ネタ帳vol.3
2025年ネタ帳170:君僕主たちはPWの世界にやってくる
08/12 16:50
この世界の彼は彼なのだろうか。よくわからないそれだ。でも、念のためだ。特徴的である瞳は隠し、ただ大人しく日々をすごす。迷い込んだこの世界で、それが一番いいやり方には違いがなかった。あぁ、でもやっぱり、私の知る彼なのかもしれない。だって、彼は同じ指輪を持っている。捨てればいい話なのに。貴方は私を嫌っているのは知っているから、捨ててしまえばいいはなしなのに。
「前髪をよけないのか」
そう尋ねた医務官である男性に私は困った顔をする。学校にいる普段から前髪で瞳の色を隠している。あの夢ーーというより指輪を持っているから現実かわからないものーーをみてから、眠りから覚めてからへんじたものの一つだ。一般的に日光があまり照らない国に多い瞳の色である。だから、
「眩しくて」
という理由が成立した。私は医療班の手伝いを主にしているため、彼は気になったのだろう。彼は燦々と輝く太陽を見上げて、確かにな、とジョンと同じ声で頷いた。
「……あとは、あまり自分の瞳の色が好きになれなくて」
私はそう言って困ったように笑う。彼はそれに首を傾げる。私は不用意に見せない方がいいのがわかっているために見せることはない。彼はそのまま、そうか、と話を終わらせる。私はそのまま包帯などを片付けたり、医療器具を消毒する作業に戻る。外からは笑い声がきこえた。
しまった、と思った。振り返った時、ちょうど海風が吹いて前髪が靡いたのだ。それも、ちょうどスネークと呼ばれた彼が私を視界の端にとらえたときだろう。目を見開いて、葉巻を落とした彼に、私はなんともないふりをして前髪を元に戻す。不自然にならないように。私を呼び止めたその子は私を見下ろした。ラボを手伝っている子だろう。よくわからない理論でよくわからない研究をしている彼女も今日は休みらしい。
「わ、苗字さんって目の色綺麗だね」
「……ありがとう。あんまり好きじゃないかな。後天的だし」
「後天的?」
「私数ヶ月意識がなかったでしょう?それで変わったみたい」
と、私が言えば彼女は目を瞬く。変な話である。だから、忘れて、と言えば、彼女は隣に座ると、こっそりと話した。
「ここだけの話、私も数ヶ月行方不明になってから理数がめちゃくちゃ強くなった」
今度は私が目を瞬く番だった。行方不明、といえば、彼女は「そう」と頷く。もしかして、似たようなことを経験してるのでは。恐らくそれは彼女も思ったのだろう。無言で握手を求められたので、とりあえず握手をする。
「自分が元の世界に戻った方法わかる?」
そう尋ねた彼女に私は困った顔をする。死んだかな、と日本語で話せば、彼女はエッと声を上げた。死んで目が覚めたの、と海をみる。
「それは……」
「私が変わればうまくいくかなって思った。でも、うまくいかなかったみたい」
私はそう言って海を見る。今日は穏やかな海だ。彼女はそれを聞いて、何も聞かないことにしたらしい。そっか、と告げて同じく海を見た。
「人生ってままならないものだね」
「本当にね」
「ここ海外の人しかいないし、まぁーークラスメイトがなんか言うかもだけど、無視して見せたらいいのに」
「眩しいから」
「ああー色素の関係だ」
彼女はそう理解を示し、話はまた変わっていく。そこからまぁ仲良くなるのだが。
「あ、苗字さん、こっちで食べよ」
そう言って手を振った彼女に私は困った顔をする。彼女のラボメンバーだけでなくスネークと呼ばれる彼もいるからだ。
「いえ、医学書を読むのでひとりで……」
「たまには他とも交流しろ」
後ろにいた医務官達が私にそう告げる。そのまま背中を小突かれて私は仕方なく彼女の隣に座った。とりあえず、こんにちは……?と首を傾げれば、こんにちは、と概ね返ってくる。カズヒラ副司令が口を開く。
「医務室でたまに見かけるミステリアスな子だな」
「ミステリアス?」
「目元を隠しているからな!隠されたものは暴きたくなるのが男のサガだが……」
そう言った彼に、私は困った顔をする。まぁ、ストレンジラブ博士と呼ばれる女性が軽蔑したような視線をむけたため、黙ったが。
「だが、目を悪くする」
「……眩しいのと、あまり好きじゃないので」
人に見せるようなものではありません。
私はそう言って前髪をさわる。博士はふむ?と考えると、男性陣から見えないようにして私の前髪に触れた。彼女が一瞬反応したのは私を知ってるからだろうか。ボスと親しいのであれば、私のことも知っているはずである。
「美しい色だ。まるで冬空のようじゃないか。だが、色からして眩しいのは確かだろう。しばらく隠していた方が無難だな」
「そうします」
そう言って私は苦笑いをして前髪をなおす。こちらに向いている視線に、私は彼を見た。
「あの、何か……?」
「……いや。そう言えばあまり話したことがなかったなと思っただけだ」
そう告げた彼に、サチが「苗字さんは人見知りだから!」と言って私の背中を叩く。
「苗字……」
「苗字ナマエです。ああ、えっと……苗字が少し発音しにくいかもしれません。ベルンシュタインでも大丈夫です」
「ベルンシュタイン?」
「母と離婚した父がドイツ人なので……」
困った顔をする。サチが、あれ?と考えた。
「でも二年生の面談の時、お父さんきてなかった?」
「あれは再婚相手の人で……まぁけどまた離婚しちゃったし、今の母の恋人はフランス人かな」
「あ、ごめん、複雑な事情だった」
「ううん、複雑じゃないよ。母親が他の人より恋多き女性だっただけ。日本ではややこしいから母親姓で統一してる」
「ほあ……」
「割り切っているのね。母親のことはなんとも思わない?」
「彼女は彼女の人生を歩んでいるだけです。子供の私としては、またかとは思いますが、1人の人としては彼女の人生を尊重します。彼女は確かに母親だけれど、彼女もまた1人の人間なので自分の人生を歩む権利はある」
少なくとも、生活が変わったと言うか、彼女の理想から離れてしまった私から距離を取ったのは正解だ。子供が産まれてなお自由な女性ね、と告げたセシールさんに私に目を瞬く。悪いようには言われたことは多々あるが、そう言うふうに言われたのは初めてだからだ。私はだから、ふふ、と笑った。
「そう、自由な女性なの。きっと私のいる場所で、林檎畑で働く彼を見つめてる。それもまた素敵な生き方。私にはできない生き方」
そう言って私はコーヒーを飲む。パスが、「そうね、素敵な生き方」と笑った。
「でも、ナマエも素敵な人生があるんじゃない」
「多分無理です」
「あら、わからないわよ。貴方の人生もこれからじゃない」
セシールの言葉に、私はコーヒーをみつめた。
「私は私と関わった人達が、どこかで幸せに生きていることを願いながら世界の隅の方で生きていけたらいいかな」
私はそう言ってコーヒーを見つめる。世界の隅の方、とカズさんは告げる。
「寂しいじゃないか」
「どう考えたって、あの時の幸せはもう手が届かないので」
だから、ひっそりと世界のどこかで幸せを祈らせてほしい。目の前の彼には言えないが。
「あら、ナマエ、世界は丸いのよ。隅なんてないわ」
「それはそう」
セシールの言葉に私はふふと笑う。
「その人たちに会いにいかなきゃね。私は幸せだと見せつけるのよ」
彼女のセリフに私は小さく首を左右に振った。
「私はいいよ、ダメだから」
昼食がわりのコーヒーを飲み干す。そう言ってから、そうじゃないな、と思って、言いなおす。
「私はいいの、みんなが幸せなら」
そう言って、私は笑って、ごちそうさまでした、と手を合わせる。そうして、お先に、と笑って外に出た。
===
誰かが落ちた、のが、見えた。近づけば、人がひとり溺れているのが見える。とりあえず近くにあった重い箱を海に落とし、海面をゆらだたせる。そうして私は浮き輪をとって、海に飛び込んだ。できるだけ抵抗をへらすため、綺麗な着水を目指す。そんなに海水を上げずに着水はできたものの、深くに入ることにはなったが私は浮き上がり、彼の背後に近づいた。そうして彼の首を掴み、浮き輪を持たせる。変な体制で海面に叩きつけられたのを見ると骨折してる可能性もあるが、パニックがだいぶ収まっている。さて、落としたものは恐らくは備品である。ヘリが近づいてきたので彼を先に回収されるだろうし、浮き輪があれば大丈夫だ。私は大きく息を吸ってまた潜った。さて、箱を壊すのには少々力がいる。が、たまたま近くに鉄の棒があったため苦労はしなかった。弾薬か何かかと思えば酒瓶である。とりあえず酒瓶をいくつか取り、私は浮上した。そこにいたのはスネークと呼ばれる男である。彼は私を見て息を詰めた。私は知らないふりをして、酒瓶を彼に渡した。
「酒瓶?」
「あと8本くらい。海に落としてしまったので、回収してきます」
そう言って潜ろうとすれば、彼は私の手を掴んでとめる。
「俺も行く」
「いえ、ひとりで大丈夫です。貴方が濡れます……」
「今更だ」
彼は上着だけをぬぐ。私はまた海に潜った。そうしていくつかの酒瓶を持てば追いついた彼が残った酒瓶を持って浮上した。む、と私はしてしまう。あれくらいの量ならまだ私も持てたかもしれない。とりあえず酒瓶を乗っていた医務官にわたす。自力で酒瓶をのせて、自力で登った彼は私に手を伸ばした。自力で、と思ったが、体力が彼ほどあるわけじゃない。彼に手を伸ばしてーー引っ張り上げてもらう。水を吸った服が思ったより重い。
「ありがとうございます」
「いや……お前に怪我は?」
「私はありません。緊急性があるなら彼です。私は海面を揺らしてから着水したので……」
私はとりあえず濡れた服をぬぐ。といっても、アンダーを着ているので上に着ていた制服のワイシャツだけだが。海水を含んでベタついていた髪を耳にかける。
「……ナマエ」
聞こえた声に私はそちらを見た。スネークが私をみている。どこか夢を見ているよう。そこで私は前髪を避けていたことに気がついた。彼は私に手を伸ばす。まるで幻に手をのばすように。バカだなぁ、と私が思うのはその手を取ってしまったからだ。彼はハッとした。夢から覚めた人のように。
「私は大丈夫、心配ありがとう、スネーク」
そう言って私は手を離す。彼は緩やかにその手をおろしてーーそうか、と目を伏せた。
「それならいい」
==
「もう一度会いたい人を連れてくる、と言うわけだ」
そう言ったヒューイ博士に私は読んでいた医学書の単語を見つめる。サチがそれで研究はうまくいったの?ときけば、行くと思うかい?と笑った。
「まったく科学的ではないんだよ?オカルトに近い。でも、なぜか君たちが来た。その理論を解き明かすには君の手を借りても時間がかかってしまうね」
彼の言葉に、私の世界にもそんな噂あったなぁ、とサチが告げた。私は今度こそ手を止める。
これがもし、私の責任なら?サチやクラスメイト達が巻き込まれただけだとしたら?
頭にめぐる考えに私は医学書を閉じて深呼吸をする。
「ナマエ、どうかしたの?」
そう尋ねたパスに、私はちょっとグロテスクな表現があって、と困ったように笑う。彼女は私の向かいに座った。
「医者になりたいの?」
「ここにいるなら多少は役に立たないと……私はパスみたいにみんなと仲良くなれないし、現地のことも知らないから……」
「ここにいる人達は苦手?」
「ううん。違うよ。私が……」
そう言って私はまた苦笑いをするのだ。
「私が場違いだなって思うだけ」
==
==
違う。私はそうじゃない。ジョンを追い詰めたかったわけじゃない。だから、私は彼の代わりに銃をかまえーー撃った。それは人工知能の装備に当たった。彼女、の、標的が私にむく。それはmgspw(原作)のように、ボスじゃない。私だ。だから、私はいうのだ。
「知ったふりしないで」
慣れているのだ。私は。スネークの装備をとって、私は自分をみた。
==
ナマエちゃんが、スネークを掴んで無理やり回避した。おお!と私は声を上げる。彼女は唖然としたスネークを見下ろすと、また転がって彼を物陰に誘導した。AI兵器はそこで撃つのをやめた。彼女が物陰から現れる。彼女の手にはスネークが持っていた銃があった。彼女はまるで慣れているようにその銃をかまえた。
「知ったふりをしないで」
彼女は怒っているようだった。
私は彼女の言葉に、理解した。彼女が髪で顔を隠すわけも、スネークとあまり関わらないわけも。幸せを祈っていると告げたわけも。
ーー自分が幸せになってはいけない、といったわけも。ヘイトと呼ばれる彼女と少し似ている声を持つAIはスネークではなく彼女を認識した。
「何を言ってるの」
「……思考を訂正しなさい」
彼女は珍しく強い口調でつげる。
「嫌いなわけがないでしょう。何年一緒にいたと思っているの。いくつ一緒に死戦と呼ばれるそれを潜ったと思ってるの。いくつ一緒に夜を重ねたと思ってるの」
そう言って彼女は機械をみつめた。
「そんな相手を人間は嫌いに慣れない」
その声は誰かの記憶を引き継いだ機械と同じ声だ。
「訂正は不可。私は彼が嫌いであるから任務についた。彼より上位と示すために。貴方の発言はその前提が覆られます。事実に基づく情報を持って訂正してください」
「その前提が間違ってる」
そんなこと、ナマエちゃんが知り得ない情報だ。そのはずなのだ。だって私たちは異世界から来たと彼らは知っていたからだ。ヒューイ博士が「成功だ」と小さく呟いた。違う、きっとこれは成功してはいけなかったことだ。死んだ人は戻ってきてはいけないのは、世界の理のはずなのだ。彼女は悔しそうな、悲しそうな声で話す。
「私……貴方か彼女だった」
「彼女?」
「ザ・ボス」
「私の『師』だ」
「そう。あの任務につくのは、貴方か彼女だった。でも、貴方はそれを引き受けた」
ナマエちゃんの言葉に、機械は答える。
「ザ・ボスに私の方が優位だと見せるため。国に愛国心を示すため」
「違う」
彼女はそう言って否定する。
「貴方は知らない……貴方にインプットされていない貴方と貴方の親類しか知らない情報がある」
「追加を求めます」
「……貴方は未来を知っていた」
私は彼女をみた。ああ、そうか、私と同じように世界を渡ったなら、彼女もやっぱり知っていたんだ。スネークがビッグボスになることを。どう言う人生を辿るかを。
「……貴方は、スネークがザ・ボスを殺す未来を知っていた」
彼女の呟きに、ストレンジラブ博士が息をつめた。
「それは、私と養父、実父しか知らないこと。ユダヤ系ドイツ人であった父はその知識を利用しアウシュビッツを抜け出しーー嫌悪と呼ばれた養父はノルマンディーで貢献した。私たちには確かに未来が見えた」
彼女はそう言って目を伏せる。
「……大切な人が、大切な人を殺してほしくなかった。彼女を殺さなければ、彼は幸せになるとどうしようもなく信じてた。2人が笑って暮らせると、思ってた」
彼女はか細くそう告げる。
「貴方が嫌うのはスネークじゃない。ザボスでも、あの任務を組み立てたアメリカでも、核を撃ってしまった大佐でも、ソ連でもない。あの時、最後まで嘘を貫き通せなかった、自分自身だ」
泣きそうな声だった。でも、彼女は顔を上げた。
「スネークに貴方を殺させない。貴方にスネークも殺させない」
「ーー」
「私は私を嫌悪をする。だからお前は私の手で壊す」
「ーー不能、理解不能」
「理解しろとは言っていない」
「貴方は誰だ」
そう問いかけたAI兵器に、彼女は口を開いた。
「私の名は、ナマエ・クラウディア。お前は私なのに、知らないのか」
彼女はそう言って的確に攻撃を開始した。身軽である。掠りそうな攻撃も器用に回避し、隙はない。まるでアクション映画だ。それはスネークにも言えることだけど。
「カズ!」
スネークから通信が入る。
「支援物資を落とせ!!」
「……!あぁ!!」
「加勢に入る!」
そう判断したスネークに私は少し安心して息を吐く。まるでお互いがわかっているかの連携だ。長年一緒にいたような。彼女は止めをさす。破壊された兵器を見下ろして、彼女は目を伏せた。
==
目を伏せる。ああ、ほらやっぱり私が嫌うべきは私なのだ。最後まで嘘を突き通せない私なのだ。私は指輪を握った。バカな行動だった。まごうことなく、これは馬鹿な行動だ。実験が成功だと示した。私が生きているだけで国際関係に亀裂が入る。だから、これから私がするべきことはわかっているのだ。
「ナマエ」
そう呼びかけたスネークを見下ろす。戻るぞ、と、手を伸ばした彼に私は小さく首を左右に振った。彼は手を下ろして、息を吐く。律儀に無線をきって。
「ごめんなさい」
「それは何に対する謝罪だ?」
「最後にあんな言葉を言うんじゃなかった」
私はそう言って片手で顔を覆う。
「今もそう。ずっと嘘を貫けばいいのに。そうして、しれっといなくなればいいのに。またできなかった」
視界がぼやける。ああ、泣いてはいけないのに。私には泣く権利などないのに。
「ジャック、私は貴方が幸せに生きてほしいの」
「……。」
「貴方に笑って生きて欲しかったの。あんな顔させたくなかったの。ないてほしくなかったの」
「……そうか」
「私が、私が会いたいと願ったから、みんな巻き込まれた」
「……そうかもな。でもそれは俺も同罪だ」
彼はそう言って兵器に登ると、私の隣にすわる。平然と。ただ、そこから見える景色をみつめた。
「俺もお前に会いたいと思った。ずっと答えを教えて欲しかった。ボスからは国のためだと聞いた。お前はあの任務中ずっと俺を嫌いだと言って、最後にはあの言葉だ。おかげで散々だ」
今度は私が黙る番だった。彼は言葉を続けた。
「お前を恨んだ」
「……それは正しいよ」
「正しいわけがあるか。第一、恨みきれるわけがないだろう。何年一緒にいたと思ってる。何回ボスに叱られて、何回死戦を潜って、何度夜を一緒に過ごしたと思ってる」
彼は葉巻に火をつける。
「俺は、俺を恨んだ。お前を殺した俺を。笑えるわけがないだろう。幸せになれるわけがないだろう。確かにボスはいる。他もいる。でも、」
彼は私を見上げる。彼の片目から、雫がたれる。
「ーーどこに行ってもお前がいなかった。それが俺には耐えられなかった」
私は彼に合わせてしゃがむと、その涙を拭うために手を伸ばす。彼はその手に手を重ねると口を開く。
「……今話を聞いてから考えるとお前の悪い癖だな。いつもお前自身が換算に入ってない。頼むからお前自身もそこにいれてくれ」
「ーー」
「帰るぞ。一緒に。悪いと思っているなら、一緒に生きろ」
==
役者だな、と思うのは、彼女が問いかけられた際、小首を傾げて知らない存じないしばらく意識がない、と告げたからだ。それを聞いて恐らくは心霊的なモノ扱いにされるだろう。ありえないよな、もし本当ならば俺より年上だ、と告げたカズさんに、周りは残念そうに納得したのだけど。
ーーそれとほぼ同時である。クラスメイトの名寺くんと、嘉月くんが苗字さんとよく話すようになった。聞こえてくるのは英語ではない。かと言って日本語でも多分ロシア語でもない。ラテン系だろう。いやでも時々名寺くんと苗字さんだけなら噛み合わない言語で会話が成立している時もある。私の方が先に仲良くなったのに、と思っていれば、苗字さんが私を手招いた。私は自分を指差すと、頷いたため、私は近づく。
「呼んだ?」
といえば、2人はお呼びじゃないみたいな表情をしたが。彼女は口を開く。
「サチも経験者だと思う。詳しくはないが」
日本語である。ホッとした。2人は顔を見合わせる。
「貴方と被ってる?」
「いや……君たちの方じゃないか」
「どこにいた?」
名寺くんの問いかけに、私は何処に、って、と言い返しかけてーー理解する。
「え、世間狭いね!?」
「答えになってないかなぁ」
「ごめん、フィランドソロピーが正しい答えだと思う」
私の答えに彼らは目を見開いた。木製コンビと一緒にいた?と聞いたら彼女に私は頷く。
「いやぁ、びっくりしたよね。知らない場所と思ったら、アラスカ。引っ越してくる推し……」
私の言葉に、名寺くんが尋ねる。
「じゃあ、お前の知識は」
「オタコンの入れ知恵!」
そう言って親指をたてる。嘉月くんがタバコに火をつける。
「はは、ここまでくると愉快だな。大統領の知り合いも出てくるんじゃないか」
「いるぜ!!」
そんな声がして私は肩を跳ねさせる。苗字さんが淡々と、30追加、と告げた。名寺くんと嘉月くんが見下ろす。
「お前何してるんだ七篠」
「第3回姉御に仕掛ける回を開催したら負けて扱かれてる」
私も合わせて見下ろせば、七志くんがエルードしてるのが見えた。
「第3回?」
「病院、学校、今日!ちなみに俺は少年兵から某外人部隊で失楽園」
「蜂起にはいなかった?」
「その時なー、俺フランスあたりいたから声かかんなかったんだよなぁ。まじ残念すぎる」
そう言いながら上下に揺れる彼に、名寺くんが苗字さんをみた。
「余裕そうだぞコイツ」
「クールダウンさせてるだけだ」
「クールダウン?」
「少年兵の悪い癖がついてる上に怒りをコントロールできてない」
苗字さんは淡々とそう告げる。
「何の話するつもりだったの?」
「……これからだよ」
嘉月くんがそう告げる。2年後、そこからさらに9年後、と続いた名寺くんに、私は少し考える。
「ゼロとブイ?」
「あぁ。ここが落ちる。聞くが、幸野博士、そこまでに機械が完成する確率は?」
「ゼロではないけど百とゼロどちらが近いかと言われるとゼロに近いね。同じ世界とは限らないし、そこまで不安定ならできれば作らない方がいいと思ってるまである」
「と、なると、他の奴らを連れて回避が必要になる。戸籍を買ってもいいが、バレる時はバレる」
「XOFだったか?」
「苗字さんやってない?」
「身内でバタバタしてて……買ってはあったが、戻ってきたらなくなってた」
「おああ、ごめん」
そう言って私はなんとも言えない顔をした。彼女は気にしなくていいと告げたけども。
「知ってるのか?」
「知ってる。任務に行く前の私の所属はそこだ」
はっきりと言い切った彼女に、嘉月くんが眉間に皺を寄せた。
「養父が被験者だからもあるだろうし、ジャックの元上司の編成でもあったんだろうが……」
「ややこしいな……君を殺したことによる報復であった可能性は?」
「そんなもな今更すぎる。彼はどれだけ奪われたと思ってる?」
「あいつの嫌悪は愛国者による言語がおもだろ」
「難しい話してんなー、要は2年後の火の海回避、パス回避、カズさんとボスの仲違い回避、おまけにイーライ達の保護とかだろ」
七篠くんがそう言って登ってくる。その順番でいくと、だ。
「パスが一番?」
私の問いかけに、苗字さんは首を左右にふった。
「いや……一番は拠点を買うことだ」
「確かにそこがないと色々と動きにくい。そのあたりは俺がうまくやる」
やれやれと肩をすくめた名寺くんに、私も手伝えるけどがあれば手伝うよ、と告げる。まぁこれが正しい道のりかなんて、私たちは誰もわからなかったし、ハッキングさせられるなんて思いもしなかったのだが。
==
う、え、部隊突入前では??
私はちょっと緊張する。この病院は恐らくそうだ。ナマエちゃんは花束を持って、悠々と歩く。場所の情報しかない中で探し当てた場所である。そうして目当ての部屋につくと、彼女は隣で眠っている男性に花束をいけた。そうして、その隣にいる男性のベッドに向かう。
「ジャック、起きてる?」
その言葉に彼は勢いよく飛び起きる。無事だったのか!と。嬉しそうな声で。彼女は彼をハグした。カーテン越しにリップ音が聞こえる。
彼が眠っていた間の彼女の苦労は大変だったといえる。まぁーー彼女がいなければ若干積んでいた可能性があった。カズさんとか、パスとか色々。私がいなくても積んでたかもだし、それは他の三人にもいえる。
「サチ博士の開発のおかげでな。君を探すのに苦労した」
「だろうな」
「さて、ジャック。目が覚めてからすぐで悪いがーー山猫さんは来たか?」
「あぁ、来た。……会ったのか?」
「いいや。彼の中で私は死んでるから……話に乗る前に、私は君に伝えとくことがいくつかある」
彼女はそう言って彼を見下ろした。私お邪魔じゃん、と思っているが、博士もこっちにきたらどうだ?とボスが普通に告げた。私はカーテンから顔を覗かせる。
「いや、2人の逢瀬を邪魔するのはちょっと……でもかと言って外に出たくは……」
と私が言葉を濁せば、彼は首を傾げる。そりゃあ何があるかわからないもんね、ボスは。
「ジャック、ここは襲撃される。隣の医務官が起きる頃にな」
彼女はそう言って持ってきていたりんごをむいた。
「君と少佐は彼を影武者に仕立てる。でもそれは、カズとの不仲をうむぞ」
彼女は器用にうさぎにカットして、彼の口にその口をあわせた。
「ーーそれは」
「私は知らない。だが、話してみれば何人かが私たちと同じだと気づいた」
「お前と同じ?」
「まずは嘉月。これは君も覚えてるな」
「パスの爆弾はもう一つあると言った。いや、パスの離脱の時も」
「そうだ。ちなみに彼、と、パス、チコも無事だ。今は私が保護してる」
彼女はそう言って、またリンゴをカットする。
「……私は君がどの選択をしようと私は君のそばにいる。それは約束する」
彼女はそう言って彼を見る。
「でも、一緒にいる人は多い方が楽しいだろう?」
「しかし、ゼロへの」
「焦るな。それも何とかする」
==
あ、そうか、と思う。だいたいナマエちゃんの歳があの任務くらいの歳なのだ。だからこの人は驚いたのだろう。目を見開いた彼に、彼女は口を開く。
「はじめまして、Mr.。それとも、久しぶりだと言った方が?」
そう言った彼女に、久しぶり?と彼は眉間に皺をよせた。
「君のお父さんに追い出された」
「は?」
「はははは」
彼女はそう言ってケラケラと笑う。オセロットさんはなんとも言えない顔をしているが。
「私の名前はナマエ・ベルンシュタイン。小児科医。ここを拠点にする難民医療支援swallowの代表だ。まぁ共同戦線ということかな」
==
「右」
ナマエちゃんはそう言ってボスをみた。ツノ隠した状態で何でわかるの、と聞けば、身長が低い方がジョンと告げた。次身長を合わせてもやはりナマエちゃんはわかるらしい。こうなってくると私たちはヤケになってくる。ダンボールに入れた状態なら、と思ったらそれでも当てた。
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