けないし、多くの兵の死体はないとされているとかそんなだ。
「まぁ、ナマエはとりあえずそんな気の毒なお姫様の記憶を持ってる、が、かんっぺきに割り切ってる。あいつの精神力が強い。お姫様って呼ぶとうじ虫みるみたいな顔されるぞ。そのくせ面倒くさいとお姫様ムーブで撒いたりする。俺もたまにされる」
そう言っていれば、一瞬荀攸さんの眉間が緩んだ。なんだ、と思えば後ろから体重がかかる。
「リシ?魏軍師ファイブとなんの話してんの?」
「お前がお姫様って話」
「……」
嫌そうな顔をしてるんだろう。ふふっと笑った郭嘉さんに、確かにイケメンなんだよなと思う。
「お前こんだけ色んな世界混ざってんだから、お前のいた国混ざってもおかしくねぇし、お前の前の知り合いいてもおかしくねぇよ」ふ
「うっわ、それ考えてなかった。絶対面倒くさい……絶対拗らせてる気がする」
「ほら、今のこいつこんなんだからな」
「どんな人なんです?」
荀攸さんの問いかけに、ナマエが俺から離れて少し首を傾げた。
「いや……えー……どんな人って言われてもな……全員わりかと問題児というか……」
「それは私も含まれますか」
聞こえてきた声に俺は固まる。聞いたことがない声だ。ナマエは呑気に「いや、ジョルジュはまともだとおも」まで言って違和感に気づいたんだろう。一斉に視線が横に向かう。そこにいたのは銀髪の男である。軍服のようなものをきた彼はナマエをみた。
「そうですか。それはよかった。姫さま、内容は多いに賛同できますが、恐らく面と向かって言われると嘆く人間がさらに面倒くさくなります。黙っておきましょう」
「えっ、は?えっ?ジョルジュ?」
「はい」
そう軽く笑んだ。ナマエといえば固まった。この人二荀混ぜたような顔してんな。ナマエはなんでここにいるのという感じだろうか。大量にハテナを浮かべている。魏軍師は静かに警戒モードに移ったらしい。
「……貴方は?」
「これは失礼。私はジョルジュ・ルーシュタン。どうぞ、ジョルジュとお呼びください」
「えーと、本物?」
ナマエは率直に尋ねる。彼は頷いた。
「姫様、俺は本物です。信じられないのであれば、バラしたっていいんですよ」
「何を」
「貴方が子供の頃、父君の真似ーーむぐっ」
すっげー早かった。手で口を抑えたナマエは、わかった、理解した、と早口で告げる。
「それめちゃくちゃ恥ずかしいから言わないで」
「はい、言いません。貴方と私の秘密ですので」
手を丁寧に退けて緩やかに笑んだ男に、ナマエは息を吐いた。父親の真似して何やったんだお前は。
「でも、ジョルジュがどうしてここに?」
「ナマエ様がこちらにいると伺って」
「そうじゃないよ……あれ?待って?ジョルジュ、私が知ってるより大人になってるよね?」

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