ネタ帳vol.3
2023ネタ帳72:君僕主の些細な
01/14 17:34
小さな思い出だ。きっと彼の中ではいつか色褪せる。
いつもとは違う服を着た彼はいかにも格好をつけていた。たまには二人で食事に行ってきたらどうだと師に告げられ、二人で出かけた先である。きちんとしたスーツを着ているのに口にソースをつけた彼の名を呼び、その口元を拭う。こういう店は向いてないんだ、と告げた彼に私もだと肯定した。街並みが見える。冷戦だなんだと緊迫感があるのに対し、国民達はいつも通りの日を送っている。窓の外に見える煌々とした夜景は焼かれることをしらない。私が見たあの世界を何一つ。
「ナマエ?」
「いいや?平和だなと」
そう苦笑いして答えれば彼は同じく窓の外を見て、そうだな、と肯定した。
「俺たちはこれを守らないといけない」
若い彼はそうつげる。国を守ることが使命だと。私は彼を見た。
「私はジャックを守るだけで精一杯かな」
私の言葉に彼はなんだそれはと答えた。俺は守られてない、と口をへの字にした彼に私はいーや?この前、と返せば、彼はピクリと眉尻を上げた。「それをいうナマエだって」とたまらず立ち上がった彼に私はクスクス笑う。彼は私が揶揄っているのだと理解したのか拗ねた顔をしたが。
「ジョン、拗ねないで」
「拗ねてない」
「本当?」
「本当だ」
「じゃあまた一緒に食事に行ってくれる?」
私の問いかけに彼は目を瞬いてから、嬉しそうな表情に変えてああ、と頷いた。あたりまえだ、と。
恐らくそれはいつか彼の中で消える思い出だ。忌々しい女との思い出だ。嫌悪する相手との、ただの、ささいな思い出である。
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